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害虫

gaicyuu.jpg
2002年
塩田明彦監督

宮崎あおい
蒼井優
の両天才が、それぞれ幼いピュアな少女サチコと夏子を、よく分かった上で演じている。
サチコの依存体質であるフラジャイルな母を、りょうが好演。
ちなみに、父はいない。
サチコの慕う先生に、最近画伯としても儲けている田辺誠一。
ホームレスの知的障害者キュウゾウに、「さよなら人類」でお馴染みの「たま」の石川浩司。
サチコと気心の合う闇社会に生きるタカオに、「リリイ・シュシュのすべて」にも出ていた沢木哲。


母の最初のシーンが最期の部分を引き継ぐのかと思い込んでいたら、単に最初に過ぎなかった。
ただ物語は時間的に流れてゆく。

浅はか(偏狭)な正義感こそ、最もヒトの精神の深層レベルに強い怒りの火をつける。
それは「正義」でもなんでもなく、知の欠如に起因する愚劣な優越感に過ぎない。
(また、チンケな権力意識を満足させるための他罰主義であったりする)。
わたしも、つい最近、近隣のそれに対してまともに激怒したところだ。
激怒は一週間収まらず、家族がインフルエンザに次々に罹り、そっちの世話でそれどころではなくなったせいで、取り敢えず終息したとは言え。
殺意を一日に10回は覚える日々が続く。
(怒りが収まっても、ただでは済まさない!)

それはさておき、、、
サチコは、確かに恵まれているとは言えないかもしれないが、特に悲惨な身の上というわけでもない。
そのありかた自体には、元々意味も価値もない。
ヒトの幸せなどという価値付けは、ヒトの精神のありようである。
その精神が幸せと感じていれば、幸せという以外にない。
外からとやかく評価されるべきものではないだから。
大きなお世話なのだ。

サチコとキュウゾウは家に火をつけ、彼女は独り先生のところにヒッチハイクでトンズラするが、付けた家をわたしは最初、彼女自身の家だと早合点したが、あれはあれだけ献身的に面倒を見てくれた夏子の家だったようだ、、、。
その「こころ」の動き、必然性は理解するが、短絡ですらない素直さだ。
全焼している様子に、我に返り戰くが、後の祭りである。
もう先に進むしか方向は見えない。
向かうとすれば、唯一文通している信用できる先生のところしかない。
小学校を辞めて、原発現場で働く先生のもとへと。
しかし夏子はどうなったのか心配になった。
無邪気な無意識丸出しだが、将来的に素敵な娘である。
サチコの母の不倫やら自殺未遂からくる心無い(弱みに付け込んだ)噂や好奇の視線から必死に守ろうとしたことは事実である。
(ただの優越感からだけの行動ではない)。
それから、やはりあの放火、サチコに唆されたとは言え、実行犯であるキュウゾウさんが御用となるのだろうな。
火をつけて喜んでいては、保護されるしかない。
そうなのだ。恐らく罪には問われないであろうが、何らかの規範は身に付けるしかないのだ。

タカオの存在ゾーンも際どい。
極めて脆弱で呆気ない。
何処にも向き合えない母親も、まともな泣き方すら忘れている。

サチコは、行くべきところまで行って、先生と力強くすれ違う。
恐らく、喫茶店で彼を待っている間に、徐々に覚悟が決まっていったのだ。
あの自覚的な面持ちなら、きっと大丈夫だと思う。
(やはり、夏子の方が気がかりになってくる)。

「リリイ・シュシュのすべて」に通じるところが多い。
あちらは、独特の湿り気と過剰な陰りがある。
こちらは、もっとずっとあっけらかんとしているが、風がときおり強く吹きすさぶ。


いつも帰って、ビン入りのヨーグルトを食べるサチコが何故かとても愛おしく感じられた。







かの”アウトサイダー”を久しぶりに思い出した。
(あれには、結構呑まれた)。
コリン・ウィルソンは、ある意味タカオより危ういゾーンで生きていた。
下水道(地下水道だったか?)に本を大量に持ち込んで読んでいたとか、、、。
闇ー金の世界に呑み込まれる前に、本を持って逃げられるところまで逃げ切ることも出来ないわけではない。
本は知識を嗜む呑気な知識人の為のものではない。
魂をかけた武器である。
タカオは、コリン・ウィルソンになる道もあったはずだ。

ところで、キュウゾウさんは、なりすましか?
彼も密かに本を読んでいた可能性をサチコに察知されている。
それともただの、枕に使っていただけなのか。

サチコの目を閉じて書棚から本を手に取る所作は、殊の他象徴的であった。

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絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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