17歳の瞳に映る世界

Never Rarely Sometimes Always
2021
アメリカ、イギリス
エリザ・ヒットマン監督・脚本
エレーヌ・ルヴァール撮影
ジュリア・ホルター音楽
シャロン・ヴァン・エッテン「Staring at a Mountain」主題歌
シドニー・フラニガン、、、オータム・キャラハン(17歳の高校生)
タリア・ライダー、、、スカイラー(オータムの従姉妹)
テオドール・ペルラン、、、ジャスパー
ライアン・エッゴールド、、、テッド(オータムの義父)
シャロン・ヴァン・エッテン、、、オータムの母親
ケリー・チャップマン、、、カウンセラー
キム・リオス・リン、、、麻酔科医
エリザ・ヒットマン監督・脚本の映画があったので観ることにした。
やはりトーンは「愛のように感じた」に似ている。
ヒロインは初っ端からなかなかの歌を弾き語りで聴かせてくれる。だがその後はむすっとしてだんまりである。

17歳というのは、なんであるのか?飽くまでも邦題であるが、実際ヒロインは17歳。
「ダニエラ 17歳の本能」、「17歳のエンディングノート」、「17歳の肖像」、「17歳のカルテ」などわたしがこれまでに見た映画だけでもこれだけあり、17歳に特別な事情又は意味~価値が込められているのは確か(日本において)。
2000年に17歳による少年犯罪が連続して発生し、マスコミの煽りにより「切れる17歳」という形で印象付けられたという説もあるみたいだが、発達段階において一番不安定な時期ではあろうか。個人差もあるにせよ、17歳ならでは、というものは、、、
更にここ最近女性監督の素敵な作品を鑑賞することが増えた。
横浜聡子監督「いとみち」とかテオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督「ペトルーニャに祝福を」、サリー・ポッター監督「選ばなかった道」、カリン・クサマ監督「ストレイドッグ」、首藤凜「ひらいて」、リサ・ジョイ監督「レミニセンス」、福岡佐和子、はまださつき監督「トエユモイ」等々、遡ればもっとザクザク出て来る(笑。この中にもやはり17歳近辺がヒロインの映画がある。この時期の女子を描くに女性監督は適任なのだろうな。
女性の社会進出とか言うが、映画界ではかなりのものと思える。

ヒロインである反抗期の不機嫌そうな女の子が妊娠したと謂う。
わたしは想像妊娠かと思ったが、調べてみるとホントに妊娠しているのだ。
(そういう相手のいる娘には見えなかったので意外であった。が、そうでもないのだ)。
妊娠に至る経緯は一切描かれないので、そうなのかと受け取るのみ。
そして産むのではなく中絶するために、同じスーパーでアルバイトをしている従姉妹と共にバス・地下鉄を使って遠くの病院へと旅に出る。この描写が、ドキュメンタリーを観ているような気がする。
ひととのやり取りも生々しいし、演技が感じられない。これが周到な演出によるものなら見事。
ふたりともとても寡黙で淡々と事は進むが、重苦しい雰囲気に包まれている。
この映画、日常的な臨場感が半端ではない。

しかし従姉妹のスカイラーという娘の献身的な支えは凄い。
普通、親戚でもそこまで親身に付き合ってくれるか。まずない。そもそも親戚が頼りになるなんて考えられない。
このオータムは彼女に対し、ほんとにそっけなく愛想もない。
気を遣う様子も見られないが、、、。
この旅自体本当に骨の折れる面倒なものでお金もかかるし、親に請求書も行くだろうし、、、。
面倒なことである。
途中でゲームセンターで遊ぶ年相応の姿を見てちょっとホッとしたが。
やはり軽はずみなことはしないことだ。
医療機関で質問される。
「一度もない」、「めったにない」、「時々」、「いつも」の4択で答えるのだが、ここで初めてオータムの感情が顕になる。
(これが原題である。”Never Rarely Sometimes Always”)
そうだろうなと思う。性に絡む内面に秘めた大切な想いに関する問いであり、もっともプライベートな事柄だ。
この娘はそれをずっと無表情で防御し隠し続けて生きて来たのかも。きっと歌でそれを表出するタイプだ。
ミュージシャン向きの娘だと思う。しかしその才能を父は認める気がない。これが彼女を内向させている一因かも。

避妊手術が2日かかりとなり、2人の間もギクシャクする。
お金も無くなり泊まるところも無い。
バスで声をかけて来た男に電話をしてお金を借りる。スカイラーのお陰だ。この従姉妹にどれだけ助られているか。
色々付き合いボーリングやカラオケもする。とても痛々しい。
特にこの後半の流れは重々しく気怠く痛々しい。
2人とも容姿が儚げで端正で美しくアップが多いため、とても印象的な絵になっている。
絵作りと演出がかなり綿密であることが分かる。
BGMの音がブライアン・イーノのアンビエントミュージックのように効果的。

手続きやら時間もかかった手術も無事済んで、安堵の表情を浮かべて家に帰るところでエンディング。
バスに乗る前に2人で軽食を食べる様子は普通の高校生という感じに戻っていた。
これからも同じような生活を送るんだろうな、と思わせる。
この監督らしい、終わり方だ。
お母さん役のシャロン・ヴァン・エッテンの主題歌も物語にフィットしていた。
良い曲だ。
AmazonPrimeにて
大変な傑作であると思うが、とても観るのがきつかった。
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