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バグダッド・カフェ

Out of Rosenheim

”Out of Rosenheim”
1987年西ドイツ
パーシー・アドロン監督

これが西ドイツ映画であることに驚いた。
勿論、ハリウッド映画であるはずないが、こんなアメリカ砂漠のまっだだなかのドイツ映画とは、、、
しかしそれをものともしない繊細無垢の重戦車?がバッハのコードに乗り、一圓をオアシス化してしまう。

ヤスミン、、、マリアンネ・ゼーゲブレヒト
ブレンダ、、、CCH・パウンダー
ルーディ、、、ジャック・パランス
デビー、、、クリスティーネ・カウフマン

「バグダッド・カフェ」は、アメリカ西部、モハーベ砂漠の中にポツンとあるモーテルの名。
その広大な乾いた広がりは虚しく美しい。
その夕日を際立たせて何度も弧を描くブーメラン。
音楽と色彩が時空に深く溶け込んでゆく。
劇中のバッハの平均律も絶妙に絡んでくる。
このアメリカ西部の砂漠に、バッハをひたすら弾く青年がいることが映像に輝きを与える。
(わたしは実はこの青年に一番惹かれた)。
さらにキャンピングカーに泊まりながらそのカフェに入り浸っている初老の男の絵。
何故か光に拘るキッチュな宗教画に見えるが、その宗教画形式が何を描いても許される絵だ。
面白い。

主人公もカフェの女主人も他のひとも、この殺伐とした砂漠で、トカゲのように活きる。
恐らく、ここでしか生きれないために、ここを選んで暮らしているのだ。
ぶつかりながらも、と言っても常にブレンダが噛み付くばかりだが、活き活きと確かに生きている。
そうでないものは、出てゆく。
仲が良すぎて居心地悪い、と出てゆく昔ながらのファミリー客の選択にも説得力がある。
そしてヤスミンのように無理に還されても、帰ってくる。
バッハの平均律もここを駆け巡るからこそ際立って美しい。
ここだけのバッハである。
バッハの旋律に鮮明な原色が映える、なんてことのないカフェの室内。
それが、どんな宮廷より絵になっているではないか。

この作品に浸り、映画は絵と音楽であることを再認識する。
というか、映画の快感を知る。
淀川先生の気持ちが分かる気がしてくるものだ。

物語としては、アメリカの砂漠の町?に、ドイツから異邦人がやって来るというもの。
体格の良い婦人で、夫と別れたばかり。
ゆくところもない。
それで、砂漠の「バグダッド・カフェ」に流れ着く。
やたら濃いコーヒーを飲む。
アメリカンでは、ないのだ。

彼女の説明をしないマイペース振りと、やはり夫に逃げられたばかりの乾ききってイライラしている女主人は、すんなり合う方がオカシイ。
ブレンダにとって、ヤスミンは怪しい事この上ない生き物だ。
しかも自分のプライベート生活に、客のはずが知らぬ間に入り込んでいる。
あるとき、自分のモーテルと「オフィス」を綺麗に片付けられて激怒する。
(言い過ぎには流石に反省するが)。
しかし、その片付き具合は、ブレンダにとってもまんざらではなく、徐々にヤスミンの生きる場が確保されてゆく。
ヤスミンに何の打算もなく、彼女はただ可愛い赤ん坊やブレンダの息子や娘に愛情を持って打ち解けてゆくのだ。


若くして赤ん坊を持つブレンダの息子は、周りの無理解(砂漠状態)の中をひたすら生の象徴でもあるバッハを弾き続けてきた。
これは、彼にとって生きると全く同義の行為である。
ルーツがそこにない、ドイツの精神を遥か彼方から砂漠に水を引くように弾いてきたのだ。
そこに、彼の音楽を理解し愛する女性がドイツ本国からやって来た。
ここに、大きな化学反応が起きて不思議はないではないか。
「バグダッド・カフェ」は、ヤスミンの文字通り「マジック・ショー」により、そこを通過する大型トラック野郎のオアシスに変貌する。
泉の如く集まってくる人々のこころを愉しく豊かに満たしてゆく。
バッハもジャズにまで溢れ出す。すごい変奏だ。
乾ききっていた場所が賑やかに潤う。
誰もが納得し、ヤスミンをこころから迎え容れる。
ブレンダも戻ってきたヤスミンに駆け寄って満面の笑顔で迎える。
画家にはモデルを頼まれたうえに、、、ここはコミカルなところだ、、、プロポーズまでされる。
これで、ヤスミンに強制送還の心配はなくなり、アメリカ国民として、その砂漠に永久に住むことができる。


