月に囚われた男 MOON

Moon
2009年
イギリス
ダンカン・ジョーンズ監督・原案
ネイサン・パーカー脚本
サム・ロックウェル 、、、サム・ベル
ロビン・チョーク、、、サム・ベル(クローン)
デヴィット・ボウイの息子ダンカン・ジョーンズの初監督作品。
ちなみに数あるボウイの名曲のなかで特にわたしのお気に入りは、”Lady Grinning Soul”
関係ないけど、ボウイと聴けば、血の騒ぐくらいのファンですからお許しを。
多くのミュージシャンが使いたがっていても断られていた、クラフトワークのレコーディングスタジオを彼ら以外ではじめて使う事の出来たミュージシャンがデビット・ボウイでした。
”Low”のアルバムですね、、、もうひとつの絵画・音楽ブログも再開したいものです、、、今思い出しました、、、。
またLow聴いてみたい。(こちらも同時に思い出しました)
この映画も、また観たくなる映画でしょう。
まさにお父さんの血を引いてますね。
良い仕事してます。
いえ、正直これほどの監督だとは、思いませんでした。
大体二世はちょっと、という先入観が有り、これまで観ませんでした。(イメージが壊れるのが嫌で)
観て驚きました。
ブレード・ランナーや第9地区、同等の感動を覚えましたから。
しかも、第9地区もそうですが、かなりの低予算映画だそうで、予算かければ良いというものではないことを証明していますね。良いことです。
全体の雰囲気は、どことなくレトロな印象があり、それが月面の作業基地の殺伐とした閉塞感を上手く漂わせることに成功しています。
登場人物はサム・ロックウェルほぼ独り、二役を演じ。あと良い意味で人間的なロボット。(基地内に据え付けられたロボットですが)
その他のキャストは彼の夢と幻覚?とヴィデオレターに参加のみ。
サム・ロックウェルの好演が光ります。
そう、第9地区の主役とも似た雰囲気があります。
ある意味、ノーマルで勤勉、人も良い。
そして、主人公のサム(彼もサム)は自分が何者であるかを知ってしまいます。
この切なさ、底なしの孤独、寄る辺なさ。絶望。
これはレプリカントたちが必死に追い求めた自分という存在の証。
「プロメテウス」の科学者エリザベスが自分の身を顧みずに探求し続けた創造主の意図。
科学いえ、人間の思想は原理を追い求めます。これはヒトの本源的欲求なのでしょうね。
本質的に死の不安に怯えつつ自分の存在意義を問い続けるのはヒトもレプリカントもクローンも変わりません。
またその覚束無いアイデンティティを支えるものが、記憶です。
われわれは何故、こんなに写真を撮りたがるのか。
写真。植えつけられた記憶であろうとも、それだけがわたしを世界に繋ぎとめます。
この記憶の拠り所が実は如何に切実なものであるかは、自然災害にあい、避難場所からわざわざアルバムを取りに戻って亡くなった男性のニュースでわたしは実感しました。
クローンはブレード・ランナーのレプリカント同様、短い命で交代して逝きます。
家電の交換年月にも似ており、文字通り消耗品。
この月面採掘企業(He3で世界を席巻しているのは)韓国企業です。
宇宙基地内にもハングル文字がありました。
それもあるなと思いました。驚く程性急にIT化を進めた国ですし。
月に手をつけてはなりません。
月が地球に及ぼす影響が小さくない、というより月はヒトにとっての観念でもあります。
プロットがしっかりしており、細部までストーリー、美術が作りこまれた記憶に残る傑作です。
この監督の力量を思い知りました。
月は地球上から見るのが、もっとも美しいと実感する映画でもありました。

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