ネイチャー ~火山・鰐

ENCHANTED KINGDOM
2013年
イギリス
ドキュメンタリーフィルム
パトリック・モリス、ニール・ナイチンゲール監督
最近、火山の噴火、地震が相次いでいる。
一万年周期で起きる超巨大地震も、後100年程度に迫っている可能性が高いらしい。
前回は7300年前で、九州の縄文人が多大な被害に遭遇したようだ。
その後の100~200年は人の入れる大地にすらならない。
そのため彼らは、地面ー樹木は捨て、狩猟に切り替えた。
火砕流は凄まじく高温で速く走り、水面を瞬く間に渡り、大地をたちまち焼き尽くすという。
自然の破壊力は尋常ではないことが察せられる。(NHKサイエンスゼロを参照)。
TVで「ネイチャー」というBBC EARTHの作った映像を見た。
もはやカメラの目というものを、意識せずに身を委ねて見られる技術レベルのものだ。
その為、妙に心地よい映像になってしまっている。
子供向けに作られているのか、捕食の際の残酷なシーンは編集されていたようであるが、そこは大人は想像できるし、問題はない。(何でもそのまま即物的に示せばよいというものではない)。
ここでも、今現在生命が生息出来ない、地中のマグマが生々しく噴出し毒ガスで充満している場所が紹介されていた。
地球とは思えない光景が広がり、こんな場所があること自体、困惑してしまう。
高温ガスと塩の世界であり、あたかも地球の生まれた当初の姿に似ている。
凶悪なエイリアンがどこからか飛び出してきそうな、異様な場所である。
更には、砂漠化して水のない地で水を求めて彷徨うものたち、深海や険しい山岳地で光を求めて戦いを繰り広げている生命の姿が広く捉えられていた。
過酷なありさまである。が、sophisticateされた、綺麗な画面であった。
恐らく、TVの前でソファに寝っ転がって見ている人も多いと思われる。
メディアである以上、そういうものだ。
これまでの自然災害の様子もみな、カメラを通した映像で知る情報でしかない。
これはこれで大変な資料である。
先のNHKの番組もこのドキュメントも主体的な情報の受け取り方いかんである。
撮影が何より過酷であったはずだ。
ただ唖然とする事態をすんなり心地よく呑み込める情報に編集してゆく過程に、相当な労力が費やされている事を察する。
しかし、それでも尚つくづく感じるのは、多様な場所と多様性を生きる生命のあり方だ。
この自然の様態を見ると、基本が「多様で在る」しかないことが分かる。
「過酷さ」と「多様性」を、地球においても生命にとっても、実感できる2つのプログラムであった。
「ネイチャー」の中でとりわけ印象的であったのは、地球とは思えない活火山の究極的な様相ー死の世界であったが、ナイル鰐のひたすら獲物を俟つ姿にも強いインパクトがあった。
恐竜時代から生息し、1年間捕食しなくともじっと耐えている強靭な生命の、逞しくも気高い美しさに見蕩れるばかり。
その生命力を象徴する鰐のファンになってしまった。
火砕流に見舞われたとき、鰐ならどうするのだろう?
水底に沈んでやり過ごせるものでもなかろう。
恐竜時代から生き延びているのである。
何かやり過ごす方法を知っているのだろうか?
少なくとも深い谷などでそれが遅滞するような事態がなければ、人では逃げようもないと思える。
地震も含め、本格的な調査と対策は優先されなければなるまい。
「ネイチャー」 日本語ナビゲーターの滝川クリステルが、やけに浮いていた。
夏目三久さんのような確かな日本語を話す人か、声優を使ったらどうであろう。