返校 言葉が消えた日

Detention
台湾
2021
ジョン・スー 監督・脚本
ワン・ジン、、、ファン・レイシン
ツォン・ジンファ、、、ウェイ・ジョンティン
フー・モンボー、、、チャン・ミンホイ
チョイ・シーワン、、、イン・ツイハン
リー・グァンイー、、、ホアン・ウェンション
パン・チンユー、、、ヨウ・ションジエ
チュウ・ホンジャン、、、バイ教官
1960年代台湾が舞台。
言論統制が敷かれた「白色テロ」時代真っただ中。
40年に渡る戒厳令の敷かれた恐怖政治の時代である。
当然、描けば恐怖空間となろう。そう、とてもダークなトーンに染まっていた。
そのなかでの切ない恋愛と連帯。

翠華中学では「読書会」が秘密裏に一部の生徒と教師により行われていた。
本が禁止され隠れて朗読、写本する人々を描く映画はかなりあるが、、、。
見つかったら(密告されたら)当局に連行され処刑となる。
しかしここでは放課後部活みたいに和気あいあいに開かれているのには若干違和感を持つ。
確か資料室を使っていたが、ちょっと無防備な感じは否めない。
こちらがハラハラしてしまうではないか。

こうした行為は途中でバレるとは思うが~恐らく鍵を管理する用務員あたりとか~ここではチャン・ミンホイ先生に恋心を抱いている女子生徒のファン・レイシンが彼の恋人であるツイ・インハン先生に嫉妬し、禁書を読んでいることをバイ教官に密告したことから発覚。
秘密の「読書会」メンバーは拷問を受け、自白して生き残ったウェイ・ジョンティン以外、全員処刑されてしまう。
このことに耐えられず彼女も死ぬ。
ヒロイン、ファン・レイシンの視座から描かれてゆくが、終盤彼女は既に亡くなっている事に気付く。
彼女の心象風景である。各シーンの時制や(象徴的な)歪みも納得できる。
彼女によって生かされたウェイ・ジョンティンの語りに最後は引き継がれる。
刑に処せられる為に牢獄を出て行くチャン・ミンホイ先生から最後に彼に託された約束を果たすところでは思わず胸に込上げて来るものが抑えられない。
チャン先生の描いた水仙の絵の額裏に隠されていた一冊の本とそこに挟まれた手紙である。
それを亡きファン・レイシン(の霊)に手渡す。
ここで初めて彼女は閉じ込められていた学校~悪夢から解放され昇天出来るのだ、、、。

何でもこの暗く陰惨な映画の原作的なものは、ホラーゲームであるというからビックリ。
この史実ネタをホラーゲームにという発想も何とも言えないが、それに興じるゲーマーはどういう意識でやっていたのか。
かなりヒットしたゲームらしい。それを基に作った本作もかなりの大ヒットだったみたいだが。
ヒロインのワン・ジンは若くして小説家としても有名らしい(若過ぎるが)。

確かに(彼女の悪夢の)幻視的なシーンは少なからずあり、当局の象徴的フィギュアとも謂えるクリーチャーが読書会の生徒や鍵をタバコ欲しさに貸した用務員を殺すところなどオカルティックであり、クリーチャー自体がホラー仕立てである(造形的に今一つの出来に思えたが)。全体に象徴的シーン~絵は多い。ホラー的ではある。
どうしても学校を抜け出せず無限に回帰する悪夢~自責の念と圧政の恐怖に苦しみ悶えるストーリーは陰惨だ。
だがこれは今現在も続く現実のホラーに相違ない。

また観たいとは思わないが、一度は観ておきたいとても切ない作品。
台湾って今も大変であることが、ウクライナやガザの戦争で霞んでしまっているが、大丈夫なのか。
AmazonPrimeにて
最近、EYELESS IN GAZAが聴きたくなって時折”Back from the rains”など聴いている。そう言えばオルダス・ハクスレーの「ガザに盲いて」はまだ絶版のママなのか?新訳で是非出して欲しい。古書で見たことがあるが読み難い。
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