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バートンフィンク

BartonFink.jpg

まさにカフカ的な細密な世界描写であり、デヴィッド・クローネンバーグとの血縁も匂わせる感触の作品であった。
端からディテールへの異様な拘りに尋常ではない世界観を覚えていたが、隣に寝ていた女性が惨殺されていることに気付くところから、あからさまに全てが発狂し始める。
不思議の国のアリスみたいな変容の不安も感じさせるほど。
現と妄想との絶妙なバランスを行く稀に見る傑作であった。


ジメジメした蒸し暑い安ホテル。壁が薄く隣の部屋の音が聞こえる。
部屋の壁紙がゆっくりとペロンと剥がれる。水滴が垂れる。
蚊が飛ぶ。下水管から音が漏れる。
主人公はタイプライターに向かうが、いくら経っても何も浮かんでこない。
机の前の壁には、海を見詰めて座りこむ女性の絵が掛かっている。
この劇作家バートンは、その絵がとても気になって見入ってしまう。

才能を見込まれて招かれたハリウッド映画であったが、依頼された仕事はB級レスリングものであった。
映画会社の社長はバートンをひどく高く買っており、彼に大きな期待を寄せている。
それは盲目的な情熱であり、その鞄持ち、プロジューサーともども、皆調子が狂っている。
庶民に光を当てた社会派の劇作家である彼は、完全に行き詰る。
そんななか、ホテルの隣部屋の保険のセールスマンであるチャーリーとひょんなことから懇意となる。ある意味、ニューヨークから来て誰も友人のいないバートンにとっての唯一の友と言えるが、いつもバートンが一方的に持論をまくしたてる関係でもあった。

原稿がどうにもならないバートンは、尊敬する作家に相談する。いざ会ってみると自堕落なアル中男であったが、頼りになるその秘書の女性に好意を寄せ助けを求める。
彼はその女性にギリギリの精神状態からは救われ、彼女と一夜を共にするが、世界は翌朝それまでの冗長性から、一気に相転換が起きる。
蚊が女性の体を刺した。
その蚊を叩いて殺した。
血はしかし止めどなくベッドに流れ出し、シーツは血で染められてゆくのだ。
彼女は血まみれで絶命しているではないか。

バートンは混乱を極め、隣のチャーリーに助けを求める。
彼はおれに任せろという形で処理を請け負う。
女性の死体はチャーリーが片つける。
彼はこれはなかったことにして忘れろと言う。
バートンは何もかも彼に任せ、映画の内容を確認したがる社長を何とか納得させに行く。

チャーリーはニューヨークに出張に行くことになる。
バートンはとても心細くなるが、チャーリーはすぐに戻ってくると言う。
彼はチャーリーに食事に寄ってくれと、ニューヨークの実家の住所を教える。
チャーリーはたつ前に、バートンに小包をひとつ渡し、預かってほしいと頼む。

その小包をタイプライターの横に置いてから、バートンは急に仕事が進み始める。
その脚本は彼のこれまでの最高傑作と確信できるものとなる。
彼は浮かれてダンスパーティーで「おれはクリエイターだ」と叫んで羽目を外す。
しかし、その原稿は社長からは完全に拒絶される。
更にこの先、給料分は書かせるが絶対に映画発表はさせないという飼い殺し宣言を出される。社長はこのとき軍に徴集されている。第二次大戦直前の状況である。

ホテルに帰ると、猟奇殺人犯ムントの事情聴取に、警官が彼を訪ねて来る。
首なしの猟奇殺人が立て続けに起きているのだ。
最も新しいものは、バートンの隣に寝ていた女性であった。
バートンは初めてチャーリーの真相を知る。
警官は彼をユダヤ系だと知るとあからさまに失礼な態度を示し帰ってゆく。

チャーリーが猟奇的殺人犯の顔でホテルに姿を現すシーンからは圧巻の展開である。
このホテルはやけに熱いと警官たちは言っているが。
エレベーターのあたりから火が吹き出て、ホテル全体がたちまち火に包まれてゆくではないか。
いまや人懐っこい世話好きなチャーリーではなく、警察に追われるムントとして長い廊下をやってくる。
何をか叫びながら、走り出し警官を射殺する。
「何故僕を選んだ。」の問いに彼は「おまえはわたしの言うことをちっとも聴こうとしないからだ。」と答え彼は自分の部屋に戻っていく。
バートンはニューヨークの両親の家に電話をするが繋がらない。

バートンはチャーリーに託された小包をまだ手に持って海岸を歩いている。
一向に中に興味を示したり、確かめようとする様子も無い。
前方から水着の綺麗な女性が歩いてくる。
彼女は彼の前に腰を降ろして海を見詰める。
その姿がまさに机の前に飾られた絵そのものであった。



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Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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