クーリエ:最高機密の運び屋

The Courier
2021
イギリス、アメリカ
ドミニク・クック 監督
トム・オコナー 脚本
アベル・コジェニオウスキ 音楽
ベネディクト・カンバーバッチ、、、グレヴィル・ウィン(英国の技師・ビジネスマン)
メラーブ・ニニッゼ、、、オレグ・ペンコフスキー(アレックス、ロシア連邦軍参謀本部情報総局大佐)
レイチェル・ブロズナハン、、、エミリー・ドノヴァン (CIA職員)
ジェシー・バックリー、、、シーラ・ウィン (グレヴィルの妻)
アンガス・ライト、、、ディッキー・フランクス (MI6職員)
ジェリコ・イヴァネク、、、ジョン・マコーン (CIA長官)
キリル・ピロゴフ、、、オレグ・グリバノフ (KGB職員)
アントン・レッサー、、、バートランド
マリア・ミロノバ、、、ヴェラ (オレグの妻)
ウラジミール・Chuprikov、、、ニキータ・フルシチョフ (ソ連共産党中央委員会第一書記)
キーア・ヒルズ、、、アンドリュー・ウィン (グレヴィルの息子)
「核爆弾が落ちる4分前警報」というのには笑える。
これを未然に防ぐ機会があったのに、と後悔するつもりかと、家族の悲劇を取り上げ脅されてはどうにもならない。
(確かに核シェルターとは謂ってもホントに実用に耐えるレベルのものなど学校や家庭にはない)。
しかしよりによって何でわたしが、、である。政府関係者は顔が割れていて動きようがないのだと、、、。
最後に「君しかいない」で、決まり(苦。このセールスマン、ソ連に飛び、商売を始めることに。

当時頻繁に東欧に出張していたことからMI6に雇われてしまった普通のセールスマン、グレヴィル・ウィン。
結局、彼(とアレックス~ペンコフスキー)のお陰で核戦争が回避されたのだ。キューバ危機である。
今であれば、こんな酷い苦労せず人工衛星(超高解像度カメラ搭載)をフルに使ってデータ収集が出来る。
デジタルデータの送信処理さえ上手くやれば問題ない。
それにしてもとてもわたしでは、こんなストレスには耐えられまい。
スパイとは飛んでもなく大変な仕事である。誰もがKGBの可能性がある。店員、ホテル従業員、運転手、、、。
監視、盗聴、タレコミ、読唇術にも絶えず気を付けなければならない。
グレヴィル・ウィンもストレスから吐いていた。
家に帰っても家族に相談したり愚痴るような内容ではない。機密事項である。かえって奥さんに疑われたりして更にストレスが高まる。
どこまでも続く孤独と緊張。とても無理。

しかしペンコフスキーの場合、自国で高い地位を築いていながら、人類全体の平和の視点から掟を逸脱したこの行為はもっと勇気を必要としたはず。
大変な人である。「フルシチョフのような衝動的な人間に核のスウィッチを任せたら飛んでもないことになる」。そうした認識から西側に5000もの有益なデータを流し続けた。
彼がグレヴィル・ウィンに冗談交じりで言った「将来モンタナに行ってカウボーイになりたい」は、この映画の終わりに思い出すと、ホントに悲しい。
一般人であったグレヴィルはアレックスと関り重大な情報に触れるうちに、この押し付けられた仕事に使命感を持ってゆく。
軍事情報、核配備など、フルシチョフVSJFKの意地の張り合いとも取れる熾烈な均衡は辛うじて保たれていたが、アメリカのトルコに忍ばせた核配備に対しソ連はキューバにそれを置いた(これをばらしたのがアレックスだ)。ここで一触即発の事態になる。
この時期に物心のついていた人々は、毎日新聞~ニュースでいつ核戦争が始まるかリアルな恐怖を味わっていたそうな。
わたしは全く知らない。後に本で読んだのみ。

ウィンは、欲深き資本主義の商人というイメージでやって来たが、機密軍事情報が外に流れていることを察知したKGBが動き始める。
内部の漏洩者にターゲットを絞り、ついにペンコフスキーがターゲットにされる。
一度、帰国して上から君はもう外すと言われ自由の身になった彼であったが、アレックス(ペンコフスキー)の亡命が進んでいないため最後のモスクワ出張だと妻に告げ戻ってゆく。しかし時すでに遅し。アレックスは逮捕され、のこのこ亡命させに戻ったウィンも当局に捕らえられてしまう。
ここからは、文字通り地獄である。収容所の過酷さは筆舌に尽くしがたい。
何年にも渡り厳しい尋問に耐えて過ごすが、ある日、変わり果てたアレックスにも面会することが出来る。
彼はウィンに何も果たせなかったという趣旨の事を述べ、家族の為に君に渡したデータの内容も喋ったことを謝罪する。
しかしウィンは勿論許すとも、君のお陰で世界が核戦争を免れ、見事君は目的を成し遂げたではないか、と讃える。
この機会があって本当に良かった。ここでの邂逅が無ければ無念過ぎよう。
ロシアバレエを2人で鑑賞して泪する場面も素敵であったが、、、あれが実質最後の濃密な日常であったか。

ペンコフスキーは激しい拷問の末、銃殺されたという。彼は祖国を裏切るどころか世界を核戦争から救った偉人である。
グレヴィル・ウィンはソ連スパイと引き換えに釈放されたが、戻って来れただけでもよかった。直ぐにセールスマンとして働いたそうだ。
その後、東欧にも仕事で行ったかどうか。
これ程の働きと苦渋を舐めた男にどれ程の敬意が示されたのか。

些か疑問である。
グレヴィル・ウィンとアレックス~ペンコフスキーの名はしっかり歴史に刻まらなければ。
余りに重かった。
キャストは皆申し分なかった。音楽も格調高くマッチしていた。
ベネディクト・カンバーバッチは「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」で大変強い印象が残った欲者だ。
ここで更に印象を深めた。
明日はちょっと、楽をしたい、、、(笑。
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