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tsuyu.jpg

もう一つ、荒俣氏の「図鑑の植物誌」から、”露”のイコンの章を思い出しました。
これはすぐに探せました。「露置く葉」の章です。

確かにオランダ静物画には、本当にリアルな露がよく葉に描き込まれています。
まさに玉のような露です。
私も静物画で描き込んだことがあります。
とても楽しいものです。そちらが主になるほど打ち込みます(笑)。
(ここでは脱線になりますが、この水滴を描く最高の名手はかのドラクロワです。こちらは躍動する馬の体につく水滴ですが、あの両眼視差を計算し尽くした色の並置による効果は凄まじいものです。)

「この美しいオブジェは、言うまでもなく、生命のはかなさをいやが上にも強調するシンボルだったのである。」

その他にも貝殻や昆虫も玉露と同じく寓意を持って植物にさり気なく(結構目立つのも多いですが)添えられていきます。ちなみに、貝殻は「永遠の死」、虫一般は「老い」、トカゲは「時の監視」ということだそうで、花そのものが生命の象徴であることから、そのアンチテーゼとしての重要な脇役・装飾ということでしょう。

程なくそれら引き立て役たちの寓意性は薄れていくのですが、形式的には残り、装飾的効果からさらに盛んに描き込まれるようになり、何と「露置く葉」スクールという植物画の一学派が形成されるほどになったのです。

「あらゆる花譜には玉露が滴るという騒ぎになった」ことで、例の植物画の名手ルドーテも描き込むに至り、ブームは隆盛を極めます。彼が描いた玉露を見に来た観客が、本物と間違いそれを拭ったという有名な逸話も残っています。

それもやがて、「1840年代を迎え、植物画譜が科学的正確さをより大きく要求するに従って、これら無用のオブジェは消えていく運命を辿った。」そうです。

今でも時折、美術館でそのようなものを見かけたりしますが。勿論、昔のオランダ・フランスの名作ではなく。
実は誰でも描き込みたいのです。ある意味、普遍的に。でも描き込む定番(寓意)が無い今、文学的・日常的関連のないものを描き込むのは、絵その物が豊かになるより異化されてしまう恐れが生じます。

私の初めて描いた模写が大好きなギュスターブ・モローの「オルフェウスの首をかかえるトラキアの娘」でしたが、背景のなんとも禍々しい空にどうしても現在のイコンであるUFOを飛ばしたくなり、非常に小さく細密なUFOを違和感なく描き込んでみると、見る人はやはり気づきます。その絵画展で余興のつもりで描いたものが一番よく見られた絵となってしまいました。あとから勿論消すように言われました(コラージュではなく模写なのですから)。私も虫のように小さいUFOばかり注目されて、私のモローが正当に見てもらえないのでは残念です。特に主題を混乱させるつもりで描いた分けではなかったのですが、遊び心(気紛れ)から飛んだUFOがロートレアモンかシュルレアリズム(コラージュ)の方に行ってしまう危うさがありました。主題に密着した玉露のような定番とは程遠い一瞬の中途半端なお遊びで終わりました。その絵はクローゼットの奥にまだ眠っています。勿論、UFOは飛び去っています。明日辺りまた出してみようかと思っています。

とんだ話に流れました。





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