第9地区

District 9
2009年
ニール・ブロムカンプ監督・脚本
テリー・タッチェル脚本
シャールト・コプリー、、、ヴィカス・ファン・デ・メルヴェ(主人公)
主人公はプロジューサーであり、この映画で初演技の披露だそうだ。
監督も初作品。
何でもそうだが、デビュー作を超えることは、大変である。(多くの人が超えられない)
しかもこれだけの傑作を作ってしまい、この後のことが人ごとながら心配だ。
舞台を南アフリカに置いているが、別にどこでも良い。
エイリアン?がエビに似てようがタコに似ていようが、どうでもよい。
ディテールの精細描写がしっかりなされていれば充分。
テーマは普遍的なものだから。
人は何のキッカケか、意識する間もなく変身する。
後で反省的思考で理由を見出したりするものだが、ほとんど意味ない。
当然、自分の生きてきた場所を追われ、逃走を強いられる。
途中で死ぬか、取り敢えず生存を維持する場所にたどり着いたりもする。
別にそこが本来あるべき場所ではないことは明白である。
思い返してみれば、これまで生きてきた場所だって、ヘドの出るようなトコだった。
だが、そこよりはマシかどうかなんて聞かないで欲しい。
ここ以外に何処に棲めというのか!
勿論、自分の姿はもはや自分であった痕跡すらない(なくなるだろう)。
その場所と見かけは一体となるのだ。
だが絶えず身体は疼く。音もなく悲鳴を上げる。
自分とは一体何だ?
そんなもの、問い自体意味がない。
自分なんてものは端からありはしないのだから。
すべては言葉に過ぎない。
しかし何処からともなく形のない生々しい欲求が純粋に湧きあがる。
生きたい。
どんなかたちであっても、生きるしかない。
生命にとって、それが本源なのだ。
そうしたいのではなく、そうする以外にない。
ただ生きるということ。
物語の最後で、妻が「待っている」と言う。
せめてもの救いか。

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