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美しき冒険旅行

walkabout.jpg
イギリス映画であるが、オーストラリアの広大な地での出来事である。
"Walk About"
オーストラリアのアボリジニの成人の儀式(未開の地での1年間の修行)をいう。

1972年制作だが、撮られた年代が何時ごろのことか画面からは判然としない。
時間を超越した普遍性を覚える光景が綿々と続く。
ある意味、オーストラリア奥地のドキュメンタリーフィルム的な価値もあろう。
いやドキュメンタリーよりも直接的な身に迫ってくるドラマチックな感覚である。
"Walk About"の実際も、かなり具に窺えるものだ。
これほど生々しい狩りの様子は、TV(教養)番組で見れる範囲のものではない。
途中で何度も文明と自然との物質的なカットアップの対比もなされる。
撮影技術、カメラワークも申し分ない、このような映画ではじめて可能となる映像体験である。



始まってすぐに、日常が急展開する。
白昼の悪夢だ。
昼食をピクニック気分で摂ろうとしたら、父親の発砲。拳銃自殺。乗ってきた車は火ダルマ。
砂漠の真ん中で、女子校生とその幼い弟が放り出される。
姉は極めて落ち着いて弟を導くが、場所が場所であった。

こちらとしては、とんでもないことになった、とかなり気をもむ。
確かに過酷な世界なのだが、それほど酷い描写ではない。
水を求めて炎天下にもがき苦しみのたうち回るようなところまで行かない。
何故か淡々としている。
これはお姉さんの人格からくるものに思える。
落ち着いていて、弟にとって最も安心でき信頼に足るタイプの女性だ。

自然の生き物や動物の死骸、小動物の動きや枯木や砂が実に美しく描かれてゆく。
果てない砂漠の光景があまりに見事で、悲惨な状況という気持ちは薄れてしまう。
だからといって、サン・テグジュペリの星の王子様にはもちろんならない。

丘の上になんとか登り見渡すが、道路も家らしきものも見当たらない。
1夜を明かして彷徨い歩き、水も尽きかけた頃、緑の木が視界に入る。
水の湧き出るオアシスを見つけ、ほっと一息すると、Walk About中の精悍な少年に出遇う。
2人の待ちかねていた、人間の登場だ。(実はこちらも心細く、待ちわびていた)。

その少年との野生の生活が始まる。
ことばも通じない関係で大平原で生活をともにする。
これは鮮烈な体験だ。
自然と他者とを相手に生きるのである。
少女にとっても弟にとっても無意識に刻まれる位の記憶になるに違いない。


3人はすぐに打ち解ける。
幼い弟の順応ぶりはやはり早い。
無邪気に狩りの真似事をして喜ぶ。
アボリジニの少年の狩りの腕に憧れを抱いている。
少女も自宅のプールではない、自然の池での水泳を通して自然に溶け込む。
しかし、少年との間には、お互いを意識する微妙な溝が生じる。
ここでの、自然物と特に少女の素肌の物質的な対比など、芸術的な撮り方が際立つ。
マン・レイを思い浮かべた。

3人は廃屋にたどり着く。
そこであたかも家族のように暮らし始める。
かなり仲良く過ごしていたが、そこにはすでに性が芽生えている。
少年は或る時、全身に化粧を施し、彼女の前で舞い始める。
求愛の踊りであることは、彼女もはっきり認識する。
彼はWalk Aboutが終わり、成人として求婚したのだ。

しかし、彼女の意識は文明にしか向けられていない。
戻ることしか念頭にはないのだ。
弟は彼に感化されているが、彼女は弟とそこを出る決意をする。
翌朝、2人は夜通し踊っていた彼が力尽き、木にぶら下がって死んでいることを知る。
彼女はまたしても死に対して淡々とした態度で、弟とともにそこを去ってゆく。
道路はすぐ近くにあった。(弟がすでに見つけていた)。

道路の路面に一歩踏み出すときの彼女の表情が印象に残る。
自分の社会に戻る象徴的行為でもあり、そこを街まで歩くことが戻るための儀式である。


最後は数年後主婦となった彼女が、アボリジニの少年と泳いだときの思い出に耽る光景で閉じる。

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