ダンス・ウィズ・ザ・ウルブズ

"Dances with Wolves"
そのまま。
清々しい。
文句のつけようがない。
アラビアのロレンスを思い起こすほどのスケールであった。
荒涼とした大平原の峻厳な美しさ。
狼やバッファロー、馬などの動物の生々しい描写には圧倒された。
特にあの狼の演技?演出には驚く。
秘めやかで荘厳な音楽も申し分ない。
キャストについては、スー族のインディアンが個性的で味わい深く魅力的であった。
子供から族長まで皆、厚みのある崇高な存在として描かれている。
それに引き換え侵略者である白人たちの粗野なこと。
あれでは単なるゴロツキではないか。
自己対象化がひとつの強いテーマであることがよく解る。
「失われる前にフロンティアを見ておきたい。」
まさに異界での他者との関わり。
この命懸けの投企。
暗闇での飛躍。
初めての狼とインディアンとの遭遇。
未知との遭遇という以外にない。
自分のパラダイムを超脱することは、恐らくあの自殺を決意した時になされたのであろう。
脚を切断されるならいっそ死のう。
あれは一か八かの賭けであった。
いや、賭けですらなかった。
完全に死を決意したのだろう。
しかし奇跡的に生き残ることとなった。
ならば、生まれ変わることも可能だ。
そう踏んだのだと思う。
脚も軍曹付きの軍医に診てもらったおかげか、切断されずに治っていた。
ならば、孤独な地に赴きたい。
この選択が既に進むべき道を明かしている。
彼に野蛮な種族のように教えられてきたインディアンとの交渉を決意させる。
彼はその結果、正しい認識を得る。
(戦時中は必ず敵は魔物扱いである)。
認識の深まりと同時に周囲からは信頼を得てゆく。
揺るぎない関係性は、このように打ち立てられるものかも知れない。
大局的な政治的動向(歴史的背景)は兎も角、主人公の単独者として自立する過程が鮮やかに描かれていた。
全く異なる文化を持つ彼らとの関わりの中で、これまでの自分とは何であったのかを内省する。
(夏目漱石はまさに英国で日本を洞察したのだろう)。
そして自分を迎え入れてくれた共同体の価値に目覚める。
彼は自らの生を深く実感することとなった。
これまで一度たりとも感じたことのない充足であった。
文字通り生まれ変わったのだ。
得がたい絆を得て。
ケビン・コスナーの”狼と踊る男”は役にピッタリであった。
素敵な呼び名である。
「何処にいてもお前と俺は友達だ!」と何度も叫んで呼びかけられる関係など、容易く築けるものではない。
それを説得力を持って描ききっている。
この映画の普遍性はここにあると思われる。
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