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闇という存在~カラヴァッジョ

Maria.jpg

1606年にカラヴァッジョが描いた「法悦のマグダラのマリア」が400年ぶりに発見された。
2014年のことである。
松岡正剛氏曰く「これは、もうひとつのモナリザである。」


闇に身を任せ溶けゆくマグダラのマリアだ。
ティツィアーノの豊満なそれとは、かけ離れたマリアである。

闇とは何か。
教会の闇である。(教会は昼間でも暗い)。
救いを求める祈りの空間である。
無限空間に通じる場である。

それにしても深い闇だ。
あまりに深い。
この絵において闇は闇という存在であり、そこから光が析出されている。

故郷のカラヴァッジョ(ロンバルディア地方)における、伝統的な光と影によって織り成される教会壁画が身に染み込んでいた。
それは彼のルーツとも言えた。
写実に特に秀でていたがそれは、象形的フィルターを通さない絵であった。
彼の現実の延長線上に生成されるものであった。
平板で説明的な象形であり単なる宗教闘争のプロパガンダに過ぎない当時の宗教画(カラッチなど)とは全く異なる次元にいた。
キアロスクーロ(明暗法)を超えた闇自体のの精神性を湛えて。
すでにバロックを予感させる絵画でもある。

「法悦のマグダラのマリア」

カラヴァッジョが最後まで手放せなかった絵であったという。
調度ダビンチがモナリザを生涯手放さなかったのと同様に。


僅か38歳で逃亡先の海岸で熱病で倒れた画家である。
天才といえばこれほどの天才は考えられない。
しかも終盤は逃走ばかりに明け暮れる日々であった。
何という、、、。


謎は多い。

画家として成功しながらも暴力沙汰を繰り返す生活に溺れた天才。
これは一体何によるのか。
早くからフランチェスコ・デル・モンテ枢機卿の庇護を受け制作に没頭できる環境に恵まれながら、何故絵筆よりも剣をもっている時間の方が長かったのか。
(この枢機卿自身、錬金術に明け暮れる面白い人であったようだ。)
しかし強大なパトロンを得て名声も手にしながら、ますます生活は荒れてゆくばかりであった。
殺人を犯すほどに常に殺気立っている心境とはどのようなものであったのか。

死の影は幼い頃から彼に付き纏ってはいた。
死と貧困、ペストの流行。
両親を若くして失う。
カトリックに対する異端公開処刑もローマに出てからは毎日間近に行われていた。
そして殺人により独り逃亡者として死と隣り合わせの緊迫した不安な日々を送ることに。

もう一つの謎。
これは彼の絵のかなり本質的な部分に触れるはずである。
主題が何であっても、彼の日常的現実から遊離しない形象世界。
それを殊更強調するかのような描写要素のひとつ。
彼は自分を様々な絵に登場させてゆく。

しかも宗教画に自分を入れるものか、、、。(いま他に、思い当たらない)。
『病めるバッカス』、『合奏』、『聖マタイの殉教』、『キリストの捕縛』、『ラザロの復活』、『聖ウルスラの殉教』、『ダヴィデとゴリアテ』(ここでは首を切られたゴリアテの顔となっている。大胆というか、不吉ではないか、、、)。
ラファエロ・サンティ が「アテナイの学堂」 で自画像をアベレスに当てて描くようなパタンはわりとあるものだが。

精神分析的な考察からも充分一冊の書物が書けるものではなかろうか。
しかし単にそれだけでは物足りない。
存在学的な受け止めがもっと為されてよいし、、、
ダークマターとは、こんな闇をいうのではないか、という気がしてくる。




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