サマーフィルムにのって

It's a Summer Film
2021
松本壮史 監督・脚本
三浦直之 脚本
Cody・Lee(李)「異星人エイリアンと熱帯夜」主題歌
伊藤万理華、、、ハダシ(高校3年生。映画部、監督)
金子大地、、、凛太郎(未来から来た少年)
河合優実、、、ビート板(ハダシの親友、天文部)
祷キララ、、、ブルーハワイ(ハダシの親友、剣道部)
小日向星一、、、駒田(野球部補欠、録音)
池田永吉、、、増山(野球部補欠、録音)
篠田諒、、、小栗(デコチャリヤンキー、照明)
甲田まひる、、、花鈴(映画部、ハダシのライバル監督)
ゆうたろう、、、隼人(映画部、花鈴の相手役)
板橋駿谷、、、ダディボーイ(凛太郎の相手役、朗読力が売り)
伊藤万理華は乃木坂時代、彼女のマリッカ人形が楽しみだった。
ソロミュージッククリップもポップでキャッチーな、なかなかのものであったが、卒業後にリリースした「はじまりか」は感動モノの出来であった。「 あさひなぐ」などの乃木坂メンバーの映画でも上手な演技を披露していたが、深夜テレビの主演はほとんど観なかった。暫くわたしはインターバル置いてこれを観た。芸達者であることは分かっていたが、なかなかの個性派女優になっていた。
今後益々異彩を放つ貴重な女優になってゆく気がする。乃木坂では他にも深川麻衣女史、齋藤飛鳥女史が印象的な演技をしている。いくちゃんにもはやく映画主演をやってもらいたいものだ。

さて本作であるが、思わず感動してしまった。
ハダシ(伊藤万理華)は演劇部においてアウトサイダーであり、勝新太郎を尊敬する大変な時代劇ファンである。文化祭の発表も侍同士の決闘がある時代劇の台本を書いて提出するが、キラキラ恋愛もの至上主義の花鈴の台本にハダシ以外の票が全て流れ問答無用で発表演目が決まる。それに向けた準備作業と舞台稽古が始まるが、ハダシはどうにも乗れない。
剣道部のブルーハワイと天文部のビート板に愚痴りながら一緒に座頭市のビデオとかを観ているうちに、自分たちで部活の括りでなく一本時代劇を撮ろうという噺になる。急遽宅急便のバイトをしてお金を作り、学校の特技を持ったアウトサイダーをハントして臨時の演劇サークルを作る。主役には未来から時代劇を観にやって来た(隠れ映画オタク)凛太郎を強引に抜擢する。彼女の一目惚れもある。
凛太郎は何度も断るが、ハダシから出ないのなら撮らないと脅され出ることとなる。
映画は紆余曲折を経て完成するが、彼が出ている映画は残すことは出来ない。
(何でも未来ではハダシは映画監督の巨匠として称えられているのだが、処女作だけ失われているのだ。彼はそれを確かめに来たともいえる)。
作り上げたら彼は帰るしかなかった。終盤はかなり切ない。

よく出来ており感心する。
ケチの付け所がない。
展開に無理はなくテンポはとても良いし、、、
青春恋愛もののウザさがない。
荒唐無稽な設定だが、爽やかで共感できる。
登場人物が皆、面白い。
端から面白設定の人もいるが、そうでない人も充分面白く、イヤミがない(ここが大切)。
自然に入り込んで行けるし、絶妙なくすぐったさが味わえる。
主演の女子トリオ効果は大きいものだ。脚本がしっかりしていれば、問題ない。
ライバル役のビビットな甲田まひると言い、脇を固める演者もとても印象的であった。
これくらい実力者が集まると良いものが出来る例でもあろう。

「時かけ」みたいに、ここでも未来人がやって来るが、、、それはそれでよい。
(彼の謂う未来像がもう少し顕になるとより興味深いところであったが。映画がもう存在しないとか)。
所詮、あんなシリアスな感動モノではなく、オタクがオタクに逢いに来ましたというだけのもの。
それでもよく分からないが感動できてしまうところは凄い、と言いたい。
こうやって部活を頑張るを超えた、個人的趣味をやり抜く喜び、これは年齢に関係なく大事にしたい。
わたしも趣味に生きているが、常に時間が足りない。満足な結果を生まないし、やり足りなさを常に感じている。
修行が足りないのだ。そんなことを言ってるうちは、、、。

自分~自己意識が消えてしまうくらい没頭すれば、時間など関係ない境地=場に至ることが出来る。
ここでも撮る時間が足りなくなったところで、ライバル花鈴のチームの応援ですんなり撮り終える。
深く入り込めば、その垂直性が異なる場を形成する。
濃密な時間~固有時を生きることが出来る。
そうありたい。

最後の伊藤万理華の殺陣がやたらと決まっていてカッコよかった。
やはりもってる人だねえ。
ブルーハワイ(祷キララ)のハダシの趣味の時代劇も好きだし剣道部であることから殺陣指導もしてきたが、実はキラキラ青春恋愛ものも大好きというのも面白い。
花鈴チームの倒れた役者の代役で出て、やんややんやの喝采を浴びて、自分の趣味が両方とも充たせてご満悦なのも可愛らしかった。今回、とても普通な役だ。

3回立て続けに祷キララ女史の出演映画を観たが、今日のものが一番良い。普通の演技を無理なくやっていて。
そして、河合優実というクレバーな若手女優を知った。
ホントに女優は層が厚くて、ちっとやそっとでは役が回ってこないよね。大変だわ。
こんなに優秀な人が多いと。
ともかく、いくちゃんに早く映画主演をやってもらいたいものだ。すでにミュージカルでは凄いけど。
AmazonPrimeにて
- 関連記事
-
- 惑星のかけら
- ちょっと思い出しただけ
- サマーフィルムにのって
- 左様なら
- ドレッシング・アップ