バンカー・パレス・ホテル

Bunker Palace Hôtel
1989
フランス
エンキ・ビラル 監督・脚本
ピエール・クリスティン 脚本
フィリップ・エデル、アルノー・ドゥボ 音楽
ジャン=ルイ・トランティニャン、、、オルム
キャロル・ブーケ、、、クララ
マリア・シュナイダー、、、ミュリエル
ジャン=ピエール・レオ、、、ソラル
ブノワ・レジャン、、、ニコライ
ヤン・コレット、、、オルシニ
フィリップ・モリエ=ジュヌー、、、デトゥープ
ロジェ・デュマ、、、ザルカ
ハンス・メイヤー、、、大統領
一切説明的なものはなく、淡々と物語が人形劇を連想するような雰囲気で進む。
どうやら政府軍とレジスタンスの間の戦闘が続いているようである。
政府要人が列車で運ばれ安全な地下のホテルで過ごしているらしい。
その厳重に守られた場所にスパイが紛れ込む。
そこにいるべき大統領はずっと不在のままで、、、。
(何か昼寝の時に観る悪夢みたいなシュールな世界であった)。

これ程音楽、音響が前に出る映画は観たこと無い。
大変なインパクトである。
魅了された。
空間トーンも青味がかった暗いもので建造物やマシンが未来的と謂うよりアンティークな風合いで独特の個性である。
人物も何処か人間離れしたアンドロイドの雰囲気があり、アニメ調のスタイリッシュな感覚だ。
アンドロイドそのものも登場していたが。グロテスクなメイドが独特な空気を醸していた。
特異なジャズ~現代音楽を奏でる楽団もアンドロイドらしい。
この無機的な雰囲気は「イカリエ-XB1」に通じるものを感じた。こちらも音楽が魅力的。

そして禁止された言語というのが興味深い。
それを語るのがレジスタンスか。
政府はその言語を固く禁じている。
端から皆にスパイ扱いされている女性クララと整形手術でニコライの代わりに入り込んだ男がレジスタンスのスパイのようだ。
ニコライ(偽)は誰からも疑われていないが、クララは何故か周りの迫害からオルムが庇い続ける。
スパイとは言え、特に何をやるでもない(恐らく大統領が見つからなければ任務も果たせないのか)。
楽団の演奏がとても印象的。

快適な地下ホテルの環境が次第に崩壊してゆく。それに従い不穏な空気が濃くなってゆく。
これが時間の流れを表していた。
いくらプール付き高級なホテルであろうと地下に幽閉されているようなものである。入れても外には出られない作りのようだ。
そこにずっと留まっているとなれば鬱積して精神的なストレスはいやが上にも高まるというもの。
こういう場で何より肝心なのは、外界に関する新しい情報である。
これがあれば、何処かに閉じこもっていても生命~精神にとって不可欠な代謝が保たれるが、ここでは電話、テレビが使えない。
時折ブラウン管テレビが一方的に何らかの情報めいたものを映し出しはするが、、、
今地上がどうなっているのか、闘いの勝利はどちらに傾いているのか関心事が掴めずストレスフルになるだけ。

中盤以降は天井や壁が崩れ、異様な音が響き渡り、気温が急速に下がり、水道の蛇口からは真っ黒なタールみたいなものが出て来る。
もうこうなると終末観や破滅感情が溢出する。
誰もが打ちのめされた気持ちになりパニックも引き起こす。
そして何故大統領はいないのかと叫ぶ者も、、、。
何故かオルムの会社の製造したジェットモグラがホテルの壁を突き破って侵入する。
これに乗って皆逃げるのかと思ったらそうでもなかった(この巨大モグラが何の役なのか不明)。

確かに大統領執務室に入れたが、当の大統領は不在のまま。
彼らは完全に見捨てられた気持ちになる。
ニコライ(偽)はピストルで要人たちを撃ち自殺をする。
オルムは頭を撃たれたが、クララをタイミングよく逃がす。
そこで彼女は大統領に逢い、彼から禁じられた言語で上の同志に向けたメッセージの伝言を頼まれる。
彼に助けられ地上に戻ることとなったが、彼女は何故自分を救うのか尋ねると、大統領は「君は新しい世界の人間で、下にいる旧世界の人間は滅ぶしかないのだ」と述べる。
地上に出ると、何とオリジナルオルムが運転手として彼女を迎える(どうやら地下ホテルのオルムはアンドロイド)。
結局、旧世界の人間が淘汰され新世界の人間が地上を支配するということか。
言語も変わるのだ。
何と言うか癖になる映画かも。観る価値あり。
きっとカルト人気の高い作品だと思う。
AmazonPrimeにて
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