狼男アメリカン

An American Werewolf in London
1981年
アメリカ
ジョン・ランディス監督・脚本
リック・ベイカー特殊効果
デヴィッド・ノートン 、、、デヴィッド・ケスラー
ジェニー・アガター 、、、アレックス・プライス看護師
グリフィン・ダン 、、、ジャック・グッドマン
ジョン・ウッドヴァイン 、、、J・S・ハーシュ医師
フランク・オズ 、、、コリンズ
ブライアン・グローヴァー 、、、酒場の老人
フランケンシュタインの次は、狼男か。
ということで、1981年制作映画。
「狼男アメリカン。」題からすると、少し薄そうに思えるが、大変濃くてホットな映画作品であった。
何と言っても特筆すべきは、コンピュータグラフィクスを使わずに、全て手作業で驚くべきSFXを成し遂げていることだ。
特典のビデオでリックベイカー氏の具体的な作業の流れを観たが、この仕事に対する愛情なしに出来ないことだということだけは認識した。
所謂、やり方がある訳ではない。ソフトの操作で作るのではない。
勿論、自分が積み上げた経験と知識はあるが、基本0から監督の構想を具体化するためにアイデアを捻り出して作り上げてゆく。
素材から自分で選んで工夫して作り、試行錯誤を繰り返して仕上げていく。
その過程を見ると、いやでも作品を鑑賞する目も肥えてくる。
気の遠くなるような作業であり、変身する主役もそれに飛んでもない長時間を共にするわけで、ともに同等の熱意がなければ無理だ。
彼らの、ものづくりの熱気というか、生きがいも伝わってくる映画であった。
何よりも白眉なのは、極めて明るい照明の下、部分的に変身過程の変化をきめ細やかにディテールに至るまで描写していること。呆気にとられるほどの表現力であり、説得力である。
しかも、変身時の苦しみに身を捩り悶えながらの明瞭な変身をまざまざと見せつける。
これは制作者側の余程の自信と確信がなければできないことである。
暗がりの中で単にフィルム操作で、動かぬ作り物に手を加えて演出する類のものとは全く次元を異にしている。
そして、作る側の楽しさが伝わってくる。
映画というものは、本来こういうものなのだと夢想させてくれる。
ユーモアと恐怖は相反するものではなく融合するものだと、監督は主張する。
些か力技ではあるが、それは、ありだと納得できるものだ。
夢と現実が入交り、夢の中でさらに夢見、現実への出口を見失う。
もはやそこには自分がいない!
死と生が交じり合う、死のうにも死ねない彷徨える魂が主人公に自殺を勧めに寄り集う。
自分(狼の自分)が殺した者たちだ。
真面目に謝ってはみる。他にどうしろというのか?
勿論、だれも許してはくらない。当たり前だが、、、。
場所は、ポルノ映画館で。
事態は深刻で修復不可能、全く絶望的で滑稽で笑いに満ちている。
そう、どちらかといえば、ユーモアと恐怖というより、ユーモアと絶望の気がしてくる。
恐怖は確かに物語中の人物にとってはそうであるが、われわれにとっての直接性ではない。
驚きは感じるが。(さらに技術・メカニカルな点で大いに感心するが)。
しかし、ここで描かれる絶望は、直に共有するものである。
この主人公ほど選択の余地のない追い詰められた立場にあれば、もう映画館で冗談言うくらいしか出来ることもない。
ただお喋りしていて決断が下せぬまま、満月の下の惨劇となる。
もはや、行くところまで行きなさいという感じで、一気にど派手にカタストロフを迎える。
ストーリー的にはお約束通りで、結末まで時計仕掛けにキッチリ展開してくるのだが、充分に面白い映画体験であった。
「美しき冒険旅行」のジェニー・アガター の大人になった姿にも出会った。
彼女に関しては、演技は申し分ないが、オーラは16歳の時の方が輝いていた。
2300年未来への旅よりも更に普通の大人になっており、物足りなさは若干感じてしまった。
(恐らく役のせいであろう?)
SFXにおいて特殊メイクを少しでも知りたいと思えば、このBlu-ray Discの特典が大変参考になるはず。
リックベイカー氏の解説はその内容だけでなく、ものづくりに関わる人間の基本姿勢に触れることも出来る。
今度は、ドラキュアか?
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