プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
必ずパソコン画面(PCビュー)でご覧ください。


*当サイトはリンクフリーです。

PICKUP
still dark
この世界に残されて
ファミリー ファミリー
通告
暗黒街のふたり
Autonomous 自律
怪奇蒐集者 黄泉がたり 村上ロックより抜粋
閉鎖病棟 -それぞれの朝-
ついに実現、S君の絵画展
S君 小さな情景展 Pre001
遠藤彰子先生と語る
春夏秋冬そして春
キューブ CUBE
ドント・ハングアップ
キャット・ピープル
パラサイト 半地下の家族 -2
パラサイト 半地下の家族 -1
ヘンリー・ムーア~彫刻に見る普遍性
911爆破の証拠―専門家は語る 前
9/11:爆破の証拠 - 専門家は語る 後
アポロ 11
シャチ~優しい殺し屋~
ハイヒール
お嬢さん
とうもろこしの島
セールスマン
トラピスト1に寄せて
「労働疎外より人間疎外」によせて
カッシーニ グランドフィナーレ
カッシーニ グランドフィナーレⅡ
シチズンフォー  スノーデンの暴露
スノーデン
レヴェナント: 蘇えりし者
透明な身体性
森羅万象を描く デューラーから柄澤齊へ
ヴィデオドローム2 ~イスラム国 ~アノニマス
見えない重力を描く Ⅱ
美の翳りに寄せて
写真についてーⅡ
午前零時の奇蹟(シュル・レアリスム覚醒の時間)
パーフェクト・デイ ~ルーリード ~ローリー・アンダーソン ~スーザン・ボイル
未来派の画家~ウンベルト・ボッチョーニ
Balthus ~ バルテュス展行ってまいりました。
「ゴールドベルグ変奏曲」 バッハ  ~グールド ~P・オトゥール ~ニーチェ
大昔のスケッチ(詩画集のための試作)
すでに世界は終わっていたのか ~ ヒエロニムス・ボスその1
スヌーズレン002
情報リテラシー  ~華氏911 ~不都合な真実
南伸坊「歴史上の本人」
プラトーン
アリータ
カレンダー
10 | 2023/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
邦画特選
☆彡 東京物語
☆彡 秋刀魚の味
☆彡 麦秋
☆彡 晩秋
☆彡 雨月物語
☆彡 アフタースクール
☆彡 ラブレター
☆彡 四月物語
☆彡 花とアリス
☆彡 スワロウテイル
☆彡 リップヴァンウィンクルの花嫁
☆彡 寄生獣
☆彡 寄生獣 完結編
☆彡 ヒミズ
☆彡 冷たい熱帯魚
☆彡 女子ーズ
☆彡 フラガール
☆彡 怒り
☆彡 ミスミソウ
☆彡 志乃ちゃんは自分の名前が言えない
☆彡 少女邂逅
☆彡 羊と鋼の森
☆彡 空(カラ)の味
☆彡 カノン
☆彡 花筐
☆彡 ローリング
☆彡 サマーフィルムにのって
☆彡 あん
☆彡 ドライブ・マイ・カー
☆彡 お嬢ちゃん
☆彡 夏の妹
☆彡 モダン・ラブ
☆彡 ソウル・フラワー・トレイン


アニメーション☆

★彡 サマーウォーズ
★彡 君の名は。
★彡 この世界の片隅に
★彡 言の葉の庭
★彡 聲の形
★彡 魔法少女まどか☆マギカ 劇場版前後編
★彡 魔法少女まどか☆マギカ 劇場版 新編
★彡 映画けいおん!
★彡 涼宮ハルヒの消失
★彡 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ
★彡 たまこラブストーリー
★彡 百日紅 Miss HOKUSAI
★彡 planetarian~星の人~
★彡 『千と千尋の神隠し』を観て。廃墟のテーマパークの可能性
★彡 星を追う子ども
★彡 劇場版総集編メイドインアビス 旅立ちの夜明け・放浪する黄昏
★彡 Dr.STONE
★彡 天気の子
★彡 竜とそばかすの姫
月別アーカイブ

