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大いなる幻影

La Grande Illusion

”La Grande Illusion”
1937年
フランス
ジャン・ルノワール監督・脚本

今日から古典に幾つか当たってみたい。

戦争の荒波に揉まれた作品で、その内容からも、フィルムの大幅なカットや焼失の憂き目に遭い、再現が大変だったようだ。
結局ナチスが持ち去った完全版のネガが発見され、この復元に漕ぎ着けたよう。

ジャン・ギャバン(マレシャル中尉)
ディタ・パルロ(エルザ)
ピエール・フレネー(ド・ボアルデュー大尉)
エリッヒ・フォン・シュトロハイム(ラウフェンシュタイン大尉 収容所長)


この映画、音をドンパチ鳴らしてみようが、演芸会で歌を唄ってみようが、大変切なく美しく静謐なのだ。
戦場での戦闘シーンも一切ない。
舞台は収容所内か未亡人エルザの家か国境近くの深く閉ざされた雪山くらい。
交わされる会話の夢のような静かな重さ。
覚束無いアイデンティティは、ますます希薄となり。
それらの会話と行動は、「人間同士の邂逅」を経て、魂を越境へと誘う。
絵が、ひたすら美しい、、、。


「ゴルフ場では、ゴルフをするしかない。」
誰もがコースに入ってしまうとそこが自明の場所となる。
そのコースには、それ独自の統制制度が成立し、それまでの社会階級は歪み崩され単純化されもする。
自分の輝かしいアイデンティティ(階級)の崩壊を感知する者は、形骸と矜持にしがみつくも、見つめる先は死しかない。
(ド・ボアルデュー大尉とラウフェンシュタイン大尉のような貴族階級)。
ラウフェンシュタイン大尉が殊のほかド・ボアルデュー大尉を丁重に扱った理由である。
彼らの黄昏た同族意識は、特別な友情を育んだ。
逆に古い階級意識から事も無げに降りた者たちは、無意識的に少なくとも収容所に留まることはできない。
彼らは外に出ることしか頭にない。新たな何かが待つ外に出てゆくのだ。

彼らは皆、ゲームを早く終わらせようと想っていた。
ここでは、敵も味方もなく、存在が現れてくる。
職業、民族、階級、国家の柵は消え失せて。
友情や愛情が立ち現れてくる。

そんな幻影が美しく垣間見える。
それが余りに儚く美しいため感極まってくる。
しかし階級も差別も戦争も、、、。
未だに何も終わってはいない。
今も新たな階級、差別、戦争が生まれ、勃発するばかりか、、、。


「国境なんて所詮人間の作ったもの。自然には関係ない。」
「戦争さえ終わらせれば。」
最後の脱走したふたりのフランス兵士(マレシャル中尉とユダヤ人の資産家)が深い雪の中を歩くシーン。
「撃つな。国境を越えた。」
「ああ、よかった。」と思わず漏らすドイツ狙撃兵。


「真の友情」や愛情は何処においても芽生えてくる。
越境し新しいアイデンティティを得ようとする者たちに。
フランス人マレシャル中尉が終戦後、ドイツの未亡人エルザを迎えに。
もしそれが叶わないにしても、、、。
残念ながら戦争はいつまでも続き、今やEUも崩壊の危機に瀕している。
しかしそれでもなお、、、。
他の幾人ものマレシャル中尉が他の幾人ものエルザを迎えに行くのだ。
それがこの「大いなる幻影ー希望」でもある。

「ゼラニウムの花」は厳しい土地でも、ラウフェンシュタイン大尉がしたように丹精込めれば育だつ。
ルノアールは、ギリギリのところで、われわれを信じている。


まるで全編が夢であったかのような。
美しい映画であった。

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