ミセス・ハリス、パリへ行く

MRS. HARRIS GOES TO PARIS
2022
イギリス
アンソニー・ファビアン 監督・脚本
ポール・ギャリコ 原作
キャロル・カートライト、キース・トンプソン、オリヴィア・ヘトリード 脚本
ラエル・ジョーンズ 音楽
レスリー・マンヴィル、、、ミセス・ハリス(軍曹である夫を失った未亡人、家政婦)
イザベル・ユペール、、、マダム・コルベール(ディオールの敏腕マネージャー)
ランベール・ウィルソン、、、シャサーニュ侯爵
アルバ・バチスタ、、、ナターシャ(ディオールのモデル)
リュカ・ブラヴォー、、、アンドレ・フォーベル(ディオールの会計係、ナターシャの恋人)
エレン・トーマス、、、ヴァイ・バターフィールド(ハリスの親友)
ローズ・ウイリアムズ、、、パメラ・ペンローズ(ハリスを頼る女優の卵)
ジェイソン・アイザックス、、、アーチ―(ハリスを見守るご近所さん)
ポール・ギャリコ原作とは。そうなんだ。と思った(笑。何がそうなのか、はともかく。
心地よい映画であった。美しいドレスは充分、目の保養になったし。
ミセス・ハリスが働く屋敷で目にした500ポンドのクリスチャン・ディオールのドレスに一目惚れする場面から惹き付けられる。
導入からしてメゾンのファッションショーで披露されるドレスに身が入る。
1950年代のパリが素敵。

ナターシャはディオールの顔でもあるモデルをこのまま続けるか、哲学の勉強をもっと深めるか迷っている女性であるが、その役を演じたアルバ・バチスタも女優をこのまま続けるか哲学に専念するか迷っていたところだったと言う。
役と自分が一緒なので息を吹き込み易かったらしい(笑。ポルトガル語、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語に堪能だと言う。
(優秀な女優さんてかなりいるのね)。
まあそれにしてもこういう美しい人がDiorを着るとこうなるのね、というのを堪能できた。

ミセス・ハリスを演じたレスリー・マンヴィルはイギリスを代表する大女優という事だが、映画に疎いわたしは、知らなかった。
大変細やかな表情の変化で気持ちや意思を雄弁に伝える事の出来るチャーミングな女優さんである。
そして何と言ってもイザベル・ユペールの存在感の圧倒的な事。
男性陣もなかなかのものだった。特にシャサーニュ侯爵役ランベール・ウィルソンのいぶし銀の演技は冴える。
他にもリュカ・ブラヴォーの真摯で献身的な姿勢とジェイソン・アイザックスの渋さもしっかり物語を支えていた。

ミセス・ハリスの天真爛漫な生き方が、関係する人々を全て巻き込み、彼らを解放して行くところが爽やかで清々しい。
しかしイギリスから突然やって来てDiorに紛れ込んだ家政婦がスタッフのストライキや改革を組織するのは、ファンタジー~荒唐無稽すぎるところではあるが、、、。
どうしても一つの事で成功を収めるとその殻を破って次のステージに行く~自分の更に欲する場所に進展することが難しくなる。
自分で自分を堅苦しく縛っている場合もある。
ここでは特にマダム・コルベールか。Diorというメゾンの伝統と格式にディオール自身よりも拘っていた。

自分の改革案をディオールに伝えられずにいたアンドレもミセス・ハリスに乗せられ結局ディオールを動かしメゾンの経営状態を改善することになる。ついでに彼女のお節介で、高嶺の花であるナターシャを彼女にすることが出来る(こりゃミセス・ハリス様様だわ)。
ナターシャも本当に自分のやりたい事を選択して哲学に進む。サルトルの話ばかりしていた彼女だ。ミセス・ハリスもそれを知っていて後押しする。肝っ玉母さんみたいなヒトだ。

しかし、必死で貯めた金を叩いて買った(作った)一点ものも超豪華ドレスをパメラに頼まれ貸してしまったお人好し振りは、最大の失敗か。
その反省的思考はシャサーニュ侯爵や家政婦として勤めていた主人に対しても示される。相手に対する敬意は肝心だ。
まさか、わざとドレスを焼いて、プロデューサーの気を引こうとするなんて、、、飛んでもない女だ。
恩を仇で返すの見本みたいなもの。
しかし色々とお世話になったDiorメゾンのスタッフたちが、また新たに高価なドレスを彼女に送ってくれる。
シャサーニュ侯爵も薔薇の花束を。
それを着て軍人何とかパーティーに毅然とした佇まいで現れ会場の注目の的となる。
アーチ―と楽しく踊るミセス・ハリス。
ファンタジーが現実となったような噺だが何だか泣けてくる場面が幾つもあった。
何と言うか所々で刺さるのだ。
ミセス・ハリスの悪戯っぽいチャーミングな笑顔と美しい絵が感性に訴える。

キャスト皆が振る舞いも含め大変綺麗であった。
音楽もフィットしていた。
物語自体は奇想天外であってもとても心地よいファンタジーに昇華されており、後味も良い。
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