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アンビリーバブル・トゥルース

unbelivable truth
The Unbelievable Truth
1989年アメリカ映画
ハル・ハートリー脚本・監督デビュー作

ことばは全く噛み合わず、何も通じない。
だから、のっぴきならない状態で、お互いに何とか物事を運ばざるを得ない場合、契約を取り交わす。
とは言え、それもすぐに反故となる。
事態が微妙にズレてゆくからだ。
そして噂、先入観、思い込み、思い過ごし、思い違い、誤解、そして世界の解釈、、、。
何を大切に思っているかで、ひとはみな違う場所に生きている。

われわれは隣り合っているように見えても、同じ時空に存在しているわけではない。
実は時空を整序する遠近法は形式として作用しなくなっている、
いやはたして、絵画の世界以外で実効力をもっていたかも定かではない。
等質空間と線上的時間はすでに物理学的にも乗り越えられている。

「おれは誰も信用しない。」
と主人公は宣言しつつ、他者と関係を取り結び、何とか生きてゆく。
それ以外にどうすることもできない。(特にムショから出たばかりの身だ)。
周りの面々も、彼より自由で気ままかといえば、とんでもない。
どうにもならなくなると、お互いの胸を突き飛ばし合う。
まるで、道端で出逢ったカンガルー同士の喧嘩みたいで笑える。(オーストラリアではたまに見られるらしい)。
これが、お互いの存在の確認のようで、ペーソスに溢れている。
確認し合うのが、取り敢えず精一杯。
互の容認は小突き合いでへとへとになり、どうでもよくなった時点でなされる。

われわれは、ホントに言語をもったのか?
言葉で判らなくなったのか?
酒もタバコも役には立たない。

しかし、面白いのは皆がことばを超えて解りあってしまっているのだ。
誰も信用しない、といいつつ深く同調もしている。
ことばと裏腹に。
暗黙知というのもあろうが、直覚してしまういきものなのだ、われわれは。

もうひとつこの世界(次元)で生きてゆく(食ってゆく)には、やはり自分の優れた商品価値(長所)を活かすことだ。
主人公はエンジニアとして体系だった知識と秀でた腕をもっている。
ヒロインは持って生まれた美貌を活かし、本意ではないがモデルで荒稼ぎしてしまう。
親が当初心配したハーバード大の学費等、余裕である。
2人とも特にそれを誇示する気は毛頭ないのだが、外界との関係づくりと言えば、そこからしかないのだ。
少なくとも、言葉より確実性と分かりやすさ、即物的な信用性が保証されている。
下部構造として、不可欠なものとなると言えよう。
もっとも、ヒロインの親父さんとしては、娘の姿が雑誌で興味本位の目に晒されるのが気が気でない。

誰もの意識が、歯がゆくズレてゆく。
ズレては、いつの間にか各自の特異な固有時間の内に修復され、また再びズレ始めてゆく。
その間、言葉はことごとくノイズに他ならない。
契約は独りよがりであり、罪は冤罪であった。
事柄については、気づくのが遅すぎたものも出てくる。
しかし、世界がひとつになるチャンスがなくなったワケではない。
全的崩壊の予感である。
ヒロインの超脱する知性と感覚の垂直的に向けられる場所。

利害関係を超えた世界にアンテナを立てるヒロインの少女は、その象徴としての核問題に拘り続ける。
(それは現実的な核ではない。寧ろ原始宗教的な啓示を求める感覚か)。
時折、ふと核ミサイルの飛んでくる音に耳を済ます。

世界がひとつになる。
そんな夢の瞬間が瑞々しい。




最後に主要登場人物がみな主人公の家にそれぞれの思惑から(しかしなかば無心で引き寄せられ)集まってくるところが面白い。
何かの秘密を嗅ぎつけてきたかのように部屋に潜み、ドアの向こうを息を凝らしてうかがう。
ドアを開けてそれぞれの人間が次々に鉢合わせになってゆき、戸惑って、取り敢えず文句を言って散ってゆく。

主人公とヒロインが2人でミサイルの音に耳を済ます。
それがどんな啓示であるのか、、、


ゴダールともレオス・カラックスとも違う突出した感性が爽やかであった。
気持ちの良い映画である。

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明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。

今年は何本映画観られるんでしょう?!
楽しみにしています。

明けましておめでとうございます

余裕があれば、少しでも観たいと思います。
コメントお寄せくださいませ。
お待ちしております。

また、素敵な料理のブログにもお邪魔させて頂きます。

今年も宜しくお願いします。

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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
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