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The Artist

"The Artist"
パーフェクトな映画であった。
これは「映画」というものを楽しむための「映画」だと思う。
”ブランカニエベス”を観たときと同種の感動があった。
制作スタッフの映画へのこだわり。その愛が半端ではない。
みな、映画が好きでたまらないという人たちだと想像できる。
そんな映画であった。


4:3の画面でモノクロ字幕のサイレントである。
中間字幕が要所要所で短く入る。
「ことば」は非常に簡潔であるが音楽が絶えず流れており、内容は雄弁に伝わる。
音楽とシーンの融合も大変高いレベルでなされている。
わたしはその形式からかなり昔の作品かと思ったが、どう見てもストーリーとかカメラワーク、演出など洗練されすぎている。
映像のトーンも絶妙で、他の映画より画面に食い入ってしまうほど。

2011年度フランス映画である。
この無音の説得力をフルに活かした映画作品と言えようか。
ミシェル・アザナヴィシウス監督。例のスパイ映画のパロディ作で有名らしい。
第84回アカデミー賞で10部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、主演男優賞など5部門で受賞している。
この作品については、納得である。


舞台は1927年から始まる。
クラシックカーがひたすらカッコ良い。お抱え運転手も粋だ。
時はサイレント末期の状況であり、1929年ウォール街の暴落による世界恐慌にも見舞われる。
主人公たちも当然、その時代の文化・経済に翻弄される事になる。

この映画はサイレント形式をとる必然性がある。
サイレント映画の大スターがトーキー映画を認めず新しいスターに追いやられて落ちぶれてしまう物語だからだ。
とても小気味よい展開で、かつてのスターと彼に憧れて映画界に入ったペピーの盛衰の対比が描かれてゆく。
主人公は起死回生を狙った監督・脚本・主演のサイレントを制作するが、ペピー主演のトーキー映画に客を全て奪われる。
彼は映画会社を離れ、私費投入の自作映画であったためあえなく破産だ。
ユーモアとペーソスを湛えた物語にこの映像形式がマッチしていることがよく分かる。
細やかな感情表現にこの形式が充分に活きている。
詩的で品格がある。

やがてトップスターとなったペピーが彼を経済的にも精神的にも影に日向に支え助けてゆく。
しかし過去の栄光に縋る誇り高い彼はそれを素直に受け容れられない。
彼は自らを芸術家-アーティストであると定義している。ただの役者ではない。
焼身自殺を図ったが、利口な飼い犬に助けられたり、ピストル自殺をしようとしたところをまたペピーに助けられる。
最後はペピーの計らいで、二人の共演作品が出来、彼は再び精気を取り戻す。
今度は声と共に、カムバックだ。

息の合った見事な二人のタップダンスで幕を閉めるのだが。
ここでもひとつエンドロールのタイミングがカッコ良い。
実にスタイリッシュなエンディングになっている。
全体が充分にアーティフィシャルであった。


ひとつ付け加えたいことは、犬についてである。
わたしは、犬より猫という人間だが、ここに出演していた犬の名演技には参った。
明らかに役をこなしており、演出でどうにかそれらしく見せているレベルではなかった。
この犬も立派に賞を受け取る資格があると思う。
もらうとすれば、助演男優賞なのか?


大変お洒落な映画であった。


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