タイトル曲がエンディングで、エモーショナルに流れてゆく。
これも良いのだが、基底を流れるバッハの生の美しい脈動が人を活かしてきたことは確かだ。




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COMMENT

こんばんは☆

バグダッドカフェ
いい映画でした。

あの砂漠に、あのファサードをもつカフェがある
と聞いて未だに夢覚めやらず(笑
行ってみた~い☆


これぞ映画という感あります。
場違いな雰囲気のバッハが
見事に軸になって
綺麗に纏まっていて
完成度高いなぁ
っていうのが率直な印象でした。

引き換え
GOMA さまの評の格調の高さ

>この作品に浸り、映画は絵と音楽であることを再認識する。

>基底を流れるバッハの生の美しい脈動が人を活かしてきたことは確かだ。

あぁ、GOMA さま素晴らしいレビュー
しかも
バッハフリークには感涙ものです。

      *

メッセージ感謝です。
フォーレ好きです。
特にレクイエム
こんなレクイエム、
世界広しと謂えフォーレでなければ
永遠に成し得ないレクイエムかと。


エリック・クラプトンは
親友が大ファンで
いつもコンサートに誘われているうちに
いつのまにか私も(笑

我が家は
バスタイムに音楽を・・・
ということで
音響設備を装備しているのですが
今夜は、”Let it grow”を聴きます。
ですので
少し恥ずかしいのですが
BLOG記事は
私なりの”Let it grow”を・・・。

       *

サティの”ソクラート”
堪りません・・・
何れ、BLOG記事にさせて戴こうと思っています。

大好きな映画です

『バグダッド・カフェ』
大好きな映画です。

「タイトル曲がエンディングで、エモーショナルに流れてゆく。これも良いのだが、基底を流れるバッハの生の美しい脈動が人を活かしてきたことは確かだ。」
GOMA様の記事に触れて、ああそうだ、そうだった、と改めて目を開かれる思いです。

それにしても何とも素晴らしい映画評・・・
映画そのものを越えて胸に訴えかけて来ます。

今、頭の中には「Calling you」が流れていますが、
映画とは全く異なるグールドのバッハが
急に聴きたくなりました(笑)

凄いとゴージャス!言うことありません☆


> あの砂漠に、あのファサードをもつカフェがある
> と聞いて未だに夢覚めやらず(笑
> 行ってみた~い☆
>
SAKI様ならどこでもすぐに行けそうですね。
わたしは、典型的な動けない人間なもので、、、。

> バッハフリークには感涙ものです。

ここまで仰って頂けると、わたしも書いた甲斐があるというものです。
ありがとうございます。

> 世界広しと謂えフォーレでなければ
> 永遠に成し得ないレクイエムかと。

仰るとおり確かに奇跡的な神々しさです。
それにモーツァルトみたいな圧倒的な力で攻めて来るようなところがありません。

> 我が家は
> バスタイムに音楽を・・・
> ということで
> 音響設備を装備しているのですが

流石です。大分以前、SAKI様の記事に、素晴らしいお風呂(金ピカ)を購入されたことが書かれていたことを思い出します。
あれを見て、凄いなと感心しておりました。そこに音響設備ですか、、、
ハリウッドセレブですね!

> 私なりの”Let it grow”を・・・。

これには、参りました!
やはり外国語に堪能な方が訳されると違います。
圧倒的に美しい詩になっていました。保存版です。
もともとクラプトンは詩が良いのですが、それがしっかりトランスレートされていることに脱帽です。

> サティの”ソクラート”
> 堪りません・・・
> 何れ、BLOG記事にさせて戴こうと思っています。

お待ちしています。楽しみです!訳はすでに坂口安吾がやってますね。

ひとつお願いなのですが、勿論お暇なときで構いません。
SAKI様は、クラフトワークをどう聴かれるのか、知りたいです。
バッハフリークの方ですから、とんでもない頑固なジャーマン4人組の音をどう見られるのか、興味あります。
彼らはPVがまた凄いです。その徹底ぶりが。
完全な唯一無二のスタイルを独走して作ってしまい、追従者は後を絶ちませんが、好き嫌いとなると、これまたはっきり分かれるみたいです。
お嫌いでしたら、そういうことで、、、あくまでもお暇なときに、、、。
お忙しいところ、すみませんが、、、。では。

Re: 大好きな映画です

> 『バグダッド・カフェ』
> 大好きな映画です。

わたしにとっても、拾い物でした。

> 「タイトル曲がエンディングで、エモーショナルに流れてゆく。これも良いのだが、基底を流れるバッハの生の美しい脈動が人を活かしてきたことは確かだ。」
> GOMA様の記事に触れて、ああそうだ、そうだった、と改めて目を開かれる思いです。

> 映画そのものを越えて胸に訴えかけて来ます。

ありがとうございます。そこまで言っていただけると誠に励みとなります(祝。

> 今、頭の中には「Calling you」が流れていますが、
> 映画とは全く異なるグールドのバッハが

グールドのゴルドベルクについても以前書きました。
あれ、尋常ではないですね、、、。
しっかり音楽に浸りたい時に聴きます(笑。

ではまた、まーさん様のところにお邪魔させていただきます。
お暇なときには、是非いらしてください。
お待ちしております。

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Author:GOMA28
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絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ることもあります。
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