竜とそばかすの姫

Belle
2021
細田守 監督・原作・脚本
岩崎太整 音楽監督、Ludvig Forssell、坂東祐大 音楽
中村佳穂”millennium parade × Belle”主題歌
山下高明 作画監督・CG作画監督
声:
中村佳穂、、、内藤鈴(17歳の女子高生、作曲が趣味 / Belle )
成田凌、、、久武忍(すずの幼馴染み、バスケ部、女子に絶大な人気)
染谷将太、、、千頭慎次郎(すずの同級生、カヌー部)
玉城ティナ、、、渡辺瑠果(すずの同級生、吹奏楽部アルトサックス、全校生徒に絶大な人気)
幾田りら、、、 別役弘香(すずの親友、すずをメタバース〈U〉上で「Belle」としてプロデュース、リケジョ)
森川智之、、、ジャスティン(Uの中で自警団を組織し正義を振りかざすリーダー、Asを強制的にアンベイルするガジェット所有)
ermhoi、、、ペギースー(Uの歌姫、Belleを拒絶していたが、オリジンで現れた時から彼女を応援する)
津田健次郎、、、イェリネク(現代美術家、竜のオリジンと疑われる)
小山茉美、、、スワン(嘘で塗り固まれた婦人、竜のオリジンと疑われる)
宮本充、、、フォックス(メジャーリーガー、竜のオリジンと疑われる)
牛山茂、、、司会者
多田野曜平、、、野球評論家
宮野真守、、、ひとかわむい太郎 & ぐっとこらえ丸(YouTuberコンビ)
森山良子、、、吉谷(合唱隊のリーダー)
清水ミチコ、、、喜多(合唱隊のメンバー)
坂本冬美、、、奥本(合唱隊のメンバー)
岩崎良美、、、中井(合唱隊のメンバー)
中尾幸世、、、畑中(合唱隊のメンバー)
役所広司、、、すずの父親
石黒賢、、、恵・知の父親(息子を常時虐待する)
佐藤健、、、恵(東京で暮らす少年、メタバース〈U〉上で竜として暴れる)
細田監督お得意のメタバース空間内での壮大なオペラみたいな作品。
愉しい電脳メタ「美女と野獣」でもあるか。
惜しむらくは声優何とかしてもらいたかった。ホントの声優さんがやっていれば更にクオリティは上がったことは間違いない。
中村佳穂は歌のみに専念し声質の近い声優に普段の声を頼むのがベストではないか。

”As”というアバターをメタバース〈U〉上に形成し、50億人がそれぞれ思うように愉しんでいた。
イヤフォンみたいなスキャニングガジェットを付けるだけで、高度にオリジン(現実界での身体~人格)から理想像を抽出しアバターを形成するテクノロジー。こりゃ凄いわい。
内藤鈴は幼いころ自分と同じ年頃の少女を水難事故から救い自らを犠牲にした母とのことに決着が付けられず悶々とした内向的な生活を送っていた。父とも口をきくことが出来なくなってしまっていた。密かな恋心を寄せる忍をも避けている毎日。
自己表出として作曲に打ち込んではいたが、作品を人前で唄うことは到底出来ずにいたのだが。
アバター”Belle”として解放された鈴は、自ら作曲した曲を思う存分メタバース〈U〉空間で披露する。
その直後の反応は見られなかったが、翌日途轍もないフォロワーが付いていった。

一躍時の人となりメタバース中に噂が渦巻く。
50億人が取沙汰すれば騒然として大変だなどと言う呑気なものではなく、現実空間を脅かすレベルとなろう。
場合によっては、仮想空間が現実空間を規定する逆転現象が起きてもおかしくない。
と謂うよりそれはしばしば起きている。
そういう構造だ。人は現実より仮想空間にあって、自分の能力を伸び伸びと開花させることが出来るものだ。
この場にあって、秩序がどうのこうのと正義を振りかざしその力を委縮させようなどという輩は糞ウザいだけ。

Belleの人気はとどまることを知らず、コンサートを開けば、やんややんやの大喝采。
勿論アンチも出るが、誰もが注目せざるを得ない存在となる。
そこへ「竜」と呼ばれるアウトサイダーが何処からともなく乱入し、コンサートは混乱を極め中断されるのだ。
仮想空間内でのバトルの描写も相変わらず鮮やかで迫力もある。
鈴~Belleは、「あなたは誰?」という問いを発する。(しかし彼もまた彼女の歌に引き寄せられて来たに違いない)。
何故、こんな無謀な行動をとるのか、何が彼をそうさせているのか。
邂逅したことは、引き合ったことを意味する。その目は怒りと混乱の底に救いを求めていた。彼女に対して。
彼女も竜に強く引かれる。
その後。仮想空間内で何度も出逢うが、彼は決して心を開かない。
しかし、もがき苦しんでいることはありありと窺えた。

ここで彼女はかつて母親が泣き叫ぶ他人の子供を命を賭して水に飛び込み救いに行ったように、そのオリジンを救おうとする。
彼女を幼いころから守って来た信頼する忍が、鈴もオリジンをUの中で晒して唄うように諭す。
そうしなければ向こうも信用しないと。
ここまでBelleを育て上げて来た親友の弘香は猛反発するが、鈴は意を決してアバター群の中にたった一人オリジンを晒す。
決してここでは、誰もそれはしない。自分からかけ離れた存在となって、本来の自分を活き活きと愉しんでいるのだ。
ここに現実空間の重力を持ち込むことは暗黙の裡にご法度となっているはず。
だがそれを敢えてする。現実の人を救うために。かつての母のように。
彼女はオリジンの姿で歌うとかつてない喝采に包まれる。アンチの存在も彼女を励ます。
すると彼女の働きかけを拒絶していた竜である少年、恵からの配信画面が再開された。だが直ぐにそれに気づいた父が彼らを虐待しパソコンの電源を落としてしまう。

いつの間にか集まっていた仲間が次々にアイデアや知識を振り絞ってゆき彼女の探すターゲットを割り出してゆく。
(ここはいつもの細田監督の流れだ)。
父に独りで東京に出かけることを知らせ、鈴は電車に飛び乗る。
家庭内暴力にただひたすら耐え忍んで暮らす兄弟を鈴は探し当てる。
Uにおける竜である少年、恵に実際に出逢い、彼を抱きしめる。
恵たちを暴力で連れ戻そうとする父から鈴は身を挺して守る。
抱きしめられたとき君が本当のBelle~鈴であることを確信したと少年は言う。
(Uの空間で彼女は打ちひしがれた竜を抱きしめていた)。
メタバースとこの現実空間はシームレスとなってしまっていた。
きっとそうなんだ。

この結果、鈴は忍と素直に向き合うことが出来、父と以前のような関係に戻る。
これは、もう一回観たい。
Wowowにて
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