ゼロ ダーク サーティー

Zero Dark Thirty
2012年
アメリカ
キャスリン・ビグロー監督
マーク・ボール脚本・製作
ジェシカ・チャステイン、、、マヤ(CIA分析官)
ジェイソン・クラーク、、、ダニエル(CIA諜報専門家)
ジョエル・エドガートン、、、パトリック(米海軍特殊部隊隊員)
ジェニファー・イーリー、、、ジェシカ( CIA分析官)
マーク・ストロング、、、ジョージ(マヤのCIAの上司)
カイル・チャンドラー、、、ジョセフ・ブラッドレイ(イスラマバードのCIA支局長)
9.11以降、アメリカがビンラディンを殺害するまでを描いた映画。
2001年から2011年までかかっている。
その間、一途にビンラディンを追い続けたCIAの女性分析官を中心とした物語である。
よくある大層ドラマチックな演出の効いた戦争ドラマとは対極にある、淡々とした臨場感あるドキュメンタリータッチの描写である。
静かで抑えられたトーンであるが、通常のやり取りの現場からずっと緊張感が絶やされることがない。
前半、ビンラディンの居場所に繋がる情報を得ようと、捕えた捕虜に拷問を繰り返す。
殴る、脅す、水攻め、音による睡眠妨害、閉所に詰め込むなどいくらやっても一向に口を割らない。
お互いに消耗してゆき、先が見えない。
滞在するパキスタン街なかでは爆弾テロが続く。
西洋人人気のホテルレストランでも、主人公と友人の食事中激しい爆弾テロに見舞われる。
話の分からぬ上司とはしょっちゅうぶつかり、いらいらする。
金で口を割る幹部を見つけたかと思いきや、招き入れると自爆テロであり、彼女はその事件で友人を失う。
自分も車で出かける矢先に激しい銃撃を受け、防弾ガラスで九死に一生を得る。
その後は、根気強くビンラディンの連絡係の携帯発信電波を追って混雑する街中を彷徨い続ける。
居場所はやっとのこと突き止めるが、彼が確実にそこにいるとは確証できない。
人工衛星でも割り出せないように工作された屋敷に住んでいる。
その屋敷にいる女性の数やあまりにも完璧なスパイ対策などから、消去法で彼の存在を割り出す事が出来るだけだ。
大統領の説得に難航する。
屋敷を割り出した後も200日以上が徒に経ってしまう。
ストレスも極限までくる。
上層部が何もやらないリスクにようやく重い腰を上げる。
夜、0時30分に、ステルスヘリ2機で作戦決行となる。
パキスタン政府に内密で夜襲をかける。
”ゼロ ダーク サーティー”
目的は、ビンラディン殺害。
戦いとなれば一方的である。
子供の目の前で次々と銃殺する。
殺した相手は間違いないか。
周りの女に聞いても勿論、正直には答えない。
子供にその死体の名前を確認する。
間違いなく、ビンラディンであった。
やはりこの映画の一番の特徴は、失敗や拷問や犠牲や混迷など実情を地味に描き、アメリカ正義を賛美するマッチョ作品になっていないことである。
しかし主人公の狂気じみた執念は、自分をヒロインと化している面が明らかに見られた。
(「私のために、ビンラディンを殺してきて」と突撃隊員に言うところなどに)。
最後に主人公の女性が、「これからどちらに行くのですか」、とパイロットに聞かれ、何も答えず涙を流すところが、全てを語っている。
彼女は、途方に暮れる。
この虚しさは何か。
ジェット戦闘機たった一人で貸し切り状態での帰国である。
十年間ビンラディンを追い、殺したところで、アメリカがどこへゆくのか分からない。
自分は高卒でCIAに入ってからひたすらビンラディンを追い続けてきた。
そして彼を殺す事を果たした。
しかし何が変わるのか、何を達成したのか。
彼女自身自分がやってきたことの意味など考えたことなどないはず。
何が自分をそこまで駆り立ててきたのか?
やられたらやり返す。
この負の連鎖は止まることがない。
もともと行き着く先など誰も考えてはいない。
分かっているのは、、、
ただ消耗しきるまで続けるだけだ、ということ。
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