シンデレラ

”Cinderella”
2015年。実写版。
テーマは勇気と優しさをもつこと。
大切なことだ。
7歳の長女は「アナ雪」よりもよかったそうである。
子供と一緒に観たい映画である。
これほど良質な映画は、なかなか出会えないものだから。
はじめは主役の2人に違和感を覚えたのだが、話の進行に伴いしっくりしてきた。
後半はもうこの2人こそがまさに適役だと心底思った。
それにしても、継母のケイト・ブランシェット は強烈であった。
彼女が物語をきりっと引き締めていた。
クレジットも1番上で、彼女が主役かと疑った。
リリー・ジェームズ は観ているうちに、シンデレラそのものというような勇気と優しさを湛えた美しい女性になっていった。
キット王子も二枚目とは言えそうにないが、好青年が板についていた。
あれなら頑固な父親も改心するわと納得できる。
全く嫌味がない、不自然さもない爽やかな2人であった。
ヘレナ・ボナム=カーター は、「チャーリーとチョコレート工場」 と「アリス・イン・ワンダーランド 」にも特異で個性的な役で出ていたが、ここでは、お茶目なフェアリー・ゴッドマザー である。
ぴったりだ。
あの黄金の馬車にカボチャが変わるところ、徐々に戻ってゆくコミカルな場面は見ものである。
シンデレラのドレスの変貌もハッとする美しさであった。ガラスの靴もゴージャス。
ねずみとトカゲ、あひるの変身もユーモラスで楽しい。
CGの最も有効な使い方だ。
果たして運命か奇跡か?
CGー魔法の力をちょっとだけ借りるが、後は勇気と優しさをもったシンデレラと王子は結ばれる。
(とは言え、ちょっとだけの力が奇跡または運命を決定的に引き寄せるのだが)。
完璧な映像であった、特に舞踏会は間合いも良い。
それから全般に音楽がしっかり絵にマッチしている。
期待感が静かにドラマチックにひろがる。
あの階段を降りるシンデレラの青いドレスのインパクトは大きい。
母のドレスの面影はなくなってしまっているが、彼女がよければそれでよかろう。
しかし、エラ(シンデレラ)の実母は、偉大である。
「どんな試練にも負けない秘訣を教えてあげるわ。」
「勇気と優しさをもつことよ。」
自らの死に際にこんなことを伝えられるヒトはそうはいまい。
それに引き換え、父親の洞察力には参ってしまう。
よりによってである。
枝など彼女に届けている場合ではなかろう。
しかし、それがなければお話にならない。
(こういった話にはよく賢い母と愚かな父のパタンが見受けられる)。
最後にシンデレラは継母に「あなたを許します」とあっさり告げて、王子とともに出て行く。
この映画では姉たちについては童話にある肝心な描写が除かれている。
自分の足をガラスの靴に合わせようと、踵とつま先を切断している部分と、シンデレラの結婚式に出る途中で鳥に目をつつかれ潰されているところだ。映画は結婚式までは見せていないので、鳥の件は元より入る余地はないにしても。
継母も姉たちも王国の外にひっそり消えたようだが、穏やかな幕締だ。
ディズニー映画として正しい運びであろう。
童話の通りだと、娘には見せられない。
勇気と優しさに満ちた生活を送りたい。
娘とまた観たい。
考える映画ではなく、感じる映画である。
この映画、「シンデレラ」の新たなスタンダートだと思う。
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