決算!忠臣蔵

2019
中村義洋 監督・脚本
山本博文 『「忠臣蔵」の決算書』原作
堤真一、、、大石内蔵助
岡村隆史、、、矢頭長助
濱田岳、、、大高源五
横山裕、、、不破数右衛門
荒川良々、、、堀部安兵衛
妻夫木聡、、、菅谷半之丞
大地康雄、、、奥野将監
西村まさ彦、、、吉田忠左衛門
木村祐一、、、原惣右衛門
西川きよし、、、大野九郎兵衛
石原さとみ、、、瑤泉院
竹内結子、、、りく
阿部サダヲ、、、浅野内匠頭
桂文珍、、、祐海和尚
村上ショージ、、、前田屋茂兵衛
上島竜兵、、、早川惣介
板尾創路、、、戸田権左衛門
滝藤賢一、、、戸田采女正
笹野高史、、、落合与左衛門
鈴木福、、、大石松之丞
財政面から赤穂浪士の討ち入りまでの顛末を描いたコメディー。
大石内蔵助が遺した会計帳簿『預置候金銀請払帳』を基に作ったものだと。
とすると大石は実際は、この映画のようないい加減な男でなく几帳面な性格だったのでは、、、女好きで金使いも荒かったのかしら。
いずれにせよあの人数抱えて、潜伏期間が長くなればなるほど財政は逼迫するわね。

企業が倒産でもすれば皆、こんな風に大変なのかしら。それまでにもリストラしたり残務整理したり、あわよくば再建のために奔走したり、、、。ここでは親戚筋とか出て来てメンドクサイ。
ともかく、仇討ち~討ち入りには大変な予算がかかる。
藩が「番方」ー闘い担当と「役方」ー経理担当に分かれており、互いの折り合いが中々つかないで四苦八苦していたことがよく分かる物語になっていて勉強になった(笑。
この時期、闘い専門の部門があっても戦も無いのだし、何やっていたのだろう。
丁度5代将軍、綱吉の時だ。生類憐みの令が出ていて皆が鬱積していた頃、やはり赤穂浪士は注目の的だったようだ。
赤穂藩が極めて良質な塩を生産している謂わば、優良企業であったため、幕府にとり潰す口実としては願ってもない機会だったか。
浅野内匠頭とかいいカモだった?普通喧嘩両成敗のはずがここまで一方的と言うのも、庶民的には物語を期待するはず。

時代の空気は大きい。
赤穂浪人たち、大石内蔵助はずっと仇討ちするかお家再建にかけるか、色々と迷っていたが、世間が揃って仇討ち~討ち入り物語を過剰に期待しているものだから、そちらに向かざるをえない流れに乗せられてゆく。
閉塞感を突き破るヒーロー物語を欲する、こうした世間の作る潮流は強い。
瑤泉院(ようぜんいん)浅野長矩の正室が大石内蔵助を酷く嫌っていたのは笑えた。
それほどいい加減で筆頭家老として皆のリーダーとして通用していたのは、何処がどのように優れていたのか今一つ掴めなかったが、そこは物語上、大事な部分なのでは、、、。
物足りないと感じたところは、その辺か。
真面目な財務主任の矢頭長助とのやり取りも面白さの一つと言うか見どころだろう。

いずれにせよ大石は「決済」して逝ったことが分かる。
一貫して、浅野内匠頭が松の廊下でやらかしてしまい、即日切腹からお家断絶~家臣たちの路頭に迷う苦悩と長引く潜伏の日々を財政の観点で描き切るアイデアは、秀逸であった。
数字が絶えず画面に現れこちらもハラハラしながら惹き込まれたものだ。
討ち入りの場面は無いという画期的な「忠臣蔵」であったため、実質吉良上野介は出ていないも同然。
この思い切った切断(取捨選択)が良い。
映画の中には色々な要素を放り込み過ぎて焦点のボケるものは少なくないが、そこがスッキリしていて観易い。
そして重く深刻になり易いこの物語をここまで面白く笑えたりするものにしたのは、なかなかのもの。
大石内蔵助が堤真一であったのは、正解。他に考えられないくらいピッタリであった(笑。

もうちょっとあの芸達者の阿部サダヲの浅野内匠頭の切腹前シーンがあっても良いような気はした。
清廉潔白ぶりとか描き始めるとこの映画のテーマがブレたりして不味いが。
上島竜兵さん渋い役柄しっかり熟していたが、もう観れないのは淋しい限り。
それを謂うなら竹内結子もだ。
豪華キャストのよく出来たコメディ映画であった。
(岡村隆史と上島竜兵は大真面目な渋い役であったが)。
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