ピアノレッスン

piano.jpg

"The Piano"

ジェーン・カンピオン監督・脚本
マイケル・ナイマン音楽

ホリー・ハンター 、、、エイダ・マクグラス(口のきけないピアニスト)
ハーヴェイ・カイテル 、、、ジョージ・ベインズ(エイダのピアノを買い取る)
サム・ニール 、、、アリスディア・スチュアート (エイダの結婚相手)
アンナ・パキン 、、、フローラ・マクグラス(エイダの娘)
ケリー・ウォーカー 、、、モラグ


まさに"The Piano"であった。(何故、そのままではいけないのか?)
いつもわたしは邦題を見てから原題が気になる。
信用できないからだ。
今回も、「ピアノレッスン」ではないことが分かった。
これでは人間(の恋愛)ドラマ止まりであろう。
The Pianoは”Soft Machine”に近い。
「17歳のカルテ」ほど酷くはないが、明らかに違う。

デヴィッド・クローネンバーグの女性版かとも思える程の、piano(という延長)との機械的・有機的な融合、さらに原初的なエロスがむき出しに残酷に描き出されていたジェーンカンピオンの見事な「映画」であった。
わたしは随分と前に彼女のショートフィルムをVHSで3本ほど観た事がある。
確かオーストラリアのコンテストで最優秀監督賞をもらい(彼女はニュージーランドの監督だ)、”ピール”というのがカンヌ国際映画祭で最優秀短編映画賞を取っていたはず。特になんていうことのない面白い映画と思っていたが、後々何故か残るものがあった。
その頃の作品をもう一度観てみようとも思わないが(VHSは面倒くさい)、こんな映画を撮る人だったのだ、と改めて感慨に浸った。

精霊の宿るようなアニミズムの息づく幻想的な映像美とマイケル・ナイマンの繊細で透明に絡む音楽。
打ち寄せる海の波飛沫を受けて、岸辺に捨て置かれるpianoの静謐な雄弁さからもう胸が痛くなった。
pianoから引き剥がされたエイダ(ホリー・ハンター)の身体的苦痛にわたしの身体も共振する。
もう最初から鷲掴みされ、息もつかせない。
彼女が口のきけないことが、より内面を際立たせpianoとの一体感を浮き彫りにする。
緊張感がいやが上にも昂まる。
蒼い空と赤裸々の美しい旋律とともに。

pianoの蓋があたかもクローネンバーグの噛み付くタイプライター同様に敵意を示すかと思うと、自らの身体の一部(肋骨あたりか?)をへし折って取り出すかのごとく、ピアノのキーをひとつ愛の印として相手に差し出そうとするなど、、、延長した緻密な道具との融合体としての身体性と、ヒトが「人間」である前にはるかに深く「性」である現実を、余すところなく濃密に映像化してゆく。
われわれにとって身体はテクノロジーの前提なしに成立し得ない。
ましてやpianoは最も精神の近場にある音楽を具現化する重い機械・道具である。より長いpianoならば弦が伸び倍音はさらに理想的になるが、その関係(身体)性の不自由さが悩ましい。
さらに「死」がまだ地球上に導入される前から「接合」というかたちですでに単細胞生物に「性」は芽生え始めていた。
「人間」など、たかだか200年に満たぬ概念に過ぎず、ミッシェル・フーコーの謂うように、浜辺の砂の表情のようにやがて消えゆくだけのものである。きれいに初めからなかったかのように。
この「映画」は大変な強度をもった本質力と美意識に貫かれている。

ナタでpianoを傷つけられ指を切り落とされた彼女が、ピアノを縛っていたロープに足を絡ませて海に身を投じる場面は、まるで神話を実際に目の当たりにする衝撃であった。pianoと指を失えば、もはや彼女は羽のない鳥だ。
羽を背にしょった娘の母親を自分に繋ぎ留めたい無邪気な悪意も自然だ。
夫が彼女の言葉を正確に聴きとり、彼女の恋の相手に彼女を託すのも頷ける。


