リアル鬼ごっこ

2015
園子温 監督・脚本
トリンドル玲奈
篠田麻里子
真野恵里菜
冨手麻妙
斎藤工
わたしはこの監督の「ヒミズ」が好きだ。
だがこの監督は日本のアニメーションやゴジラやウルトラマンなどのリブートものが大嫌いなようだ。
わたしはそれらが大好きなのだが。

突然の突風~かまいたち?によりバスが綺麗に切断され、床に落ちたシャーペンを拾おうと屈んだトリンドル玲奈だけ助かり、後の乗員(女子高生と担任とドライバー)は皆綺麗に胴から切断されていた。
そのシャープなシーンで、先を期待してしまったが、その後が何やらパラレルワールドに次々と乗り移ってゆくみたいな、、、。
突風に女子高生が体を切断されたり、何故かガトリング銃やショットガン武装した女性教師に女子高生がドンドン撃たれていったり、、、後にトリンドル玲奈が篠田麻里子に入れ替わり名前も変わっており、その後真野恵里菜へと変わり違う女子に成ってゆく。

トリンドル玲奈のまま一度違う女子にも入れ替わっていたが、その辺の経緯というか理由を冨手麻妙が説明する。
この人は園子温のお抱え女優か。
どうやらトリンドルの身に起きた現象はパラレルワールドに移動によるものだと言いたいみたい。
その移動(脱出)には、自分が気付く前に意外な行動をとることだと。シュールな行動をせよ。シュールに慣れろ?何それ?
一体何を言っとるのか?そんな行動がとれる訳ないだろ。それとシュールを適当に使いすぎ。完全に雰囲気ことばである。
(彼女自身体を張った思い切った演技に挑戦してるが、そういった突飛な事をしろという彼女の心構えみたいに聴こえる)。
また、違う人に入れ替わったときも、ここをどう脱出するかとか、彼女に持ち掛ける女子が必ず出てくるが。
パラレルワールドなんだから、相互作用はしないのだし、完結した系にあって別の系を意識していること自体、矛盾である。
冨手麻妙~登場人物が説明すること自体がおかしい。説明が煩い。辻褄合わせや言い訳を一切せずにその系に飛んだというなら、そこだけで完結する動きをすべき。他にまた飛んだのなら、そこだけのドラマで行く。
それを俯瞰する超越的な視座などあり得ないので、単にそれの入れ替わったシーンで繋ぐしかあるまい。

何がどう鬼ごっこでリアルなのか分からないが、なんだかんだでよく走り、突風に切断され教師に撃ち殺されるだけでなく、フィジカルな殺人バトルも起こる。そもそも何でこんな虐殺場面が続くのか、そこが全く不明のままなのだ。それぞれの系で何が起きているのか。何やら黒幕がいるようなニュアンスもあったが(最後にアンティークな機械を弄っていた斎藤工お爺ちゃんがそれなのか)。
教会に集まった女性が皆、突然下着姿になり襲って来るとか、そう展開するコンテクストの流れが見えない。
おそらくそれをもってシュールと言いたいのだろうが、シュールな内容でなく作り方がシュールなだけ。
単に監督の趣味の問題であろうが、趣味の盛り込み方が安易で下品。


後半まで、女子高生とその関係者も全て女性で固めており、異常な数のエキストラも女性であった。
だが、急にマッチョな男のいる妙な裏通りみたいなところにトリンドル玲奈に戻って迷い込み、種明かしみたいな場に出るが、余計に混沌とする。
そしてその極みに、斎藤工がブリーフいっちょとなって現れ、トリンドルをベッドに誘うが、そこにあっては、これまでの過程が全て劇として行われたものに過ぎず、出演していた彼女~女優に惹かれ念願の、というものなのか、彼女はすでに死んでおりDNAから作ったクローンなのだとか、、、
何でもよいが何をやりたいのか、、、シュールならシュールで、その中での骨格と説得力がないとどう見たらよいか分からない。
しかし斎藤工のブリーフ姿は何なのか?もうそこまでシュールをやらなくてもよい。

結局、人に見せるためのモノではなく監督の趣味でともかく何をか作ってみたかったのだ。
シュールな世界を人に愉しんでもらうというよりシュールに趣味を何でもかんでも盛り込んでみたかった。
ひところ女子が何でも言葉に「超~」をくっつけて喋っていたが、それくらいに軽く自己完結したもの。
観終わっても印象が残らず、確かにスプラッターで血が噴き出たり色々刺激的なシーンを羅列してはいたが、かするところがない。
何も感じず残るものがない。
しっかり対象化されてない他人の無意識的な趣向~趣味を無理やり披露されたような無意味さのシュールであった。
Wowowにて
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