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告発のとき

In The Valley of Elah

”In The Valley of Elah”
2007年アメリカ映画。
監督は「クラッシュ」のポール・ハギス。

「告発のとき」とは、観始めた頃は息子を殺した黒幕ー権力・欲望に向けて父が捨て身の告発をするドラマかと思っていた。
邦題からは、そのような連想をもち易い。
しかし、この映画には特定の何者かの陰謀を暴き追求するための告発などは、ない。
息子は、重大な秘密を握ったために殺害されたとかいうものではなく、普段仲の良い同僚の兵士にちょっとしたはずみで刺殺されたのだ。
その若い青年は述懐する「もし違う晩だったら、僕が彼に刺されていたことでしょう。」
まるで、アルベール・カミユの小説みたいなリアリティが明かされる。
この邦題は、ポール・ハギスがこの作品をもって「アメリカ」をまさに今「告発するとき」として制作したものだ、ということを「日本人」に知らしめようと考えられたものであろう。イラク戦争に対して、2007年というのは早い。開戦あたりからもう撮り始めていたのだろうか?
数ある戦争・テロ関連の映画の中でも、極めて内省の深い自己対象化の徹底された作品であろう。
旧約聖書サムエル記にある「エラの谷」では、大方の日本人にはピンとこない。今のイラクの場所である。
エラの谷における戦いで、ゴリアテに立ち向かえる勇者は誰もいなかったなかで、羊飼いの少年ダビデが名乗りをあげる。
少年は、飛び道具で狙いを定め、石の礫で見事ゴリアテを打ち倒す。
その地における新たな戦いである。
しかし、ゴリアテもダビデもない。

ここにあるのは、この戦争の正当性とか、思惑とか、勝敗ではなく、最前線に放り込まれた若者の精神がズタズタに裂かれ極限的に追い込まれてゆく姿である。
彼らとしては、現状にどうやって耐えてゆくか、どう紛らわせてやり過ごすか、それだけが関心事となってゆく。
主人公のベトナム戦争にも従軍した軍警察退役軍人のハンク(トミー・リー・ジョーンズ)は、アメリカの正義を信じ、星条旗に敬意を払う男である。彼の息子マイクも陸軍に志願しイラクに赴く頃は、父同様アメリカの正義を疑わず、誇りをもって乗り込んで行ったはずだ。
しかし、戦争の現実は想像を絶するものであった。
マイクを始め彼らアメリカ兵は、自ら麻薬に溺れサディスティックな捕虜虐待を繰り返し、誰の命令でもないのに少年をひき殺す。
そこは善悪の彼岸の地であった。
自分自身の恐ろしさに慄然とし父への電話で、嗚咽しながら救いを求める叫びをあげる。
マイクを殺害した青年は彼の父に敬意を払いながら、あっけらかんと嘘を何度もつく。
彼を殺して遺体の処置を前にして、腹が減ったからと仲間3人と食事に出向く。
決して日頃から反目し合っていた仲ではない。
よくある言い争いが始まったに過ぎなかった。


この場所ー磁場とは何なのか?
ハンクは2人の息子を2人とも戦争で亡くした。
その虚しさ冷え切った怒りを何処に向けられようか?

国旗の上げ方に厳格なハンクが、星条旗を逆さまに上げて鉄柱に固定する。
「ずっとこのままでいい。」


シャーリーズ・セロンの迫真の演技も十分に感情移入してしまうものであったが、他の全てのキャストの存在感も際立っていた。
「メン・イン・ブラック」では到底見られないトミー・リー・ジョーンズの重厚で黄昏た演技には圧倒された。

これまでに観た戦争映画(帰還兵を巡るもの含)やテロ関係の映画より、遥かに闇を可視化している。
陰謀を巡らす権力上層部とか権謀術数を装置として置き、ヒーロードラマを創作・演出した娯楽映画ではない、「告発」作であった。








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