イレイザー・ヘッド ~ デヴィッド・リンチのコメディ

Eraserhead
1977年
アメリカ
デヴィッド・リンチ監督・脚本・製作・編集・美術・特殊効果
ジョン・ナンス 、、、ヘンリー・スペンサー
シャーロット・スチュワート 、、、メアリー・エックス
アレン・ジョセフ 、、、ミスター・エックス
ジーン・ベイツ 、、、ミセス・エックス
ローレル・ニア 、、、ラジエーターの中の少女
ジュディス・アンナ・ロバーツ 、、、アパートに住む女
ジェニファー・チェンバース・リンチ 、、、少女
ジャック・フィスク 、、、惑星の男/窓際の男
、、、「イレイザー・ヘッド」である。消しゴム付き鉛筆の消しゴム部分を指す。
尋常でない映画であることは、すぐに察知する。
また、、、
よく、これほどの主役俳優を見つけたものだ。ある意味、エレファント・マンをしのぐインパクトだ。
全体の雰囲気はチャプリン時代の無声コミカル映画のタッチ。
これもコメディのひとつか。
デヴィッド・リンチは妙で不可解な存在にしか創造の起点をもち得ないかのようだ。
資質的な面も小さくないと考えられるが。
何というか死をテーマにしたとしても、心情に訴えるタイプの映画が、日常論理の内で様々に苦悩し、子供と犬等の動物の健気さ健全な可愛らしさを演出に使い話を進めることなど少なくないが、彼は一貫して根本に存在の不可解さ妙な感じグロテスクさを見据えテーマを展開していく。
実際存在はそんなに健全で前向きで単純なものではない。
これを物質的な無意識な性的なレヴェルから機械的に描いていったものか。
そう思う。
絶えまないノイズ。インダストリアルノイズ。
そして嵐。
モノクロになると何か彼岸性が高まる。
性と死のイメージ。
ギリシャ神話のだれかのような(特定できない)男が重そうなレバーを引く。
妙な生物の幼態らしきものー精子のメタファーか?を水中ー羊水に送り出す。
月経、出産の流血のメタファーも同様に溢れる。
干からびた受精卵が割れる。
何故か主人公は妙に幸せそう。
主人公の狭いベッド脇には何時も鉢のない盛り土だけの観葉植物か盆栽がある。
妙な食べ物。妙な料理。妙な現象。
妙な発作。妙なしきたり。
妙なシチュエーション。
妙な連続性。
妙な飛躍。
妙な連結。
妙な歌。
妙なヒト。
そして妙な赤ん坊。
爬虫類か。
絶えまなく泣く。
ゆっくり眠りたい。
よく分かる。
しっかり面倒見て頂戴。
これもよく分かるが、冗談じゃない。
育児ノイローゼで妻は家出。
恐竜の赤ん坊は、病気。
主人公は恐竜の口に体温計を突っ込み変温動物の体温を測る。
加湿器を何故かかけて、ワイシャツ姿で看病。
観音扉を時折開く。
困った時に開けるのか?
何故か日本の神棚のような。
部屋のドアを開けると赤ん坊が泣く。
ラジエターからは頬に大きな瘤のある白痴的な女性歌手が現れ愛想よく踊る。
落ちてくる生物の幼態らしきものを踏みつぶす。
その後、主人公は一緒に寝ている妻が、歌手が踏みつぶしていた妙な生物の幼態らしきものを次々に生んでいることを知る。主人公はどんどんほおり投げ壁にたたきつけて捨てる。
これが例の赤ん坊の元の姿?
27号室の女との浮気。
不毛な性。
あえて解釈する気は起きない。
例の歌手が歌う。ピーター・アイヴァースの”イン・ヘヴン”
天国なら何でもありよ、、、。
飛びきり妙な脳天気なうただ。
主人公の脳みそからイレイザーヘッドが工場でつくられる。
27号室への未練。
ノックをすると留守か
すぐ後に他の男と会っていることを知る。
赤ん坊が老人のように笑う。
まるで主人公をあざ笑うかのように。
主人公は赤ん坊の包帯?をハサミで切り内臓を突き刺し殺す。
あふれ出てくる夥しいイメージ。
増殖する言語にならない速度のことば。
これをある明確な論理でかたどると、構造をもちエレファントマンとなるか。
エレファントマンの外套を剥ぐとこの世界が顕わになるのか。
デビッド・リンチ監督は究極的なもの元言語的なレヴェルから存在を、というかその場所にわれわれを投げ込もうとする。
意味づけはこちらに託すとしても。
面白い冗談。
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