地球が静止する日 (2008)

わたしもかつて混乱したので、ひとまず確認しておきます。
"The Day the Earth Stood Still"(1951)「地球の静止する日」と全く同名で、邦題が「地球が静止する日」(2008)助詞のみが異なる映画は1951年度版のリメイク映画。(20世紀フォックス)
”The Day the Earth Stopped”(2008)「地球が静止した日」過去形となった邦題のものは、「地球が静止する日」の便乗作品として位置づけられています。つまり内容が非常に似ており、また他のSF映画からも要素を取り込んで作られているそうで、20世紀フォックスから盗作であると警告を受けたものとか。(わたしは観る暇がないので観ませんが)
このような関係ですので、基本真面目に作られた"The Day the Earth Stood Still”の2作品だけ観ておけばよいかな、と思っております。
それにしても紛らわしい。
2作品を比べて検討する気などまるでありませんが、オリジナルとリメイクというには内容が違いすぎる気はします。
その点をことごとく挙げてゆくのは面倒な上、意味がないのでしませんが、クラトゥがやってきた目的が全く違うのは、どうしたものか?そこが違っては、別の映画ではないか、と思います。
似ているのは、高度な文明をもつ異星人がロボット一体連れてアメリカに舞い降りたところと、細かいところを見れば、名高い博士に対面し、黒板の数式を書き直し博士から信用を得るところくらいでしょうか。
しかしそこでゴールドベルグ変奏曲が流れます(*2008年度版のみ)。そうです、クラトゥが初めて地球人も捨てたもんじゃないと考えるきっかけとなったものです。
音楽です。バッハです。(ゴールドベルグのアリアから第一変奏まで流れていました)
それを聴くまでは、彼は地球を守るため地球人を一掃するつもりでした。
「美しい」と初めて彼から肯定的なことばが発せられます。
これは教訓的な映画です。
今後、もし地球人は滅ぼすしかない、という宇宙人が来たのなら、いきなり話し合いで決着など着くはずありませんから、まずは丁重に寛いでもらい、バッハを流すことです。
政府高官が下らない抗議などして(さらにお約束の失言を吐いたりして)即刻滅ぼされては困ります。
最高の自己紹介としてバッハでいきましょう。
地球人のこころです、といったかたちで。(演歌は止めましょう、日本に来ても。)
でも博士が「地球人はみなこれと同じだ」と言ったら「そうだろうか?」、とすぐに怪しまれていましたね。
そりゃそうです。みんながバッハであるはずないものね。すぐに気づきます。
しかし、彼のその曲をこよなく愛する生物なのですとか、すがればちょっとは考える余地を与えるかも。
ともかく、まずは人類の至高の作品を享受してもらうしか方法はないのではないか、と思いました。
候補作品としては「モナリザ」とかも。(ゾンネンシュターンとかは友好的関係を築いてから顔色見て観せましょう)
それからおもむろに会談の場を作りましょう。
前のクラトゥは地球人の核使用(特に宇宙への核持ち込み)を警告しに来たのであり、人類を守るために来たのですが、
新しいクラトゥときたらのっけから地球人を排除して他の生命を生かす目的で来たと言うのです。
前のクラトゥが平和主義者(アメリカ的)であるとすれば、今度のクラトゥは過激なエコロジストです。
結局、地球人が変われるかどうか、信用してもらえるには、エモーショナルな訴えしかないということでしょう。
やはり感情です。
女性科学者とその義理の息子との葛藤と和解を間近に見て、辛口クラトゥも人類の未来を信じてみることにしました。
それはどんな世界的リーダーの理屈より説得力をもった、ということでしょうか。
それにしても、出てくる子供が可愛げのないやつでしたね。
オリジナルの方の子供は、素朴で素直な普通の子供の設定でしたが。
まあ、クラトゥ自体、オリジナルは友好的で温かみがありましたが、リメイク・クラトゥは基本シビアで冷たい感じです。
一番面白かったのは、あのメタリックな何でも解体?してしまう群れなして飛ぶヒッチコック的な虫ですね。
ゴートがその虫に変わってゆくというショッキングな映像はCGの極みです。
今回のものはやはり後半のCG映像が効いています。
異星人の力の示し方の違いがここにはっきり、現れてきます。
地球のエネルギーを病院や飛行中の旅客機などを除き全て止めてみせるのと、どんどん虫を飛ばして片っ端から人も物も消してゆくのは、ある意味正反対です。
今回は地球人(アメリカ人)が大量に殺されていますし。
ロボット、ゴートについては甲乙つけがたいものでした。
クラトゥは両者ともに味があります。
わたしとしては、オリジナル作品の品格に一票ですね。
- 関連記事
-
- ヴィデオドローム
- トロン ~レガシィ
- 地球が静止する日 (2008)
- エターナル・サンシャイン
- 時計じかけのオレンジ