アンモナイトの目覚め

Ammonite
2020
イギリス・オーストラリア・アメリカ
フランシス・リー 監督・脚本
ダスティン・オハロラン、フォルカー・バーテルマン 音楽
ケイト・ウィンスレット、、、メアリー・アニング(古生物学者)
シアーシャ・ローナン、、、シャーロット・マーチソン(裕福な人妻)
ジェマ・ジョーンズ、、、モリー・アニング(メアリーの母)
ジェームズ・マッカードル、、、ロデリック・マーチソン(シャーロットの夫、趣味が化石収集)
アレック・セカレアヌ、、、ドクター・リーバーソン
フィオナ・ショウ、、、エリザベス・フィルポット(メアリーの旧友)
ことばの少ない、美しい映画であった。

1840年代のイギリス南西部の海辺の町ライム・レジスを舞台に淡々とメアリーとシャーロットの物語が描かれる。
BGMとロケーションがこころに染みる。
ふたりのヒロインは勿論、申し分ない。
メアリー・アニングは生前学会では認められることのなかった実在の化石の採掘・研究者であった。
まだ男中心の社会である。
その男~夫に対する不信感と孤独から鬱症状を抱えて療養を兼ねてやって来た女性がシャーロット・マーチソン。

ロデリック・マーチソンという如何にも裕福そうな男性が、都会から化石収集ツアーで妻を連れてメアリーのもとにやってきた。
メアリーは化石の発掘でそれなりに評価は受けており、知る人ぞ知る存在である。
彼女の発掘作業を見学してその男性は思いもよらぬ頼みごとをするのだ。
それ相応の謝礼は支払って行ったようだが、妻を療養のために暫く置いて欲しいと丁重に頼んで立ち去る。
人付き合いに嫌気のさしたメアリーにとり厄介なお荷物であったが、引き受けることに、、、。

鬱である夫人はやはり外に出るのが酷く億劫であり、家事を手伝うにしても何もできない。
その自分がもどかしく号泣する。何かと手のかかる人なのだ。
更にメアリーの化石発掘の手伝いが出来るでもなく、その間に海水浴を思い切ってするが発熱して寝込むことに。
観光客相手の化石の装飾販売も夜を徹しの看護でままならず、、、。
しかしその甲斐あって夫人は前よりも表情が明るく元気になり、無理なく行動を共にすることも出来るようになる。

音楽会に招待されてひと悶着あったりもするが、、、
看護していた時に軟膏を買った彼女がどうやら昔の彼女であったか、、、
その彼女とシャーロットが仲良く喋っているのを後ろで覗い、、、
メアリーは会場でイライラし始め途中退席してしまう。
しかしその後、お互いの気持ちは確認できる。
それからは、海辺の採掘場での詩情溢れる美しい光景である。
わたしのもっとも好きな淡々としたなかでの繊細極まりない所作。
密やかなやりとり。海の光景にBGMがとても自然に響く。
こころが通じ合い、、、海の中で身も心も溶け込んでゆくような交わり、、、。
ふたりの間に距離がなくなる、、、。

永遠に近い恍惚の時を生きるふたりにある日突然、シャーロットに届く帰って来るようにという夫からの手紙。
豊潤で心地よい場がいとも呆気なく消え去る。
シャーロットに冷たく接していたメアリーの母も淋しがる。
そして母が亡くなり、独りで化石を採掘と客相手の商品作りをこれまで通りに続けているとき、手紙が来た。
メアリーはシャーロットに招かれ、長旅を厭わず彼女のもとに飛んでゆく。

その綺麗な家にはメアリーの部屋が設えてあった。
些か強引であるが彼女と一緒に住もうと画策していてついにその環境が整ったのだ。
メアリーを呼び寄せた理由が分かるが。
これにはメアリーは閉口する、
プライドも許さない。「自由な鳥を金の籠に閉じ込めるつもり?」
シャーロットには好意だけしかない。きっと喜んでくれるというサプライズであったのだが。
さっさとその場を離れ、メアリーは上京したついでに見ようとしていた大英博物館に直行する。
そこには自分がかつて寄贈した恐竜の骨が展示されていた。
そのガラスケースの向かいに駆け付けて来たシャーロットの姿が。
見つめ合う二人、、、。
Wowowにて
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