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ダブルフェイス 秘めた女

Ne te retourne pas01

Ne te retourne pas
2008年
フランス

マリナ・ドゥ・ヴァン監督・脚本


ソフィー・マルソー、、、ジャンヌ
モニカ・ベルッチ、、、ローザマリア

非常にしんどく重い映画であった。
ソフィー・マルソーの混乱に歪む(VFXも使われる)顔の表情や手足の浮腫など苦悶の表現が長時間続き、見ていられなくなる。


主人公の作家は8歳以前の記憶をなくしており、自伝的小説を書くにあたり、その記憶を何とか蘇らせようとする。
するとそれに同期して、アイデンティティを大きく揺るがす様々な出来事が身辺に起こり始める。
(そもそも自伝小説を書こうと強く思うこと自体が無意識からの突き上げであったはずだ)。
ジャンヌ(ソフィー・マルソー)の「現実」の足元が次々に崩壊を起こす。


わたしも8歳以前の記憶など無いが、特に不思議に思わずきたが、普通のヒトは覚えているのか?
覚えていないと困るものか。
このひとの場合は、思い出すべきであった。
そうしないと気持ちよく普通には暮らせない。
彷徨える魂も解き放たねばなるまい。
誰もが本来あるべき場所にいることが必要なのである。

ローザマリアという連れ子のため義父に愛されなかった幼い少女が、養父母に引き取られることになったのだが、自動車事故でその養父母と同年齢の娘が死んでしまう。ローザマリアはその現実を幼いながら何とか受け止めるために自分がジャンヌになることにした。
つまりそれ以前の自分を幼いながら自らの意思で消去したのだ。
それまでの自分の存在も周りから望まれてはおらず、自分を迎えに来た自動車で娘と新しい親が死んでしまった罪悪感もあったであろう。
彼女はジャンヌとして生きることを選び、夫とふたりの子供もいる家庭を持ち作家として暮らしている。

しかし、書くという行為は抑圧したこころをそのままにはしておかない。
まさにこころの底を掘り返す作業となってゆく。
当然、自己防衛と抑圧によって作り出したセルフイメージもそれに密着・連動する周囲のイメージも変容を余儀なくするだろう。
重い蓋が開かれてしまった。
街を歩くと忽然と少女がどこかで見たような現れる。
自宅ではテーブルの位置や物の置き場所が微妙に変化する。
やがて夫の撮ったビデオに違う容貌の自分が映っていることで混乱を極める。
自分の顔が見知らぬ顔に変わってしまった。このソフィーからモニカに変貌するVFXは並みのホラーより怖い。

それからというもの、夫も子供たちも、最後の頼みにしている母親も全く違う容姿となっている(見える)。
彼女は母がイタリアで撮った写真に映っている女性を探しに行き、その女性に会う。
母親であることをすぐに悟るがその婦人は彼女を固く拒む。
更にその女性の息子が、彼女のこれまでの(変容する以前の)夫そのものなのだ。
ここのイメージ形成がいまひとつつかめないのだが、、、
その男性は、実の母と再婚相手との間にできた息子(父違いの弟)である。
そういうものなのだろうか?

ともあれそこの地において、記憶の空白期の出来事を知り、封じ込めていた記憶と合致する。
自らはローザマリアとして少女に戻る。
ジャンヌの存在を遠い記憶から蘇らせ、ふたりで仲良く過ごすイメージを浮かべる。
そこから一旦、ジャンヌの大人の(ついこれまでの)姿を経て、現在のローザマリア(の姿)となる。
結局モニカ・ベルッチのローザマリアに完全に引き取られる。
彼女は、元気にイタリア休暇から戻り、変容したあとの正しい姿の夫とふたりの子供と楽しげに抱擁する。
その姿をジャンヌが離れたところから見ている。
ローザマリアも彼女のその姿を見て微笑む。

あるべき姿に皆戻り、ジャンヌはローザマリアの幻想として健全に分離され世界は安定する。
最後は「ふたり」で一緒にパソコンのキーを叩き、例の小説を仕上げてゆく。
感情のしっかり込められたよい小説となったはずだ。


死は不確かなりに死として認めるしかない。


Ne te retourne pas02

これは、如何にもフランス映画である。
終盤のローザマリアの少女期を演じた女優は、かなりの存在感であった。
今、どういう女優になっているのか興味を持った。

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