何故、彼女は海底でpianoに繋がれたまま漂う屍体とならなかったのか?
恋人との恋愛の情があったからなのか?
生への純粋な衝動からなのか?
恐らく両者によるものだとわたしは思う。
水中であのロープから足を引き抜いて浮かび上がるちからに、本当の救いを感じた。

何の救いなのか、どういう救いなのか分からない。
しかし救いとは、きっとこういうものだと感じた。
男が作った金属の義指がコツコツと鍵盤に当たり、妙に艶かしくて美しい。


配役は申し分ない。

とてつもない大傑作であることは言うに及ばない。


今度観る映画に困った。

関連記事

COMMENT

No title

>精霊の宿るようなアニミズムの息づく幻想的な映像美とマイケル・ナイマンの繊細で透明に絡む音楽。
>打ち寄せる海の波飛沫を受けて、岸辺に捨て置かれるpianoの静謐な雄弁さ

まさに
そうした作品でした・・・。

時にピアノは
言葉より雄弁に気持ちを伝え
そしてこころ繋ぐもの


ですが
ピアノの沈んだ
海底は音のない世界
こんな世界こそ
エイダにとって
いちばん安らぐ場所かもしれないと
なぜか
そのようにも感じるのです。


        *


>いつもわたしは邦題を見てから原題が気になる。
>信用できないからだ。

そうですね
そんな
(許せない)邦訳タイトルのナンバーを次回の記事にしてみます。
ですので、邦題は敢えて載せません(涙

追伸
秀逸な邦題も稀にあるようには思いますけれど^^

pianoとともに沈むこと

ありがとうございます。

> ですが
> ピアノの沈んだ
> 海底は音のない世界
> こんな世界こそ
> エイダにとって
> いちばん安らぐ場所かもしれないと
> なぜか
> そのようにも感じるのです。

そうなんです。
彼女も何度も、自分が海底に沈むpianoの上をロープに繋がったまま浮かんでいるところを夢に見ると語っていますね。
その状態に憧れを抱いているのだと思います。
それも正しかったのだ、と。
しかし、それでもあえて生きることを選んだのは、彼女にとっても驚きだった。
きっと彼女自身知らぬところで、生きて何かを成す必要があったのかと思います。

彼女だけのことばを取り戻すことも含め。
生き直すこと。
働きかけることに。
果敢無くも価値があると。
それが救いであったかどうかは分かりませんが。

そう感じました。

(この映画はそのあたりの意識層を濃厚に描いていますね)


記事拝読させて頂きます。

EDIT COMMENT

非公開コメント

”Bon voyage.”

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

SF PickUp
ブレード・ランナー ファイナルカット
ブレードランナー2049
メッセージ
インターステラー
第9地区
月に囚われた男 MOON
オブリビオン
コンタクト
オデッセイ
エイリアン
プロメテウス
エイリアン: コヴェナント
エクス・マキナ
クラウドアトラス
モンスターズ 地球外生命体
クロニクル
ガタカ GATTACA
チャッピー
パシフィック・リム
ザ・ミスト
オートマタ
スターシップ9
モーガン プロトタイプL-9
ロスト・エモーション
スローターハウス5
ザ・ドア 交差する世界
メランコリア
アルファヴィル
アンダー・ザ・スキン
不思議の国のアリス
イーオン・フラックス
サリュート7
アポロ13号
シルバー・グローブ/銀の惑星
イカリエ-XB1
アイアン・ジャイアント
アンドロメダ
地球の静止する日
地球が静止する日
宇宙戦争
トランス・ワールド
ロボット
ヴィデオドローム
イグジステンズ
マイノリティ・リポート
フローズン・タイム
マザーハウス 恐怖の使者
EVA
ベイマックス
ファースト・コンタクト
ファースト・マン
13F~サーティーン・フロア
あやつり糸の世界