寄生獣

わたしは以前(だいぶ以前である)、単行本全10巻ものの漫画で見た。
知人から無理やり借りたものであったが、大変面白かった印象はもっている。
もう20年経ったとも思えないのだが、何がどう面白かったかは、はっきり覚えてはいない。
深津絵里の演じたパラサイトのことはかなり脳裏に残っていた。
今回、全二篇で構成される映画の前編をTV録画で観た。
かなりの年月を経てようやく実写化にこぎつけたわけだが、原作漫画の人気と評価が衰えることがなかったらしい。
わたしの期待もかなり大きなものであった。
映画はいきなり最終場面かと思われるところから始まり、ミギーの回想で話が運ぶのかと思った。
いつの間にかミギーとの出会いからのタイムラインに着いていたが。
(こういうパラサイトがあるとき突然飛来するという設定はわたしたちはガラモンなどで充分慣れている)。
流れは分かるが、それでもダイジェスト版を見ているような感覚になった。
スピーディーな構成なのかも知れないが、映画というより”ウルトラQ”のようなTVシリーズを思わせた。
何というか間がない。
「ミギー」は魅力的なキャラクターである。
今目白押しのキャラクター群の中でも出色の出来だ。
(昨今何故こうもキャラクターが激増したのか?)
その如何にもというユーモアをもった精神性とともに身体造形の変化も面白い。
阿部サダヲの声がその個性に実にフィットしていた。しかもそれに留まらず、彼のモーションキャプターで収録したという。正確に言えば、モーションキャプチャースーツに頭にはカメラを装着して撮るパフォーマンスキャプチャーと呼ばれるVFXらしい。今回、VFXで阿部と新一役染谷の動きの融合が恐らく肝になっているはずだがそこは見事に自然に流れていた。
自分たちの存在理由を考察し人間の研究を進める深津絵里のパラサイト役も堂に入ったものであった。
余貴美子はやはり新一の母親役としての説得力が圧倒的であった。
主人公の新一は彼女役の橋本愛とともに「告白」で途轍もない役をこなしている。
ここでは精神性の変化やワイヤーアクションのエンターテイメントな部分まで幅の広い演技を見せる。
それぞれの役者の好演と高度なVFXで全体のテンションが保たれていたことが分かる。
パラサイトネットワークが構築され北村一輝演じるパラサイト政治家が市長の座を得ると、実際ボディースナッチャーのような恐怖と不安が押し寄せて来るだろう。
しかし人間側もそれを迎え撃つ非公開の特殊部隊SATをちゃんと用意する。
よくエイリアンものの映画など、極少数の者だけが限られた場所で過酷な戦いを強いられるドラマ設定が多いように思う。
テーマにもよるだろうが、やはり環境設定に違和感を感じることが少なくなかった。
この映画の舞台設定と展開には無理がない。
原作のもつ思想をしっかり射程に収めており、わたしの期待を裏切らない出来ではあった。
アクションシーンとCG、VFXは期待を上回るものがあった。
しかし期待を裏切る驚きはなかった。
次の完結編に期待したい。