黒い司法 0%からの奇跡

JUST MERCY
2020
アメリカ
デスティン・ダニエル・クレットン 監督・脚本
ブライアン・スティーブンソン 「黒い司法 死刑大国アメリカの冤罪」原作
アンドリュー・ランハム 脚本
ジョエル・P・ウェスト 音楽
マイケル・B・ジョーダン、、、ブライアン・スティーブンソン(弁護士)
ジェイミー・フォックス、、、ウォルター・マクミリアン(冤罪死刑囚)
ブリー・ラーソン、、、エバ・アンスリー(人権活動家)
レイフ・スポール、、、トミー・チャップマン
ロブ・モーガン、、、ハーバート・リチャードソン
ティム・ブレイク・ネルソン、、、ラルフ・マイヤーズ
「アラバマ物語」の街で1980年代の状況がこれだとは、、、絶句。
18歳白人女性の殺害事件で冤罪にされた黒人男性の無実を勝ち取るまでの実話である。
オクスフォードを卒業したてのブライアン・スティーブンソン弁護士と人権活動家のエバ・アンスリーの差別意識との過酷な格闘が描かれてゆく。

差別意識の根深さが凄まじい。
黒人は皆、推定有罪ではないか。
全く気が抜けない。
何処でどういう冤罪を着せられるか分からないではないか。
公民権運動がどれだけの実効性があったのかと思ってしまう、、、。
マイケル・B・ジョーダンとジェイミー・フォックスの迫真のやり取りは緊迫感で圧巻であったが、ティム・ブレイク・ネルソンの演技が絶妙で光っていた。彼の虚偽証言ひとつでウォルターが死刑判決となったが、そのマイヤーズも検察側に弱みを付け込まれそうせざるを得ないところに追い込まれた結果であった。しかし良心の呵責を解くようなことばで彼を説得し気持ちを解放させるブライアンの人間力が素晴らしい。マイヤーズの意識の覚醒と怪演がとても見ものであった。
まあ、キャストは皆文句なく凄い。

ブリー・ラーソン演じる白人人権活動家がいることは救いであるが、これ程の差別の根深さには眩暈を覚える。
差別に対し、わたしも日常のディテールに置いて気になるところは、幾らでもある。
地方検事の「「アラバマ物語」の博物館」にでも行ってみたまえなどとブライアン・スティーブンソンに騙る皮肉以外の何ものでもないことば。彼は供述も証拠も無視してウォルター・マクミリアンを死刑囚にした男だ。こうしたブラックジョークみたいな現実は至る所にある(この彼も最後にはブライアンの説得によりウォルターの無実を認めることになる)。
ブライアン・スティーブンソンは貧困の反対は正義だと論じる。
確かにそうだ。ターゲットにされるのは黒人だけでなく白人の貧困層も含まれる。
検事側が司法取引で虚偽の証言を関係ない男にさせたり誘導尋問などで、全く証拠も動機も何もない黒人を犯人に仕立て上げている。そしてまともな裁判なしに死刑判決である。これ自体言語道断であるが、それが白人たちにとり共通感覚であり安心できる結果なのだ。決まって駒として貧困層が利用され排除される構造~正義が成立している。
司法制度そのものの不備も勿論だが、これでは余りに情けない。

今現在も黒人が警官に理不尽に殺される事件が勃発してそれに対するデモが行われている。
状況は進展していないのか。
ただ、この映画で印象的なシーンに、マイヤーズが自分の身の安全のため頑なに偽証を認めなかったが、ブライアンのウォルターも同じ人間であることを感じさせ認識させることで、キッパリ自分を守ることを止め偽証をはっきり認めるところがある。
「彼を早く子供のところに返してやってくれ」と最後に叫ぶが、これが事実であるならば、やはりしっかりお互いの顔を見ることである。
身体的な対峙から始まっている。ブライアンはエバの指摘通り、相手を記号ではなく純粋に顔を見て関わって行く。
ここでウォルターは身体は未だに檻に入れられていても精神はハッキリと解放されたと述べる。

この世の閉塞感が自閉的な姿勢~相手を記号化して処理する意識が生んでいる面は大きい。
AmazonPrimeにて

- 関連記事
-
- ピッチ・パーフェクト
- グレイテスト・サマー
- 黒い司法 0%からの奇跡
- テーラー 人生の仕立て屋
- リトル・ガール