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サイレントヒル

silent hill

”Silent Hill”

2006年
カナダ・フランス制作

クリストフ・ガンズ監督

ラダ・ミッチェル 、、、ローズ
ショーン・ビーン 、、、クリストファー
ローリー・ホールデン 、、、シビル
デボラ・カーラ・アンガー 、、、ダリア
キム・コーツ 、、、トーマス
ターニャ・アレン 、、、アナ
アリス・クリーグ 、、、クリスタベラ
ジョデル・フェルランド 、、、シャロン


その街は聖書からの文言や宗教(キリスト教)的な暗示に満ちている。
雪かと思いきや、空から絶え間なく舞い落ちてくるのは、灰であった。
陰惨な歴史から解かれることが永遠に来ないことを、思い知らせるに充分な荒涼たる風景だ。


そこに繰り広げられるまさに、廃墟映画。
わたしはゲームをしないため、「サイレントヒル」も「バイオハザード」も映画でしか知らない。
しかし、映画作品だけで比べてみると、こちらの方に見応えを感じる。
勿論、バイオハザードも見事なアクション映画であり、ヒロインの存在は圧倒的だ。
だが、こちらの主人公ローズ(ラダ・ミッチェル )も存在感においては全く遜色ない。

娘シャロンの身を案じて母親であるローズが、途轍もない地獄に迷い込み、試練を次々に突破して彼女を取り戻すという、如何にも元がゲームであることが分かる物語である。
この物語は、ただ母が娘を取り戻すに終わらないところにレアリティを覚える。
娘の魂は、別の次元-異界の存在に同化することではじめて安らぐが、その娘と時空間を共にするということは、この現実界には存在できないことを意味していた。
残虐で気味の悪い映像も多いが、空間の稠密な廃墟性がただならないものだ。
これほど不気味で抽象的なクリーチャーもこれまでに観た事がない。
しかし1番恐ろしいものは、やはり人間であった。

恐怖と狂信は相性が良いとつくづく感じる。
ヨーロッパは、勿論キリスト教に結びつく。
人々は共同体の内に、異端-他者を探り出し、彼女をスケープゴートとして矛盾や不満や不正を解消することを選ぶ。
さらに安寧と保全の為に、自らを丸投げする権力者を要請するのだ。
古今東西を問わず、人々は常に支配されたがってきた。
契約する相手が悪魔(異端)か神かは、兎も角。

サイレントヒルは、現実世界と地続きであるが、サイレンと共に暗転し悪夢の世界-異界に場が入れ替わるようだ。
どうやら異界は、30年前に少女アレッサが犠牲となった魔女裁判直後の時空に流れを止めているらしい。
病室に横たわる火傷で瀕死のアレッサの姿がそのままそこにある。
忌まわしい儀式に関わった、教会に籠る人々も、その凍結した時空の住人であろう。
アレッサに生き写しのシャロンも宿命の場所に引き寄せられてゆく。

外部の現実界に属する人間たちは、地続きの廃墟の姿のみを経験するだけである。
その内容-異界にはアレッサに何らかの関係性をもつ者だけが侵入できるのだ。
と言うより、アレッサの思念により作られた環境こそがサイレントヒルの内実と言えよう。

最後の方で明かされるが、シャロンは、アレッサの善の部分を切り離し外界に送った片割れであるという。
その母娘関係から、ローズはアレッサにとってもある意味母であることから、時空超えが出来たのか。
ローズの夫も娘の父ではあるが、彼には僅かに妻の香水の香が感じられるくらいで、全く異界の存在は感知し得ない。
それは、シャロンが養女であり、血のつながりがそもそもない上に、「父」という存在はオカルト思想においては他人同然ということだろう。
その父親と同じ場で家族として生活を共にするのが、この現実界であるとすれば、ある意味完全体となったアレッサであるシャロンと共に生きる母ローズは、何処に行こうと(家に戻ろうと)夫に出会うことはない。
そう、彼女の香水の香だけは、彼が微かに感じとることはあっても。

廃墟に魔女裁判、オカルトの方に深く針が振れると、このような亜時間の場にレアリティが生まれる。


演出が素晴らしく、脚本もカメラワークも秀逸であった。
最後まで緊張の途切れることのない、よく練られた物語である。



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