東京物語

1953年度日本映画。
小津安二郎監督。
笠智衆、、、平山周吉(尾道に住む)
原節子、、、紀子(戦死した次男の妻)
東山千栄子、、、とみ(周吉の妻)
杉村春子、、、金子志げ(周吉の長女)
山村聡、、、平山幸一(周吉の長男)
三宅邦子、、、文子(幸一の妻)
香川京子、、、京子(周吉の次女、教員)
東野英治郎、、、沼田三平(周吉の旧友)
中村伸郎、、、金子庫造(志げの夫)
大坂志郎、、、平山敬三(周吉の三男、国鉄勤務)
十朱久雄、、、服部修(周吉の旧友)
デジタルリマスター版がBSでやっていたので観た。
相当きめ細やかな修復が何度にもわたり行われてきたようだ。
オリジナルが焼失してしまったのが痛手であったか、この年代のフィルムであるからか、この画質が限界なのであろう。
以前観たのは、いつであったか?
ローアングルのモノクロ映画であることは勿論。
笠智衆の存在感は脳裏にしっかり焼き付いていたが、、、。
シュールである。
SF映画でもここまでシュールではない。
平凡で普遍的な日常を切り取った世界がこれであれば、もうわれわれは異界にいる。
今現在、何一つ誰ひとり、ことばにしても、この映画に重なってくる要素は見あたらない。
例え紀元前を題材にした作品であってみても、どれも今の人間ドラマに過ぎない退屈なものばかりだ。
小津安二郎の世界は、それらのどれにも全く似ていない。
人類にかつてこんな場所(時空)があったという、たまらない郷愁に駆られるこの超現実性。
あのバス。卓袱台。宿の部屋の前に、二つ几帳面に揃えられたスリッパ。絶えずはためく団扇。蚊取り線香からたゆたう白い煙。
紀子が手に持つ一升瓶。
タルコフスキーのワインの瓶と同様のアウラを纏う。
そして、美しい。

これほど美しい情感溢れる(シュルレアリスム)映画が他にあるだろうか?
出てくる人々の誰もが美しい。
ことば、所作、立ち振る舞い、表情それらの全てに品格が満ち、優しく清らか。
老夫婦が朝の埠頭を連れ立って歩く姿は、もはや下界ではない。
(といっても、決して冥界ではなく)。
この世界であって、すでに失われた世界なのか、、、。
例えば、アトランティスとかの、、、そんな夢想をしてしまう。
特に原節子 と香川京子のこの世離れした優麗さに、こころが沈静化してゆくのが分かる。
そして浄化されてゆく、、、。
この映画は、高血圧に効く。
いや、病一般の治癒に役立つ。
異次元の特効薬に違いない。

これから定期的に観て(服用して)いこうと思う。
しかし、笠智衆、原節子とは何者か?
あのおばあさんもとても素敵である。
ああいう人と一度縁側で、茶飲み話をしてみたい。
お湯は、程よい温度に保たれた「魔法瓶」から急須に注ぐ。
やはり茶請けには、お煎餅がよいか。

今度の水曜日が楽しみ、、、。

BSの予約忘れずに。
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