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マグダレンの祈り

Maria.jpg
The Magdalene Sisters
2002年
イギリス、アイルランド

ピーター・ミュラン監督


ノーラ・ジェーン・ヌーン、、、バーナデット
アンヌ=マリー・ダフ、、、マーガレット
ドロシー・ダフィ、、、ローズ(パトリシア)

アイルランドでは、1996年まで女子高更生施設に3万人が監禁されていたという。
家族に見捨てられ、福祉制度もない未婚の母たちには修道院の施設しかなかった。
キング・クリムゾンが「クリムゾンキングの宮殿」を発表して27年後漸く廃止されたというのも信じがたいのだが。
(ビートルズの「アビーロード」よりも聴かれた”エピタフ”はどこにも流れていなかったのか?)

この映画の舞台の「マグダレン修道院」もその施設のなかのひとつである。
改心した娼婦マグダラのマリアから名前をとった更生施設であるが。
紛れもなくナチスのアウシュビッツにも等しい、多くの魂を虐殺した場所である。

ここの実態も知らず強制的に入れられた少女たち。
彼女らは親によって無理やり連れてこられる者も少なくなかった!
そういう3人の少女を軸に物語は展開する。(実話に基づき)。

孤児院で育ちその美貌により道を逸れる前に連れてこられた、ティツィアーノの「マグダラのマリア」を彷彿させるバーナデット。
未婚で子供を産んだローズ。
従兄弟にレイプされたマーガレット。
彼女らは全く罪が無いばかりか性被害者であるにも関わらず、「婚外性行為」をした罪でここに幽閉されるのだ。(バーナデットはそれを未然に防ぐためという理由から)。
それは疑いや将来危惧されるレベルでも入れられてしまう。
しかも噂が広まる前に、本来身を呈して守るはずの親や親戚に連れてこられる。
厳格なカトリックとは、宗教とは、一体何なのだ?!

カトリックの厳格な戒律の元、修道女には絶対服従で、ひたすら過酷なルールに従う。
衣服は没収され、粗末な茶色の不格好な制服を着せられる。(一般にはひと目であの修道院だと分かる)。
プライバシーは一切ない。
過重労働である洗濯を無償でひたすら行う。(象徴的でもあるが)。
娯楽も息抜きもなく、友達付き合いも会話も、外部の人間とのちょっとした対話も禁止される。
物事、人に対する関心は一切持たないことが崇高な生き方であると強制され。
思春期に達しても、性教育もされず、自分の体に対する不安と混乱も抱え込む事になる。
子供を産んだ(産まされた)ばかりで連れてこられ、乳が張って苦しい少女に対しても何も対処されない。
修道女たちの性的な虐待と虐めが日常的に続く。
更に神父による性的虐待が加わる。(神父に暴言を浴びせた娘は精神病院に監禁された)。
高い壁と有刺鉄線に阻まれ脱走は極めて難しく、失敗し捕まった場合厳しい折檻が待っている。
不服従とみなされた娘は、罰として髪を剃られ激しいムチ打ちにあう。(質問しても不服従となる)。
絶対的に正しい教会に対して、自らは罪人であるという意識をあらゆる局面ですり込まれる。
身体を悪と看做すよう徹底的に矯正される。
施設内は基本的に無気力と諦観に満ちてゆく。

「魂」を救うために「性」を捨てろ、という暴挙。
性は生物学的にみても、死よりも本質である。
(であるからこそ、それをシステム維持のために権力は利用するのだが)。


結局この修道院とは、罪の意識を植え付けそれを償わせるための装置以外の何物でもない。
(しかし、外界はどうなのか?教会に対し意味も問わず無条件に従う精神に何ら変わりはないではないか!)

こんな環境が1996年まで存続したことも驚く事ではないであろう。
現在でもこの構造はヒトの精神にしっかり残存しており、何かの機会にいつでも発動するものだ。


マーガレットは弟が迎えに来て、院を去る。
「もっと早く迎えに来れなかったの!」と怒る姉に、「成長してきたんだよ。」と弟。「もっと早く成長しなさい!」
確かに、彼女が親・親戚に厄介払いされるとき、弟は何もわからない子供であった。

バーナデットとローズは、共に院を脱走する。
欲の皮の突っ張った修道女に彼女らの労働で溜まった金の保管されている金庫の鍵を差し出すと、黙って見逃すのだ。
呆れたものである。
(彼女は鍵を失くし、ローズはそれを探し出していた)。
「ダブリンってイギリスよね?」「多分そうね。」と言って、逃亡を敢行する。


彼女らは外界に出ても、適応はさぞ難しかったことであろう。
最後に見せるバーナデットの見せる生きた鋭い目!(雨降りの郊外で出逢った修道女たちを睨みつける目)。
クリムゾンもパンクも間に合わなかったが、、、不屈の批判精神でギラギラしている。

教育も満足に受けられなかったであろうに、マーガレットは教員となり校長補佐にまでなった。
バーナデットはヘアーサロンを開店するが、3度の結婚に失敗する。
ローズは2児をもうけ、50年ぶりに第一子に会うことが叶う。
しかし、彼女たちのいずれも性に対する外傷経験のため、幸せな結婚生活は送れなかったという。


外界に暮らし始めた3万人を超えるカトリック修道院にいた女性の共通の特徴は、教会に対する激しい敵意と憎しみであるという。
当然であるが、この大罪に対し教会側はどのような謝罪と補償を彼女らにしたのであろうか?
それについては、この映画では何も語られていない。
(それ以前にこの社会自体が基本的に、まだ何も変わってはいない。このことがまず問題であろう)。

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