ダーク・スター

こういうパッケージ、、、
” Dark Star”
1974年アメリカ
ジョン・カーペンター監督
何ともすごい映画である。
この映画を見ているうちに、脳裏に浮かび上がったのは、未だその作品を見るに至っていない迷(名)監督エド・ウッドである。
きっと、彼ならこんなスペース・ファンタジー作ってしまうのでは、、、と思ったのだが、実際は更にぶっ飛んでいるらしい。
ますます敷居が高くなった。
しかし、これも大したもんである。
ジョン・カーペンターの初仕事であるそうだが、それにしてもと思い確認すると学生時代の作品だと、、、。
学園祭のドタバタ気分の乗りで作ったようなものなのか?
(しかし商品として出す際にリメイクはされているらしい)。
タルコフスキーの「ローラーとバイオリン」も彼の学生時代の作品であるが、極めて高純度の傑作であった。
作品に向かう姿勢というか、位置づけがひどく隔たる気がする。
これ、まさか卒業制作ではなかろうな、、、。
この作品は、大学校内を適当に使って予算の心配をせず面白いもん作ろうぜという感じで制作されたと思われる。
しかし、面白かったのは誰より作った本人たちであろう。
こちらも、そんなつもりで見る分には悪くもないが、知り合いの息子の作品を学園祭でノルマで見させられる気分にもなる。
道具立てや諸準備などの制作費は、ほぼお小遣い程度で済んだだろうか?
本も何というか、子供向けSFであっても、それはないという類のものである。
いや、子供対象なら真っ当な物理を下敷きに描かなくてはならない。
まあ、真に受けて誤学習するほど緻密な出来ではないので心配ないが。
これは、あくまでも大学生のパーティーの余興と言える。
宇宙のどっかの星で捕まえたエイリアンが、キャンパスに転がってたであろうビーチボールに手(足か?)をつけただけのものである。(これは笑える域を超えている)。それが変な悪戯をして船員を困らせるが何をしたいのかは意味不明なのだ。
その悪さが宇宙船に致命的な損傷を与えることとなる。(伏線もバッチリ?)
かなりの尺を取った、エレベーターのシーンは一体何なのか、さっぱりわからんが、廊下でも使ってフィルムの角度を変える映像を是非とも撮ってみたかったのだろう。
宇宙空間があたかも空気が充満しているような星が湿って瞬く光景。
その光景を眺めるのが好きな孤独好きの内向的で要領の悪い船員と粗野でいい加減な船員。
この宇宙船かなり深刻なトラブルが発生しても、ロックを聞いていて呑気に構えているのだ。
彼らの学生生活そのものにも思えてくる。
そう、始まって早々彼らは地球からの支援を予算削減から打ち切られたことを知らされていた。
何か最初から諦観に満ちたアナーキーでファンキーな雰囲気・感触は確かにある。
大学生活に何処かついてまわる孤独な自在感というか、、、。
それにしても、どこを利用したのか異様に狭苦しい変な並びのコクピットだ。
船室(休憩室?)は、モロ散らかし放題の自分の部屋の再現か?体育館の倉庫かい。
何処であろうと、少しはそれらしく作って見せてもよかろうに、、、。
それから冷凍保存された事故死したという船長。
船体が爆発寸前に真面目に彼に助けを求め相談にいく船員。
船長も何故か受け答えをしてしまうのだが、まるで要領は得ない。
(そりゃ死んで冷凍になっているはずだし、、、)。
また何故かAI化して誰の言うことも聞かない核爆弾を船員が外に出て、デカルトもどきの意味不明な説得を試みたり、、、。
コンピュータがまた説得力に欠けるデパートの店内放送みたいなやつ。
(これで不真面目な奴が真面に聞くか?)
これは、ファンタジーなのか?
ナンセンス・コメディーなのか?
何なのか?
確かに荒唐無稽で不条理なのだが、一笑に付しておしまいという代物でもないのだ。
実はこの作品も早回しでさようならしようと思い始めたのだが、最後のサーフィンをしてどこかの星の重力に引かれ衝突してゆくところで、この作品がカルト映画として、密かに?見継がれていることが少し分かってくる。
最後の方は飛ばさなくてよかった。
なんせ、核爆弾が船内で爆発したというのに、取り敢えず船外に出ていた者は生き伸びており(船長も生きていた!?)、最後にサーフィン好きな船員が船体の破片を板にして乗り、どこかの星の重力に引かれて飛び去って逝くという、究極的に物悲しいエンディングなのである。(もう片方の孤独を好む船員は最後までロマンに浸ってどこぞのピカピカ光る星に取り込まれて逝く)。
ここにブーツストラップされ、この作品が唯一無二の孤高のカルトたり得ているような気がする。
見終わって、時間を無駄にしたという気が不思議にしてこない、清々しさなのだ。
下手をするとまた見てみたくなるような、嫌な予感までしてくる。
何かサブミナル効果を巧みに使われた疑いも持ってしまうのだが、、、。
そこまで手の込んだ作品ではない。
結局、不可思議な魅力というものを味わえる逸品であった!
時間と心に余裕のある方には、ちょっとオススメしたい作品である。
(そうでない人に下手に勧めでもしたら、殴られかねない)。