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終わりで始まりの4日間 ~ Garden State

natalie portman
この話が、というよりわたしが急に入り込めたのは、大雨の中、谷底の船にたどり着いてからだ。
そこから、とてもヴィヴィッドな流れに変わった。
それまで前半において、母の死で帰郷した主人公ラージマンの旧友とのちぐはぐなやりとりが淡々と続いており、どこかシニカルでギャグもストレートというより捻ってあり、感情が磨滅したような主人公は終始馴染めない。何処に行っても居心地が悪く、困惑して溶け込めないが何とか愛想笑いですり抜けている日本人のような表情を浮かべている。
特に居た堪れないのは自分の家らしい。
父親とも確執をもっていることがすぐに見て取れる。
9年ぶりに不本意にも帰ってきた、というところだ。
その割に友達が多いのは、彼がとりあえず映画俳優をやっているからか。
子供のころから精神安定剤の類をずっと服用し続けてきて、その病院でひょんなことからサム(ポートマン)という天真爛漫を装った不安をおしゃべりで隠しているような女性に出会う。

船に暮らし発掘現場を管理している魅力的な夫婦を訪ねてから、2人の主人公の波動が広がる。
何というか、ある場所から急に進展速度が変わることがある。
そんな感じだ。
やはり場所だ。
大雨というところがまたよい。
禊、再生、覚醒、、、。
一日であるが、親友の導きで恋人とともに思いもよらぬ旅が出来たと言えよう。

この映画の原題”Garden State”はニュージャージー州の愛称であり、主演・監督を務めるザック・ブラフがニュージャージー出身ということで、その土地への愛着と土地柄・そこならではの風習・ジョークなどもそれとなく感じさせる。
そして何よりフィクションを交えても自分(ブラフ)のことをかなりの質量で描きこんでいることが伝わってくる。
過去の記憶を蘇らせながらの新たな編集。
これは、きっと魅力的な作業だ。
勿論、重大な心の問題を生むこととなった不慮の事故への向き合いなど困難な事柄も俎板に乗せなければならない。

実際80パーセントは実話だと彼も言っていた。
生まれて生活した土地の愛称で映画を作ろうという意思は、自分の身体性を語るという事を予想させる。
単なる体験談とかいうレヴェルでなく、場所付きで彼の(彼女も)身体性の変化が独特の雰囲気で描かれてゆく。
最近ここによく登場するナタリー・ポートマンが脚本に惚れて自ら出演を決めたというだけあって、良い出来の映画だと思った。
ストーリーは小細工(ギャグ)も散りばめられつつ破綻なく作りこまれており、映像には光の加減などかなり含め緻密に撮られていることも分かる。
出てくる人間はどれも平凡でスーパーマンはいない。
実は珍しい類の映画である。
わたしが今一つ映画に入り込めない理由に、スーパーマンの存在がある。
そこで醒めてしまう。
ここには全く一人として超人はおらず、むしろ自らの弱さと懸命に向き合おうとする者たちだけがいる。
そこがよいし、共感できる。
等身大の表現を監督が意識して作っていることが分かるものだ。

終盤にかけかなりシリアスな展開となり、ラージマンが実生活で彼女サムとの語らいの中で思いもかけず涙を流す。
母に対する封印していた思いが解かれてゆく。
その過程で「愛」を改めて認識する。
その力をくれたのは他ならぬサム(ポートマン)であろう。
父との和解を決意する。
最初のころの自閉し籠って仮面顔の彼はそこにはない。あの船から変わったのだ。
薬を辞め、実生活において得た彼女との関わりの中で生きた感情を取り戻してゆく。
もともと恋愛とは、お互いに心に秘めていたシコリや病を解きほぐす装置だった。

ならば、4日で何とかなる。
長く無感動に凍てついていた心も。
ここで故郷ということが殊の外、重要であった。
 ~ Garden State



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