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ヒミズ

himizu.jpg

モーツァルトのレクイエムの最初のパートが何度も自然に溶け込んで鳴っている映画というのも、、、この映画くらいのものだろう。
いまのわたしにかなりフィットする映画だった。
とても気持ち良い。
よいマッサージを受けた時のような感じだ。
「普通」に観れた。
その刺激が合ったのだろう。
かなりセリフで聞き取りにくい箇所があったが、あまり気にならなかった。
その荒涼とした廃墟と病いの強度を受け取った。

「ヒミズ」、、、もぐらのことだそうだ。
ここでは、主演の今をときめく染谷・二階堂演じる2人のみならず、ほぼ全員がそれではないか。
勿論、観ているわたしも「ヒミズ」である。
そういうテーマの映画である。
普通のヒトが出てこない。
誰もが病み切っている。
とは言え感覚は、いたって素直でノーマルだ。
とても「普通」だ。
だから普遍性がある。

しかし震災後という現実をアクセントとして、この映画の扱う普遍的問題を強調し鮮明にしようとしているように受け取れるが、どうであろう?
演出上、荒涼感や絶望感は増すが、内容的に震災後をもってくる必然性は見当たらない。
少なくともテーマは震災後の何らかの問題では全くない。
だとすれば、それは利用する類のものではないはず。
はっきり言って、震災(後)はいらない。関係ないので外すべき。

二階堂演じる茶沢という女子は特異なトリックスター的役目を果たしていく。
染谷演じる住田にとってこの上ない存在である。
彼女がいなければ、彼は完全に行き着くところまで行ってしまうことは間違いない。
しかし、実際あのような存在が現実に傍らにいてくれる可能性は、ほぼない。
彼女も母親に殺される寸前の身の上でもある。
そして、不自然なほど優しいテント住まいの近所の人たち。
住田をボコボコにする悪党、そしてあからさまに(挑発的に)彼を疎む父親。
(しかし彼は明らかに息子に殺されたがっていた)。
ネグレクトの挙句男と消える母との対象的な他者となっている。
さらに彼らにもまして茶沢は、危ういほどまとわりつき彼のことを心配する。
この有り得ない両極端の特異さとそれらの作るコントラストがこの映画の特徴だ。
この強烈なコントラストが強い刺激を発散し続ける。
刺激が強ければ良いというものではない。
しかしこの映画の刺激は、設定は非現実的だが、極めてリアルに描写された説得力にある。
具現化する表現・演技がそもそも凄まじい。染谷・二階堂・渡辺哲の圧倒的な演技力による。

最期、湖から上がる住田は更生している。
ここ(茶沢が湖に石を投げてから後)の演出は見事であり、絶妙。
茶沢に寄り添われ。
2人とも泣きながら走ってゆく。
共に叫びながら。
「がんばれ」「夢を持て」「希望を持て」「人は一輪の花」などどこかの歌にあったような普通の言葉が一回り回って重々しくも鮮烈な響きをもって蘇る。
何故か清々しい。

とても気持ちの良いエンディング。
訳の解らぬ「希望」をわたしも感じた。



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