追憶の森

The Sea of Trees
ガス・ヴァン・サント 監督
クリス・スパーリング 脚本
メイソン・ベイツ 音楽
マシュー・マコノヒー、、、アーサー・ブレナン(大学教授、物理学)
渡辺謙、、、タクミ・ナカムラ(会社員)
ナオミ・ワッツ、、、ジョーン・ブレナン(アーサーの妻、アルコール依存症、不動産業)
久々のナオミ・ワッツ登場の映画で、これは大丈夫だと思って観てゆける(笑。
主演キャストは、マシュー・マコノヒーと渡辺謙である(ナオミ・ワッツは回想)。
安定している(笑。
富士の樹海が舞台である(ホントに行ったのかアメリカの何処かなのか)。
わたしも行ったことはないが(笑。コンパスが効かない処なんて。ただでさえ方向音痴なのに。

ちょっとしたボタンの賭け間違いで何もかもが悪く巡り、言い合いの絶えない険悪な状況に落ちることはある。
ブレナン夫妻もその悪循環に絡み取られていた。
そう言ったことも、病気などのアクシデントがきっかけでリセットされることもある。
しかし不運にもその時は既に遅い、場合もあるのだ。
このケースでは、奥さんは病ではなく、自動車の救急車への衝突というこれまた不運な事故によるものであった。
病気の脳の腫瘍は良性のもので手術で確実に助かるものであり、安心しきっていた矢先のことである。
漸くお互いに相手を思いやる気持ちの溢れ出た時期に。
人生とは皮肉なモノ。

妻は生前、病院では死なないでね、と夫に念を押していた。
だから片道切符で、青木ヶ原樹海を選んだ。
しかし自殺しろとは言ってない。
それでタクミ・ナカムラが現れたのか。
とは言え微妙過ぎるだろ(ナオミ・ワッツが渡辺謙ってそれはちょっと。夫は絶対気づかないのは確かだが)。
夫はつくづくこれまでを思い返し反省する。
妻について事務的なことは、しっかり押さえていたが、彼女の好きな色とか好きな季節など知らないでいた。
死のうとしていた矢先に、タクミ・ナカムラに出逢い、彼がただ道に迷っただけで死ぬ気はなく助けてくれと縋る。
自分は死ぬつもりでいたが、相手は助けてやるしかあるまい、ということで二人して出口を必死で探すことに。

だが、探し回ることでどんどん樹海に深く嵌って行く。
この試練~彷徨は妻との泥沼生活の再現にも想える。もう一度確認し直すための。
雨に降られ凍えそうになったり、防寒のためとは言え自殺者の服を剥ぎ取り着たり。
池を見つけて水を得るが今度は洪水に流されたりして過酷な環境に翻弄される。
かなり酷い怪我もして体力も尽きた当たりでガイコツ入りテントを何とか見つけ携帯も確保した。
ライターもあり暖を取ってどうにか命は繫ぎ止める。
今やここを脱し、生き抜くことで、二人の気持ちは一致していた。
アーサーはタクミに、これまでの経緯を語って聞かせた。タクミの表情は彼を超えた感情に支配されているかに見える。
妻を失った悲しみを嘆くとタクミは常に愛する魂は一緒にいると諭す。
だがそれを振り払うように妻もう死んだとアーサーは叫ぶ。
タクミが謝るとアーサーは、いや自分が悪かった、許してくれと何度も何度も泣いて繰り返す。
これは明らかにタクミを超えて妻に対する謝罪というより悔恨の情でもあろう。

タクミは、自分の名前の他に妻はキイロで娘はフユだという事だけを伝える。
そして世話になったと語り、もう動けなくなったことを悟らせるのだ。
アーサーは必ず迎えに来ると言ってジャケットをかれに被せ、助けを求め携帯をかけ続ける。
すると電波の繋がるところに出て、レンジャー部隊が気づいて動き出す。
結局アーサーだけが救急車で運ばれ助かる。
2週間くらい後に退院して彼は再び樹海に入り、テントの傍のナカムラを寝かせた場所を見出す。
だがそこには、かつてナカムラが魂があの世に行くときに咲くという花が綺麗に咲いているだけだった。
彼はその花を自宅に持ち帰る。
大学に戻り学生の質問に答えている時、その学生が教授のメモをみとめる。
彼は日本にいたことのある学生で、その意味が掴めた。
アーサーが人の名だと思っていたのは、色と季節の名詞ですよと教えられる。

やはりあれは、妻の霊であったのか。
ここで彼女の好きな色と季節を知ることになった。
「水辺にいると幸せ」というタクミの言葉も亡き妻の言っていたことだ。
あなたと愛する者は常に共にいます。今やアーサーもそう感じている。
こういう噺はアメリカ人は嫌うのか。
上映が終わるとブーイングの嵐だったとか。
(いくら何でもそれは、ねえ)。
わたしはとても過酷な試練を潜る再生への爽やかな映画だと思った。
あの花を自宅の鉢に植えた頃には、彼の表情は、はっきり生き返っている。
「楽園への階段」でもよかった(ナカムラが唄う示唆的な歌、わたしは題からLed Zeppelinをちょっと連想したが)。
わたしは、好きだが。こういう映画。
(アメリカだとブーイングなのね)。
WOWOWにて
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