テラフォーム

Risen
2021
アメリカ・オーストラリア
エディ・アーリア 監督・脚本・編集
フィリップ・J・ファドゥール 音楽
スーザン・ラムスドン撮影
ニコール・シャルモ
ジャック・キャンベル
ドミニク・ストーン
ケネス・トルヒーリョ
Terraformというよりも寧ろ復活した彼ら~エイリアンに焦点を当てたのか?
この映画も多くのこの類のSFものに同じく、ずっと薄暗い。その上に静謐な雰囲気の作品であるため、なかなか手強い。
睡魔との闘いである。”Arrival”に近いものはあるが、どうだろう。雰囲気だけかな。
その為か、気が付いたら寝ていたことが二回ほど発覚した。

エイリアンの侵略なのだが、宇宙船で地球人と同様のパタンで攻めて来る痛快娯楽ものではない。
系外宇宙からやって来るだけの科学・技術力があってこの前の世界大戦みたいな闘いの必要があるはずもなかろう。
そもそも(似たような武力で)闘うこと自体に意味がない。
隕石かと思ったら種子であったようだが、それが地上で急速に育ち、地球人にとっては猛毒な大気を作り、自分たちに最適化された環境を作って行く。
その巨大な植物を戦闘機がミサイル攻撃するがシールドを張られて通用しない。
(それっきり攻撃を諦めたみたいになっていたが)。
植物に何か仕掛けに行った一隊も皆、頭を乗っ取られて、防護ヘルメットを脱いでしまい毒ガスで死んでしまう。
敵の侵略の仕方~様子は、少なくともこれまでに見た異星人侵略もののなかで一番リアルに感じられるかも。
しかも終盤に明かされる驚愕の真実である。準備万端の形で計画を進めてやって来たのだ。
この異星人は、以前地球(アラスカ)に事故で不時着し捉えられ、そこ(エリア51)へ調査任務でやって来た科学者の父と来た娘こそが今回の圏外生物学者であった。これは偶然ではなく少女はこの異星人の遺伝子を組み込まれ自身が知らず異星人化していたのだ。
そうとは気付かず、少女は趣味の深宇宙の研究に没頭し、自分の研究室まで宛がわれ、ずっと地球からこの異星人にメッセージを送り続けていたのだ。"超新星94"というコードネームで。そして地球の座標を伝える。
メッセージの内容を全て吟味して彼らはここぞとばかりにやって来たのだ。
侵略と謂うより丸ごと乗っ取りである。

宇宙戦争の丁度逆のパタンであろう。
最初の謎の爆発で死んだ人たちの内、種子の微小な破片を呑み込んだ爆発地点に極近い者たちだけ、別な生命として蘇る”Risen”。彼らはDNAが組み替えられエイリアンとなったのだ。
その巨大な植物の前で語るかつて人であったエイリアンから、”お帰り”と女性科学者は声をかけられる。
さらに彼が語るには「われわれはあの環境ではもう生きられない」であった。彼らは移住の目的でやって来たのだ。
(われわれもそう遠くない時期にそれを決行するときが来るはず。ホーキング博士の語るように)。
彼女は、少女の時のあの経緯を全て思い出し、自分が今何者であるかを悟る。
何故か笑みが零れた。
自分がすでにエイリアンであり、彼等を地球に導いた当人であることを完全に認識した。
一度、種子がまだ小さく容易に処分できるとき、それを故意に残しておいたのは、地球の命運を託され調査に派遣された彼女であり無意識的に自分の役割を知っていたのだ。
こうしたことは、実は世界の多くの局面でもあるはず。日常的にも。わたしもその一端を担う仕事を知らずに行っていたかも、、、
ひとの運命を大きく左右するような局面においても。
地下深くから不気味な音が聴こえてくる。世の終わりのカウントダウンのような、、、
卵状の地下茎の一部が地上の至る所に突出し、それが次々に爆発すると大気はどんどん彼らの為の環境に代わって行く。

地球上の全ての動植物が死に絶えるのはもうすぐそこまで来ている。
この展開が、静かにひたひたと確実にやって来る映画であった。
ちょっとその雰囲気はタルコフスキーにも似ている。
謂い過ぎか(笑。
もう一回ブラッシュアップするとさらに良い映画になっていた感もあるが、充分に渋いリアリティを感じるSF作品であった。
WOWOWにて