ノマドランド

Nomadland
2021
アメリカ
クロエ・ジャオ 監督・脚本・製作・編集
ジェシカ・ブルーダー『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』原作
ルドヴィコ・エイナウディ 音楽
ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ 撮影
フランシス・マクドーマンド、、、ファーン・製作
デヴィッド・ストラザーン、、、デイブ
リンダ・メイ、、、リンダ
シャーリーン・スワンキー、、、スワンキー
ボブ・ウェルズ、、、ボブ
ピーター・スピアーズ、、、ピーター
フランシス・マクドーマンドとデヴィッド・ストラザーン以外は、素人。ホントのノマド。
そして役者のふたりも見事にノマドしていた。
ホントのノマドの人たちも素敵な演技で驚く。
広大な砂漠の光景が、人間であるが為の宿命としての孤独と相まって枯れた絵として定着していた。

フランシス・マクドーマンドが出ると一気に彼女の醸す世界に惹き込まれる。
「ファーゴ」と「スリー・ビルボード」が圧巻であったが、これもまた、、、。
ちなみにこの三作すべてでアカデミー主演女優賞を獲得している(キャサリン・ヘプバーンに並ぶ4回目もあり得る)。
アカデミー賞、エミー賞、トニー賞の演劇の3冠を達成し、本作では「作品賞」も取っており製作と主演女優賞のダブル受賞は史上初という。
それが充分納得できるものだ。

ノマド生活などと聞くと思想的に惹かれるところがあるが、更に最近では車中泊が流行っている、ここでのノマドは、高齢者たちが経済的な余波を喰らい家を失い車で移動しながらそれぞれの土地で慣れない日雇い仕事や季節労働をして生きてゆくと言うもの。
若者も時折いるが、弾んだ感じはしない。自由の謳歌などというものではない。
しかし、ひとつの場所に縛られるのはどうしても苦しくなる(彼女は大企業の倒産により街が消滅したことが大きな原因だが)。
こうするしかなかったという気持ちと出来る限り縛られずに生きたいという願いが窺える。
しかし実際、根無し草で生きて行けるかというと、それは難しい。
ファーンも車の故障でしっかりした家庭を持つ姉に借金に行っている(支援リーダーが説く通貨からの解放はない)。
テクノロジーと衣食からは自由ではないことから制限は色々と生じてくる。

ノマド生活を続けて来た友人が、いつしか息子の家に入りそこでゆったりと孫の世話をしながら暮らしていた。
招待されてそこに赴き、皆に歓迎され、彼にずっと一緒に住まないかと誘われるが、家の生活には戻る意思はなかったようだ。
定住が向かない人はいると思う。
単に経済的な理由から車中生活をしているのなら、チャンスがあれば抜け出て家に住むはず。
そういう人も勿論、いるはずだが、一度ノマドになると戻れないというのも分かる気はする。
いや定住生活には戻れないという(彼女の場合、夫と共に過ごした地に拘り過ぎ、それを吹っ切るために外に出たのだ)。

高齢のノマドの人々を支える活動をしているリーダーがこの生活には「さよなら」はなく「またいつか」だけがある、と言っていた。
彼も息子を5年前に自殺で失い、その喪失感に耐えながら生きて来たが、今この活動をすることで供養になると考えてるという。
いつかまた、息子に逢えると、、、。彼女もまた亡くなった夫にまた逢おうとしているのだろうか。
どうしたって物悲しい。
物悲しい重い空だ。
リリカルなピアノが響き渡るBGM。

とても品格のある作品で、この監督の他の映画も確認してみたい。
監督も本作で、アカデミー監督賞をアジア人で初めて獲得している。
WOWOWにて
*特別価格
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