HARAJUKU

HARAJUKU
2018
ノルウェー
エイリーク・スヴェンソン 監督
イネス・ヘイサーター・アッセルソン
ニコライ・クレーヴェ・ブロック
シャスティ・オッデン・シェルダール
イングリッド・オラワ
ヒロインやその友人の髪のカラーもそうだが、特に夜景のネオンが色鮮やかで綺麗であった。
その光景は彼女の憧れ、想像する”HARAJUKU”であったようだが、、、。
ノルウェーでは、日本のポップカルチャーに関心の深い若者は少なくないようだ。
確かにジャパニーズアニメは世界中何処に行ってももてはやされていると謂って良い。
ここでもヒロインは、アニメのフィギュアやカードを大切に持っており、辛い現実にあって取り敢えずの逃避にそのアニメの聖地である「彼女のHARAJUKU」へとワープするのだ~アニメーションの形で。そこが実に綺麗で物悲しい。

地上に住んでいる限り、何処に在っても辛い。特に思春期はそうかも知れない。
ここでは、母子家庭であるにも関わらず(そうであるから尚更か)母が突然自殺してしまう。
クリスマスの日にだ。そして15年前?に自分を捨てて出て行った父に連絡の電話を入れる(留守電)。
確かに精神を病んでいる雰囲気ではあったが、母と二人でクリスマスを過ごすのは辛いものがあったか、友達とつるんで楽しく過ごしている時に、児童相談所の職員が彼女のもとに連絡に来る。
ノルウェーは、自殺者はアメリカや日本ほどではないが多い方である。
北欧のいくら福祉のしっかりしている国であろうが、個人の問題は常にそれを横溢~超越する。いうまでもないが。
実存とはそういうもの。
母子家庭で難しい母との関係、父に寄せる複雑な思い、もしかして不登校か、そんな状況も感じた。
思春期特有の閉塞感、鬱積する心情、超脱への欲求はありありと窺えるところ。

15歳の彼女にとり此処でない何処かというと、共感し心惹かれるアニメの世界、その聖地である日本~HARAJUKUに想いが繋がるのは自然かも知れなかった。確かに児童相談所の職員に強制的に施設に幽閉されることから逃げたいのは分かる。
しかしHARAJUKUが”paradise”の象徴というのも余りに淋しい。
何でもそうだが遠目に映る景色は美しいもの。近くに行けば全て幻滅するしかない現実が待つ。
彼女の脳裏の日本の断片の映像が、殊更煌びやかで綺麗である分、とても悲しい。
15歳の少女がこれ程追い詰められていることに胸が苦しくなる。
アニメーション~彼女の心象では、死を仄めかすもの、あからさまな自殺願望も見受けられた。
コーヒーショップ?の店員を騙し、東京行きの航空券をネット予約させたが、実際には漸く逢えた煮え切らない父の精一杯の懺悔のことばに旅立ちを押し留められる。
確かに振り切って取り敢えず東京に着いたところで、15歳である。
何が出来ると言うものではない。
観光するにも滞在費はある程度なければ、これまた辛い目に遭う。
それで父に金をねだったのだろうが、あいにく彼にも持ち合わせがなかった。しかも家族全員で過ごすクリスマスの日である。
父はプレゼントを買い込み娘二人と妻の両親と夜を過ごす日であった。これがまた彼女の悲哀を増す。
こういう子は実際にいるのはよく分かる。
だが、生物学的な親が、家にいたとしても、親としての機能を全く果たさないばかりでなく、子どもを疎外し虐待し搾取する親もはっきりといるのだ。
何処に行こうと不条理で理不尽な重力の支配する磁場から逃れられないことを知る時が来る。

U-Nextにて
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