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野いちご

bergman.jpg


完成された映画は、わたしにはとても静謐に写る。
イングマール・ベルイマンの「野いちご」もそんな映画だ。
こんな静けさを感じたのはユイレ=ストローブの「階級関係」か、タルコフスキーの「ノスタルジア」、、、少ないわたしの映画体験からは、他に思い当たるものがない。
わたしの生まれる前にこんなにとてつもない映画が作られていたことに何故か驚く。
この映画を見ること自体が夢を見るように覚える。

映像の美しさは夢に似ている。
そこが何処であっても静謐で真っ白な廃墟である。
いきなり冒頭の恐ろしく張り詰めたキリコ空間での出来事。
「生きながら死んでいる」世界そのものの光景。
夢をここまで描ききる映像作家はそうはいまい。

幾つものシーンは、精緻なシニカルでコミカルなカフカの挿話そのものである。
現実が悪夢なのか悪夢が現実なのか。
わたしは主人公のように催眠に落とされる。
これは自己催眠なのか。
車の旅はとかく催眠に陥り易い。
そして催眠により催眠を覚まされる。

それは無意識に触れることか?
主人公を捉えて離さない記憶と感情。
その幾つもの容赦ない生々しい情景。
意識によって強固に構成されてきた悪夢である想い出。

記憶と感情はガラスの断片として漆黒の闇のなかで怪しげに煌きつつ舞っていたに違いない。
それをずっと同様に悔恨によって拾い集め制作し続けていたものだ。
禍々しい光景として。
寝ても覚めても。
自己催眠の幻想の中に。
己を苛む凝り固まった思想の中に。
しかし年を経てその意識の頑固さに罅が入り始める。

何処からともなく彼を祝福する3人の若者が現れる。
彼の一時の車の旅に加わる。
それは彼の疲労が呼んだ者たちか。
きっと意識の隙間から彼らは登場したのだ。

いつの間にか彼を嫌い非難していた義理の娘とも打ち解けてゆく。
和やかな風が世界の隅々まで行き届く。
その夜、若者の内のひとりの娘が窓の下から主人公に向けて悪戯っぽく告げる。
「おじさまが好きよ」と。
この一言で彼を閉じ込めていたトラウマが氷解し、その心は闇の内に放たれ暖かさに包まれる。

おそらく彼はこの先安らかな眠りに、睡眠薬は必要としないだろう。
幼い頃の夢が書き換えられてゆく。
新しい現実に満たされる予感。
それが本当の夢だったのだ。


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COMMENT

おかえりなさい☆

GOMAさま
お待ちしていました。
再起動第一作もまた
秀逸です。

この映画
深夜のBSで観た折りには
サイレンス的transitionが
独特の美を放っていて・・・

尚、
孤独が罪?
ならば
その救いは?
なんて
真剣に思ってもみた記憶があるのですが

GOMAさまの
記事に接し
もう一度しっかり鑑賞したい
そんな想いを強くもちました。

この世界広しと言えども
GOMAさまにしか
書けないこの映画評論。
感服です・・・。



観ます!

ブログ再起動、
心から嬉しく思います!!

どうぞご無理なさらず、
ご自愛くださいませ――

「野いちご」の評論には感動しました。
相も変わらず、美しく透明で
研ぎ澄まされた刃物の如く、
白く輝きを放つ文章・・・

恥ずかしながらワタクシ、
本作品を観ていないのですが、
朝になったらすぐにでも
T●UTAYAに行こうという
衝動に駆られました(笑)
ご紹介、ありがとうございます。

追記
先日GOMA様からいただいた
心に沁みるお言葉、
どうしてもご紹介したく
拙ブログに引用させていただきました――

ただいま、戻りました

孤独が罪?
救いは、、、?おそらく何かのきっかけで「孤独」という言葉ー意識が手放され
ふと我に帰った時にすでに救われているようなものではないでしょうか?
わたしは、そんなふうに想像します。

ついさっき、窓の下で女の子が何か言っていたな?
よく思い出せないが、、、
なんていうとき、これまで敵対していた世界がとても親和性溢れるものになっていて。

今夜は何か良い夢が見れそうだと、安らかな気持ちで微睡んでゆく、、、。

わたしにとって、SAKI様はいつも窓の向こうから声をかけて頂いていたように
想います。





ありがとうございます

療養中でしかも痺れて怠く何も手がつかないとなると
いつしか自意識の鏡の部屋に閉じ篭ることになってゆきます。
無感覚でいて重苦しい孤独に沈み込み。
分かっていて何もできず、あっという間に一日が終わってゆく毎日でした。

でも、どこかで陽の輝く青空を眺めたい気持ちは芽生えます。
空を思わず切断してゆく鳥やジェット機の線。
変幻する彩雲。
何より心地よい風を、、、
楽しみたい。


ブログがおそらくわたしにとり、最良の窓辺かと思いました。

やはりそうでした。
おかげさまで、心が和らぎます。

まーさん様、また宜しくお願いします。

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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
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