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エスター

ORPHAN.jpg

"ORPHAN"、、、確かに孤児であった。

養子を迎えるということは、どういうことなのか。
すでにふたりの子供がいて、下の娘は聾唖学校に通う子である。
充分に手をかけなければならない子がいて、なお外から子供を貰うという必然性がどうも共感しにくい。

妻がアルコール中毒で、下の娘マックスを池で溺れさせかけた。
3人目の子供が死産であった。
この件で、家庭がギクシャクしているからといって、子供がもうひとり増えたら余計に大変になるのでは。
少なくとも、こころの隙間を埋めるような身勝手な都合で子供は育てられない。
夫婦の認識がどうにも甘い。
子供をひとり育てることがどれだけ大変で責任が重いか。
まだ、ペットにでもしておいた方がよかった。


ともかく、この夫婦は自分たちの抱えた問題や矛盾を養子をもらうことで解消できると思った。
さて、ちょっと変わった自分の世界を持つ賢そうな子(エスター)を貰ってみると、、、。

最初の頃だけ良い子が来たと喜んでいた夫婦であったが。
公園でエスターが他の子を遊具の上から突き落として怪我をさせた頃から、不穏な空気に包まれ始める。
夫の前では猫を被っているが、それ以外のところでは、およそ子供らしからぬ言動が目立ち出す。
妻はエスターの異常さに気づき始めるが、夫もカウンセラーもエスターに丸め込まれ、彼女を庇い妻を責める始末。

夫婦の間は更に亀裂が深まり、幼い二人の子供は極めて危うい場所に立たされる。
周囲の人間でエスターに疑いの目を向けるものは、彼女の餌食になってゆく。
子供たちも脅され真実を打ち明けられない。
しかし、真相を探ろうとすればするほど子供たちに魔の手が及んでゆく。
妻の警告は誰にも届かない。
その過程を細やかに丁寧に描いてゆく。

そのなかで、エスターが死産した子供の灰を撒いた土で育った白バラを全部切り取って「お母さん、プレゼントよ」というところは、ある意味、この物語のキーポイントに思えた。
あそこで、妻は「何て酷いことをするの」と悲しみに暮れ、彼女を殴り激怒する。
確かに挑発的な意図からなされた行為であるが、妻は自分が完全に亡くなった子供の身代わりとして養子を得ようとしていただけだということに気づいていないことがここではっきり暴露される。エスターもそれを認識する。
エスターの過剰すぎる自らの腕の骨折は、自分というものの寄る辺なさに対する絶望的な行為であり、抗議でもあったのではないか。エスターの暴挙は彼女の絶望から引き起こされていく。
夫の方はまるで鈍感でどちらの気持ちも何も分かっていない。

エスターが役者が上と言っても、夫とカウンセラーの鈍さが少し程度を越している。
何も、「天使と悪魔」のトム・ハンクスほどキレる必要はないが、余りにも情けないレヴェルである。
その鈍さによって、この映画の恐怖とスリルが支えられていると言えるのであるが。
終盤からの畳み掛けは非常に濃密で緊迫感十分であった。

エスター側と母親側の両者を具にしっかり見ていたのは、1番下の幼い聾唖のマックスであった。
1番辛い思いをしたのは何を隠そう、実は彼女である。
双方の内面を感じつつも、間で必死に耐える幼い女の子の姿がとても孤独で切なく雄弁であった。
そして何より可愛そうだ。
(やはりこれは親が悪い)。


言うまでもなく、エスター役のイザベル・ファーマンの演技は真に迫るものである。
単に人格障害の凶暴な性格を隠し持っているというだけでなく、自分の特異体質に対する宿命的な悲しみと孤独も表していたのだから。
(トイレで暴れる、夫に女として扱われなかったシーンなどで)
恐るべき子役である。
しかし、どれだけ優れた子役といえ、これらを全て理解して役作りしているとは思えない。
勿論、そこが監督の演出の仕事になるだろう。


よく出来た映画であった。

冬の夜の氷の張る水の中。
「おねがい。わたしを助けて、ママ。」
「わたしは、あんたなんかのママじゃあない。」
最後の最後の場面、ここで決着が着くのだが、エスターが本心でこう告げてることは分かる。
しかし同時に、彼女は後ろ手にナイフもしっかり握っている。
母親は夫まで殺され、もうただ許せないという怒りに燃えている。

沈んでゆくエスターの見せた顔はこれまでで1番美しく見えた。

別テイクのエンディングでは、エスターが傷だらけの顔に化粧をして、銃を構える警察の待つ階下に歳相応のレディとして堂々と降りていくというもの。
彼女は成長ホルモン異常で、9歳に見えても、実年齢は33歳なのだ。


エスターにとって、本編のエンディングの方が救われることは間違いない。

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