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父 パードレ・パドローネ

Padre Padrone

Padre Padrone
1977年イタリア
パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ兄弟監督・脚本
ガヴィーノ・レッダ原作(彼の自伝)
まさしく「父」である。家父長制がどうのという以前の問題である。超絶的な父と言える。

オメロ・アントヌッティ、、、父
サヴェリオ・マルコーニ、、、息子(言語学者)
ガヴィーノ・レッダ、、、本人(冒頭と最後に出演)


これほどの名作をまだ観ていなかったのだ、、、。
わたしのこれまで観た映画のベスト5には入る。
監督としても、タルコフスキー、ベルイマン、ユイレ・ストローブ、ゴダール、小津、溝口、ヴェンダースなどに引けを取らない存在と感じた。
これはとてつもない映画であった。
最近、映画を観る事の苦痛が募っていたのだが、こんなに素晴らしい作品がある事を知って、また観てみようという気持ちにも少しなってきた。(探してみよう、、、であるが)。

わたしは、羊飼いになるとはどういうものか、この映画を見て初めて知った。
牧歌的とは程遠い。


寓話的な出だしで始まるのだが、、、。
突然小学校から父に連れ出される6歳の主人公。彼は羊飼いの仕事で強制的に独りで山に暮らす事になるのだ。
幼い少年が義務教育すら受けられない。父には殴られ放題殴られる。
イタリアのサルデーニャ島を舞台に、貧しい羊飼いの子として生まれ育つ主人公の辿る過酷な物語である。
後に言語学者となる主人公であるが、20歳過ぎても全くの文盲であった。

頑迷な支配者である父を「エル・スール」「湖のほとりで」でも名優振りを魅せていたオメロ・アントヌッティが圧倒的な存在感を持って演じる。
まさに乾いた極寒の自然そのもののような支配者である。
人を育むと言うより、家畜のように小さく飼い慣らそうとする。
しかし血の絆は容易に断ち切れるものではないのだ。
と言うより、断つものではないのかも知れない。
父(父性)とは何か?
わたしも未だに分からない。
少なくとも主人公は力関係では逆転した時点であっても最終的にそうしなかった。
親子(父子)の関係とは、単なる呪縛を超えた自然のように険しく根深い強固なものなのだろう。
(何らかの意味を持った、いやそこに意味を見出すべき、、、)

父だけではない。
その土地である。
何故これほどまでに酷い目に遭った土地ー記憶に拘るのか。
ドイツに移住しようとし父の奸計のよってその地に引き戻され縛りつけられてもいる。
父の命令で本土の軍に入隊し、ラジオ技師となりその際、独学で標準語を身に付け、小学校、中学校、高校の卒業資格を取る。
しかし自らの意思で除隊し、故郷の島に戻り父の元に帰ってくる。
だが父は彼を認めず、ただ過剰な仕事を彼に押し付ける。
過酷な環境下の肉体労働しか認めない父のため彼は大学入試に落ちてしまう。
そもそも何故、彼は軍隊に残らなかったのか。
少なくとも、大学入試まではそのままいた方が楽であったはずだ、、、。
きっと生まれ故郷でこそ自らの本当にやりたいことができると信じていたのだろう。

結局、このままでは父との殺し合いなることを悟り、本土に戻り勉強を続け言語学者となるが、再び島に戻ってくる。
どうしても彼は戻る必要があるのだ。
彼の身体性がこの過酷な島ー自然に分かちがたく結びついているのだ。
どれだけ教養と知性を高めてもヒトの自然の部分は大きな基調となって彼を支配するのだろう。
最後に本人が語っている。
「わたしはこの土地に戻らなければ研究を続けられなかった。」
そういうものなのだろう。
人間とは不条理なものだ。自然がそうであるように。


彼が幼い頃から自然界の「音」に対する感覚を研ぎ澄ましてきた経験からであろう。
この映画の大変印象深い場面は、特に音に関連している。
演出も夜の自然の恐ろしげな物音や木の葉の葉擦れの音から動物や人々が揃って欲情する音など際立つものであったが、特にアコーディオンの音色に強烈に惹きつけられ、羊2頭と壊れたアコーディオンを交換したところである。
結局、そのアコーディオンでも彼は優れた音感で曲を弾きこなしている。
アコーディオンの曲にはフルートも絡んでいた。
グレゴリオ聖歌やモーツァルトのクラリネットの協奏曲なども挿入されていた。
もう一つは終盤、彼がラジオでフルート協奏曲を鑑賞している時に、父からラジオを消して出てゆけと怒鳴られ、逆に大きくするところである。
怒った父は殴りかかり、ラジオを取り上げ流しの水に沈めてしまう。
音が途絶えた後彼は、何とその曲の続きを口笛で吹くのだった。

この「音」に対する感覚が彼の言語学の研究に役立ったことは間違いない。
サヴェリオ・マルコーニの熱演素晴らしかった。

最後の本人の淡々とした生の語りも、大変興味深いものであった。


この映画いつまでもわたしのなかに残ってしまいそうである。



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COMMENT

メッセージありがとうございます☆

おっしゃる通り
この映画確かに観てます。
BSで・・

GOMAさまはなんでもお見通しのようで(笑

理屈抜きに
名画オーラが
色濃く漂う作品で
この数か月で2度ほど。

ですので次回の記事にしますね。

GOMAさまのレビューに接し
ほんとうにうれしかったです
解かり合えたようで。
この作品を
そうまで理解して下さることに
解かってくださる方がいらして下さることに。

GOMAさまのような濃密な記事は
到底書けませんが
なすがまま
思うがままに
綴ります・・・。


ありがとうございます☆


> この映画確かに観てます。
>
> ですので次回の記事にしますね。
>
いつものように楽しみにしております。
SAKI様の記事は内容もさることながら、文体が素敵で読み耽ってしまいます。
やはり美しい文章の書ける人というのは、違いますね。

毎日拝見させて頂いておりますので、、、。

また、こちらにも宜しくお願いします。

共感しました☆

>ポリフォニー(複数の旋律や和音)を
>奏でる音楽の響き
>それは
>五感を働かせ深層に訴え
>体内で処理され
>複雑な感情の理解を生む

>言葉を持たないが故に伝わるものは
>計り知れなくて

>そこでは
>和音進行から対位法、
>調性に転調など
>多岐にわたる見事な話法(楽典)が
>貢献している

~非常に共感します。
わたしが、彼の音楽的な感性から言語への豊かな関わりの可能性を感じた部分を大きく拡張・深化して下さり、この映画の鑑賞にひとくぎりつきました。
音楽(音)に対する感受性は、精神の基調を作っているとも思います。

では、また。
宜しくお願いします。

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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
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