ねこにみかん

2014
戸田彬弘 監督・脚本
上原三由樹 脚本
黒川芽以、、、小野田真知子(智弘の婚約者)
大東駿介、、、智弘(血の繋がりのない連れ子)
竹下かおり、、、児玉里美(由美のママ、家事全般)
東亜優、、、児玉由美(ママの娘、17歳)
高見こころ、、、笠松佳代子(さやかのカカ、スナック経営)
中村有沙、、、笠松さやか(カカの娘17歳、全寮制の学校)
辰寿広美、、、宇和成美(隆志のハハ、高校の国語教師)
清水尚弥、、、宇和隆志(ハハの子供17歳)
隆大介、、、上野山正一郎(チチ、釣具屋経営、3人の子の父)
上原三由樹 脚本第三弾ということで、これで最後とするつもり。
和歌山県有田川町が舞台。とっても田舎。

何で「ねこにみかん」なのか、、、。確かにみかんとねこはいつも出て来る。
あの吐きそうになって藻掻いていたねこはミカンを食べてしまったものか?
とっても面白い光景であった。
恋人(内縁の妻)と正一郎がそのまま家庭を作って維持しているらしい。
微妙なバランスでかろうじて成立している特殊な家族と謂えるか。
真知子は婚約者である智弘のその実家に連れて来られて大いに当惑する。
そこでは家の仕事は各自でそれぞれ受け持っているが家に囚われず全くバラバラに自由に暮らしてもいた。

3人の所謂妻がいるのだが、それぞれハハ、ママ、カカと呼ばれている。
ハハの子が隆志で、ママの子が由美で、カカの子がさやかであり、皆17歳の高校生だ。
ハハは料理担当の専業主婦か、ママは高校の先生、カカはスナックの人気ママ、、、ややこしい。
チチは釣具屋をやっているが、とても呑気に過ごしている感じ。
ちなみに隆志は勉強は得意だが登校拒否中である。
由美はしっかりもので剣道部に所属しており、冷静な大人の態度を崩さない。
さやかは歳相応の女子であるが、潔癖症で恋愛や大人は汚いという感覚をもっている。
この辺は環境を窺えば分かるところだ。
連れ子の智弘の母は若くして死んだ(チチに拒否されて死んだ模様)。
だから彼はこの家とは全く血の繋がりは持たない。皆からおにいちゃんと呼ばれている。
しかしこの家の関係性を認め、その中で自分も活かされてきたという。
チチはその時の反省から誰も死なせずに共に生きる形をこのように取ったようだ。
(役所にはどういう形で届けているのか?)
一見、とても異様だが、中にいればその人にとっては普通であり自然であることもあるものだが。

外からやって来たばかりの真知子には直ちに呑み込めない。
少しずつ質問したりして理解し歩み寄ろうとはするが、、、。
噺は出来るようになるが、どうにも彼女にとって許せない事態に出くわす。
ハハは外で、カカは堂々と自宅で浮気?他の男とも恋愛関係にあるのだ。
この家族形体で貞節を守るとかいう道徳性はともかく、子どもたちに対する配慮が無さ過ぎる点においてであろう。
ここについては食って掛かるも、皆不思議に冷静なのだ。
そうしたこと全てを見込んだ上での共同生活ということらしい。
皆で受け止める。皆で帰りを待つ。それが真知子にも聞かれたこの家族を維持する秘訣だと。
確かに受け止め合っているとは謂うが、子どもには明らかに皺寄せが見て取れる。
ひとにどう向き合えばよいか分からなくなっていた。
恋愛を疎ましく思い、自分自身も汚いという意識を持ってしまっている(特にさやか)。
たかしは学校に行くことも出来ない。
反動形成と引き籠りと退行も感じられる。
大家族なのに下校時にはほとんど人がおらず、子どもは孤独である(さやかは週末に帰って来る)。

打ち解けて来たところで、同級生の男子に告白されたさやかが真知子に相談する。
そうした気持ちに嫌悪感があり受け止められないと。
それに対し真知子は、男女の関係は汚いものではなくどんどん許容範囲が広がる関係だとか説明する。
どうもそれで納得とはいくまいが。
真知子の父も何故か出て来るのだが、かなり歪がある。
ネグレクト父で放りっぱなしだったのに、親の権威を手放してはいない。
はっきり結婚に反対して仕事が忙しいからと言って帰って行く。
そして家庭の愛情に憧れる彼女の受け入れ先がよりによってこの微妙な家庭である。
しかし良いのではないか。家と結婚するのではなくあくまでも相手と結ばれるのだ。
この対幻想がしっかり育まれれば、基本何の問題もなかろう。
ここにまた多様性どうこうを謂う気はないが、個と共に家庭も生きるためには様々な形があって良い。
それがそうならざるを得ないと謂うなら、受け入れその中で最善の方向を探るしかないはず。

中村有沙のニヒリスティックな端正な横顔が印象的であった。
もう一人の東亜優の凛とした諦観漂う姿にも惹かれた。
この2人の若い女優さんがいたことでリタイヤせずに最後まで観られた感じ。
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