サンクタム

SANCTUM
2010年アメリカ
アリスター・グリアソン監督
アンドリュー・ワイト脚本
ジェームズ・キャメロンほか製作総指揮
リチャード・ロクスバーグ、、、フランク・マクガイル 著名な探検家である父
リース・ウェイクフィールド、、、ジョシュ・マクガイル その息子
ヨアン・グリフィズ、、、カール・ハーレー フランクの非情さに憤る隊員
物語の最初と最後に現れる、ジョシュの水面からの逆光を浴びて浮かぶ全身の黒い影が神聖で瞑想的な光景であった。
パプアニューギニアの奥地にある人類未踏の洞窟探検譚である。
まさに”聖域”の探検というか侵犯というスケールのものであった。
何ともリアルで圧倒的な洞窟内の光景だった。
極限状態にもいろいろあろうが、ここでは太陽の光の及ばない世界というもの。
地底湖にも潜らざる負えなくなるが、潜水病の危険とも隣り合わせ。
電池が切れれば身動きも取れず、暗黒の世界に取り残される。
しかも、サイクロンがやってきて大量の水が滝のように流れ込んでくる。
飛んでもないシチュエーションだ。
極めて難易度の高い過酷な探検の割には、参加メンバーが素人臭すぎる感は拭えない。
多くの経験と高度な知識なしに挑めるものではないはず。
メンバーがどういう選定によるものなのか、いまひとつ分からなかった。
結局、洞窟に入ったメンバーで助かったのは1人だけではないか。
これは、単なる事故として見過ごせるものではなく、事件であろう。
犠牲が多かったで済む問題ではない。
スリルとサスペンスをフル稼働したとしても、もう少し人を生かしておいてもよかろうに、と思う。
実話が元ということで、後で調べたら隊員13人が皆、無事であったそうだ。
それには、ほっとしたが、ドラマにしても何もこんなに殺さずに面白い物語にできたと思う。
特に、余りに人間臭い諍いや暴力沙汰などが絡み、興醒めしてしまう面も否めない。
純粋にプロ集団による探査にしても、これだけの見事なセットが用意できるのだから可能であると思われる。
探検隊隊長の父と息子の確執から和解までの過程は絡めても良いとは思うが、他は余計であった。
全て素人の我儘から生じる、まずありえないようなトラブルばかりなのだ。(意識の低すぎである)。
しかしそれがあっても終始緊張を強いる展開で、道具立てがディテールまでしっかりしているため、目を離せないものであった。
洞窟の全体の形状などはかなり綿密に調べ、それに劣らぬ難関コース(シーン)をCGを含め作り上げたのだろう。
役者も少なからず、水にどっぷり入っているはずだ。
彼らの迫真の演技による切迫感、VFXによる環境の過酷さは充分に伝わってきた。
何というか、ハード面と、それを克服する身体の動き、そのフィジカルで物質的なドラマに魅力を覚える。
動きのディテールに説得力があり、醍醐味を感じる。
しかしそこに絡みつく、または動作の原因となる人間的な心情(劣情)は、少しお粗末といえよう。
特に女性隊員である。最初から連れて行きたくないタイプである。(女優のせいではない)。
反発心でいっぱいだった子供が、最後に父親を理解するところだけは感動的であったが、、、。
その場面である。
探検家の父が「何で洞窟なんかにこんなに拘るのか」と訴えかける息子に、「『洞窟』にいるときこそが、真に自分に向き合える場であり、ここがわたしにとっての『聖堂』なのだ。」
と返すところが印象的である。
それは、とても分かる。
犠牲者を出していなければ、問題はない。
(カールのような敵意の反応がアメリカ人の普通の感覚であろうか)。
しかし確かにそのような究極の場を欲する人間はいるものだ。
人によっては、そこが深い雪の山頂であったりするのだろう。
それは、とてもよく分かる。
わたしにとっての聖堂は、といったら、ただ横になりたい。
それだけだ。
眠りの底にそれがある。
昨日書いた記事は抹消した。
あまり気の進まない映画での記事は今後止めようと思う。
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