ラ・ジュテ

La Jetée
1962
フランス
クリス・マルケル 監督・脚本
トレヴァー・ダンカン 音楽
エレーヌ・シャトラン
ダフォ・アニシ
ジャック・ルドー
「ボーディング・ブリッジ」
28分の映画。AmazonPrimeならでは。持っていても良い貴重な作品。

1962年と言えば、キューバ危機。
実際に、核の脅威は充分に感じられる危機的状況だった。
であるから、この第三次世界大戦で核が使用され放射能汚染で地上に人が住めなくなったという状況は可能性としてあり得たものだ。
この現実味は、再び現在の世界においても感じられる不穏でシリアスな雰囲気~世界として蘇る。
モノクロ写真を連続して映す手法で描く”フォトロマン”を用いて全編が生成されてゆく。
スチール画にナレーションの絡みのみで進行するもの。
これが実に世界観を創造する演出的効果を高めていた。
通常の実査版では28分でこの凝縮した世界~イメージを描くのは無理だと思われる。
と謂うより、この手法で28分はピッタリの尺であった。

地上は廃墟と化し地下生活にあっては、エネルギー資源と薬品などの欠乏が深刻化し科学者は未来にその解決策を求めた。
(未来がどうにかなってるのなら、今が貧窮を極めていようと何とかなるのでは、、、)。
地下研究所で捕虜を使い、意識を過去や未来の時間系に飛ばして、意識による交渉に当たらせようとする。
だが、被験者たちは実験途上で皆、錯乱したり死んでしまう。
そこで、過去に強い拘りをもつ想像力豊かな男が選ばれることに。
この男の最も拘りのある「ボーディング・ブリッジ」で見た女性の記憶を巡って噺が展開して行く。
実際に飛ばされた過去の意識がその女性と出逢う。
彼女と楽しい時を過ごしてゆくが研究者の都合で度々中断され場面が飛ぶ。
相手の女性もこの男性が異なる時間系から突然訪れる事を理解する。
逢瀬を重ね博物館でのデートが最後となる。
実験者が彼の意識を未来に向かわせるのだ。彼は初めて錯乱せず死亡もしない被験者であった。

未来の意識は彼を拒絶したが、過去の地球が滅ぶとこの世界も消滅するという理屈で、産業を復活させる方法を持ち還ることに成功する。
暫くして未来の意識が彼を仲間に迎えようとするが、彼は平穏な未来より少年期に戻ることを切望するのだ。
その通りに彼はあの少年期に戻り、まさに「ボーディング・ブリッジ」で佇む女性を認め駆け寄る。
だが彼の抹殺を決めていた研究者たちの差し向けたスナイパーに撃ち殺されてしまう。
その瞬間を目にした少年こそ、その男自身であった、、、?

これに関してとやかく言うつもりはないが、とてもリリカルな心象風景が描かれており、特異な優れた映像実験となっていた。
テーマ的にも現在に通用するものだが形式的にもこのような手法の可能性は継承され追及されて良いと思う。
(最近の作品でこのようなものを観たことない)。
良い映像体験が出来たものだ。