あやつり糸の世界

WELT AM DRAHT
1973
西ドイツ
ライナー・ベルナー・ファスビンダー 監督・脚本
ダニエル・F・ガロイ 原作
フリッツ・ミューラー=シェルツ 脚本
ミヒャエル・バルハウス 撮影
ゴットフリート・ヒュングスベルク 音楽
クラウス・レービッチェ、、、フレッド・シュティラー博士
マーシャ・ラベン、、、エヴァ・フォルマー (フォルマー教授の娘、上位世界の存在)
カール=ハインツ・フォスゲラウ:、、、ヘルベルト・ジスキンス所長
アドリアン・ホーフェン、、、ヘンリー・フォルマー教授
バルバラ・バレンティン、、、グロリア・フロム(ジスキンス所長の秘書)
ギュンター・ランプレヒト、、、フリッツ・ヴァルファング(シュティラー博士の同僚)
ボルフガング・シェンク、、、フランツ・ハーン(シュティラー博士の同僚、心理学者)
マルギット・カルステンセン、、、マヤ・シュミット
ウーリー・ロメル、、、ルップ記者
「13F]がこの映画のリメイク版であったとは知らなかった。あの映画は印象深かった。
この監督の映画は初めて観たが、確かに巨匠の大作だ。
しかし212分は長かった。途中4回寝た。これで感想書くのは心許ない(爆。

未来研究所が「シミュラクロン」(シミュラクラやシミュレーションから来た言葉か。ジャン・ボートリヤールやジル・ドゥルーズでお馴染みの)というシステムにより作り出した我々の世界にそっくりの仮想世界を調査することで20年先の未来社会を予測しようというもの。
全人類の為の研究と謂うより特定の鉄鋼の企業と癒着し、利潤を貪ることが当面の目的のようだ。
この研究主任のフォルマー教授が妙なことを口走りはじめ突然変死する。
その後任に治まったシュティラー教授がじっくり長い時間を(4時間近く)かけて、その謎を解き立ち向かってゆく。
何に対して、、、自分たちの世界の上位層である「現実」に対して。

この辺、先に観た13Fと同様に、最初は自分たちはコンピュータの最新プログラムにより仮想世界を作った創造主のような存在である意識を持って過ごしていたが、ある時シュティラーは頭痛に悩まされ、運転中に一瞬の間、道路など外界が消えてしまう現象に遭遇する。
この後から様々な腑に落ちないことが起こって来る。
保安課長ラウゼが突然いなくなってしまうが、研究所の誰も彼の記憶がない。つまり最初から存在しないことになっており、彼に付いて知っている~記憶を持っているのがシュティラー一人なのだ。
これには混乱する。完全に彼のデータは抹消されていた。だが、仮想世界の住人(およそ9000人)の中を検索すると彼はそこでは存在しているのだ。

秘書が突然病気療養となり、代わりに所長のジスキンスから秘書が送られて来る。
このグロリアは、シュティラーの監視役であった。徐々にこの世界と仮想世界との関係にきな臭い要素が入り込んで来たようであった。しかしグロリアはシュティラーにも好意をもっており、彼がジスキンス配下の者に拘束されそうになったところで彼を助ける。
シュティラーは仮想世界にアインシュタインという連絡個体を投入していたが、「シミュラクロン」で短時間、仮想世界に自ら赴き彼とコンタクトを図り独自に捜査を進める。
そしてある時、アインシュタインが意識を他の個体に転送してもっと上位の世界に移住すると主張してきたではないか(彼はフリッツに成り済まし上位世界にやって来たのだ)。
更にシュティラーのいる世界も仮想世界でありそれを創造した「現実世界」があることを仄めかす(流石はアインシュタインという名だけのことはある)。
自らの足元の揺らぐシュティラーは混乱を極め、徹底してその真相を暴こうと動き始める。
だが関わる者ほとんどが彼を狂人扱いであった。更に彼を危険分子として消そうとする者たちが迫って来る。
基本、単なる電気信号~データの作る存在に過ぎない仮想世界の住人であっても、上位世界の存在に「意識」を転送することで、その世界の住人となれるようなのだ(ホントかい。つまり入れ替わるということ?)。
シュティラーの同僚で心理学者のフランツ・ハーンも彼と同じ認識に至り、彼を匿い行動に出たが、車ごと湖に転落させられ死んでしまう。フォルマー教授同様、知りすぎたことで消されたらしいが、シュティラーはそのフォルマー教授とハーンを殺害した疑いで警察に追われる身となった。
これでこの世界においても、研究所はクビになり、何処にもいる場所を失い逃げ惑いながら、真相を突き止めようともがくことになる。

度々逢っていたフォルマー教授の娘エヴァを頼りにしていたが、実は彼女が上位の現実界から降りて来て監視をする(アインシュタインと同様の)役であった。しかし彼女はシュティラーを愛していて助けたいという。
まさか実体のない自分を何故愛せるのかと問うシュティラーに対し彼女は、実はわたしの現実界のあなたに瓜二つのシュティラー博士があなたのいるこの世界を創造したのだと打ち明ける。しかし性格はまるで異なると。
彼は彼女の申し出を断り、独り研究所に戻り、屋上からシュティラーの無実を主張し彼を復帰させると演説しているフリッツとグロリアに呼応する形で聴衆の前に立ち自らの無実とハメられたことを力説する。
だがそれも虚しく待機していた警察に一斉に狙撃され撃ち殺されてしまう。
車の屋根に横たわる彼の死体が映されながら、彼はエヴァによって殺害寸前に意識転送された身体に乗り移っていることも描かれる。下位世界では死体として横たわっているが、ここ上位世界ではふたりは活き活きとしてお互い見つめ合っている。
では、この男が創造主なのか。中身はその下位世界のシュティラーなのだが。
この2人が愛し合うところで終わる。
ハッピーエンドなのね。

CGのないSFは本物が多い。これもその一つ。
鏡やガラスを多用した撮影とアーティスティックな演出で充分その世界を現出していた。
お見事。
WOWOWにて
- 関連記事
-
- ソウル・フラワー・トレイン
- モダン・ラブ
- あやつり糸の世界
- 炎の少女チャーリー
- 斜陽のおもかげ